海外留学フェローシップ申請の結果。海外学振、上原、内藤の比較


こんにちはタヌキです。今回はあまりネットに転がっていない、研究留学のためのフェローシップ申請とそのコンテンツについて紹介したいと思います。







海外留学に使える&国内から申請できる、大口のフェローシップのリスト(生命科学系)


海外学振

https://www.jsps.go.jp/j-ab/ab_sin.html
期間:2年
締切:5月7日
採択率:19.1%
滞在費・研究活動費:派遣国によって異なる。年額約450万円~620万円


上原記念生命科学財団ポストドクトラルフェローシップ

https://www.ueharazaidan.or.jp/
期間:1年 (特に優秀な人物には2年)
締切:9月5日
助成決定後に出立する者:既婚者 450万円; 独身者 390万円
既に留学中・年内出立の者: 既婚者 410万円;独身者 350万円
採択率:約40%(H29)



内藤記念科学振興財団 海外研究留学助成金

https://www.naito-f.or.jp/jp/index.php
期間:1年
締切:10月1日 (2018年)
10名(H29)
一律450万円
既に留学中の者は申請できない。
採択率:約9%(H29)



どれだけ受かる見込みがあるか?

これらを完全にランダムな選考であると仮定すると、これら全てに申請することが出来れば、およそ55%の確率でどれか1つは受かることになります(実際は実力ですが)。上原記念生命科学財団や、内藤記念科学振興財団のフェローは、学内推薦が必要である点ではハードルが高いですが、学内推薦(*)さえ得てしまえば、可能性は開けて来そうです。

学内推薦の競争率ですが、私個人の感想としては、そこまで高くはないのではないでしょうか?というのも学内で留学を考えていてかつ、既に受け入れの承認が得られている人って中々いないと思うんです。もしかしたら東大の人とかは競争が激しいのかもしれませんが、地方の国立大であれば、そこまでではないのではと思います。

*推薦のルールは大学によって異なります。早めに大学の事務に問い合わせて不利にならないようにしましょう。大学によっては毎年1-2名ほどしか申請しない場合もあります。規模の小さい大学であれば0人なんてこともあると思うので、留学に興味がある時点で問い合わせることをお勧めします。留学先での待遇改善の交渉材料になる可能性もありますので。


ライバルたちはどんな人たちか?

バイオ系でいえば、海外学振の申請者数はH31年で生物・農学・環境・医学・薬学の合計で457名です。うち採択者リストを見ると、全体の2-3割が既に留学中ですので、319-365名が国内から派遣国への留学を希望していることになります。なんとなく、そのぐらいの数の人をイメージして準備するのがいいかもしれません。

合格者のリストを見ると、出身大学に偏りがあるとも思いません。勿論旧帝大の人たちが多いのはこの業界の常ではありますが、上原と内藤でいえば学内推薦のシステムを採用しているためバランスが取れている印象です。

一方、派遣先はどこも名門大学・トップ研究所ばかりです。ブランドで選んでいるわけでもないと思いますが、あまり知名度の無い大学に行くのであれば、それなりの説得力のある説明をしなければならないでしょう。海外学振と内藤記念財団の申請書には「なぜその場所を選んだのか?」的なセクションがあるので、そこをどれだけ自信をもって書けるかがそこそこ重要になってくると思うからです。

一見ポスドクや助教授の人が業績的には相当なアドバンテージを持っているようにも思えます、しかし毎年の合格者を見ると、大学院卒から直で受かっている人も見かけますので、おそらく業績に偏り過ぎず、ポスドク・学生、バランスよく採用しているのではないでしょうか?特に上原と内藤がその傾向があるように思います。



各フェローシップの申請プロセスの違い


海外学振 良い点/難しい点

所感:いわずと知れた海外学振は留学への王道フェローシップ。実際に海外学振を使って留学しキャリア形成したPIの人もいるだろう。ちなみに私は申請できませんでした。一年以上前に留学先とコンタクトを取れる人がどれだけいるのか個人的には疑問です。しかも、留学受入れに加え、研究計画も練らなければならないので、申請期限の5月よりも数か月前に受け入れを確定していなければならない。書類の量としては最多の7ページ。内藤、上原よりもかなりボリュームがあります。日本語の申請のみ可。

良い点
金額がパワフルかつ二年間助成、渡航費も付いてくる
知名度が高い
基本的に誰でも申請できる
留学中でも留学後でも申請できる
科研費や学振と基本似ているのでシステムがわかりやすい
どんなテーマ(基礎・応用)でも受かっている

