月に何回か、油でギトギトの中華料理が無性に食いたくなる。
そんな日のことを私は「バスガス爆発の日」と命名した。
命名の由来は、ない。単に噛んでしまって上手く言えないフレーズというだけです(バスガス爆発の他の記事は→ ここ)。ちなみにこれを噛まずに言えるうちは、ほうれい線の心配はご無用です。
八ヶ岳南麓大泉に滞在している間にバスガス爆発となった時は、甲斐小泉駅近く「中国料理照坊ず」に行くことにしている。
この日、愛犬そらも巻き添えにして「照坊ず」へ。店構えはどこにでもある建売住宅風で八ヶ岳の香りも、旅情も、中華らしさも皆無である。
左:普通の住宅の玄関に看板が無造作にある
右:20畳ほどのリビング、じゃなくて客席は日当りがよくて快適な空間
家内は「日替わりランチ」、私はチャーハンと五目焼きそば。
注文した際、長テーブルの端っこにいらっしゃった年配のご夫婦が「オオ」というようにこちらを見た。
ここの焼きそばはものすごいボリュームである。にもかかわらずチャーハンまで食うというこの初老の男は糖尿病を恐れない命知らずなのか、見かけからするとちょっとおツムの弱いフォレストガンプなのか、はたまたイチゲンの観光客でこの店の量に無知なだけなのか。
ご夫婦は不安と好奇心が抑えられない様子であるが無理もない。些細なことで「あおり運転」をされるご時世、相席者からいつなんどき「あおり中華」の被害を受けるか分かったものではない。
まずは家内の日替わりランチ。今日は「五目炒め」と「穴子とナスの素揚げ黒酢あんかけ」。それに前菜とご飯、スープ、香の物、デザート(杏仁豆腐かマンゴープリン)がついて1760円。
(これはこれですごいボリューム)
私の方はパラパラのチャーハンと大皿から溢れんばかりの焼きそばだ(いずれも1140円)。
端っこのご夫婦もご主人がチャーハン、奥様が五目焼きそばだった。先ほどのお二人の微妙なアクションは「あの人、オレ達二人分を食うのか~。大して歳は違わないのに」という慨嘆の眼差しだった模様。
(やきそばのアンをチャーハンに少しかけるとまた具合がよろしい)
旨い。
具だくさんのうえにアンがたっぷりかかった焼きそばの旨いこと。油っこさが気になった時はチャーハンでお口さわやかに。そしてチャーハンの淡泊さ(?)が気になってきたらやきそばのアンをかけてあんかけチャーハンにすると旨さ倍増である。
ガツガツムシャムシャやっていると、ご夫婦が席を立った。
女将さんに「すいません、残しちゃって」と言うので、見るとどちらも半分近く残している。
「それならどっちか一品にして夫婦で半分こすればいいのに」、というのは素人の浅はかさ。チャーハンも五目焼きそばも二者択一がもはや困難な領域に達している。私にはお二人のお気持ちがよ~く分かります。
「じゃあドギーバッグで持って帰ればいいのに」というのも素人の浅はかさ。ここで中華を食うと当分は見るのもイヤ、まして二食連続なんて食えません。私にはお二人の苦衷がよ~く分かります。
はち切れそうな胃を抱えてクルマに戻ると、やさぐれた愛犬がこちらを冷たく見つめる。
(なにが「バスガス爆発」だよ)
愛犬の慰労と腹ごなしを兼ねて三分一湧水公園へ。
おやつを貰ってそらも機嫌がなおったようだ。
(置いてくよ~)
「もう今夜はメシヌキにするか」
などとうそぶいたが、お天道様はお見通し、5時頃になるとちゃ~んと腹が減るのである。
(湧水公園からの八ヶ岳 赤岳が見えない八ヶ岳は不思議な印象だ)