難しい点
申請の締め切りが非常にはやい。5月とか
申請書が長い。7ページもある
採択率はやや低い
ライバルが多い



上原記念生命科学財団ポスドクフェロー 良い点/難しい点

感想:この三つの中では最も申請しやすかった。というのも指導教官からのレターが必要ないことと、書類も2ページで内藤と学振より少ないのがとてもありがたい。採択率もこれらの中では高い方で、個人的にはもっとも気持ちのいい申請プロセスであった。
 内藤記念海外助成金と比べると、バリバリの基礎のテーマでも受かっている人が多少いる。日本語の申請のみ可。

良い点
留学先と過去の研究内容が計2ページで書類作成がしやすい
web申請のフォームがわかりやすい
締切が9月なので比較的遅い、また結果も11月には通知されるので早い
お金を1月に振り込んでくれるので、留学の準備ができる
採択率が高い

難しい点
推薦書は学部長や研究科長からなので、実質一つの学部から一人しか申請できない。
留学中の人たちが対象になるので、既に留学中の猛者がライバルになるときつい
若干医学研究が重視されているように感じる




内藤記念海外研究留学助成金 良い点/難しい点

感想:書類の量としては上原記念生命科学財団ポスドクフェローよりは多い。倍率も上原記念財団より高くなっている。採択率はおおよそ10%以下のようだ。全国の推薦を受けた猛者の中で10%に入るのは中々厳しいだろう。でももし、海外学振でも上原でもある程度完成している書類が手元にあるのであれば、是非チャレンジしたいところである。日本語の申請のみ可。

良い点
既に留学中の人は対象にならないので、留学中スーパーマン達とはバトルしなくて済む
留学先と過去の研究内容と留学の意義、計3ページで書類作成がしやすい
締切が10月なので、学振、上原で仕上げた書類がある程度応用できる
一律450万円というのがわかりやすい

難しい点
かなり医学研究を重視していると思われる。かつ審査員が結構医学寄りの先生方なので、医学の観点からも意義が伝わるように書いた方がいいかもしれない
正直webフォームがわかりにくく、かなり混乱した
採択率低め
上原と同じく推薦書は学部長や研究科長からなので、実質一つの学部から一人しか申請できない。


対策 ~メンタル・準備期間・ミスった点~

メンタル
奢らないよう意識した:これらの申請書を書いている人たちは、留学先からのオファー(or条件付きオファー)を貰って、そこそこ嬉しい状態にあると思われる。実際私もそうだった。人間はうまく行っていると調子に乗ってしまうという残念な習性がある。なので、勝って兜の緒を絞める精神で挑んだ。私は宝くじを買うと、あたった時の心配をする大変おめでたいタイプの人間である。受かると思わないで、日々過ごすように努めた。

準備期間

上原記念生命科学財団の締め切りを9月と考えると、その2ヶ月前の6-7月にはポスドクのインタビューを終えておくのが良いと思います。また、学内推薦の選考がどのように行われるかについてはおそらくインタビューの前に済ませておくのが良いでしょう。インタビューの際にどのようなフェローシップに応募可能であるのか話し合うことが出来た方が良いと思います。

書類の準備は上原記念財団の場合は大体2ヶ月。内藤財団の場合は3か月ほど準備に時間をかけることができました。受け入れ先のボスに「こんなフェローシップがある」という旨のメッセージを送り、メールで研究アイディアを4-6個ほど送りました。後日、受け入れ先のボスがスカイプミーティングで彼らの持っているツールなどをいくつか紹介してくれました。自分のアイディアとラボの許容範囲を照らし合わせて、ベストな研究アイディアをまとめて提出しました。

読んでもらった人数4人
今回は4人の学生仲間に読んでもらいました。なるべく分野外の人に読んでもらえるようにしました。正直もっと、色んな人に早い段階で見てもらいたかった。

やればよかったこと・ミスった事
過去の受賞者にメールを送って、申請のコツなどを教えてもらえばよかった。今読み返すと、細かいミスがいくつか見受けられる。どうやったらこういった急ぎの状態でもミスを減らせるんでしょうか?海外学振のように、背景・研究目的・研究結果・意義のように項目を作って書けばよかった。


結果

海外学振→X(間に合わなかった)
上原記念生命科学財団→〇
内藤記念科学振興財団→☓


というわけで、今回は上原生命科学財団の助成金を頂けることになった。大変ありがたい。正直貯蓄が雀の涙程度だったので自分にとっては大きい(visa申請の時そこそこ貯金が無いとまずいらしい)。一方で、内藤記念海外研究留学助成金は落ちてしまいました。全国で10人ともなると、中々難しいという印象です。きっとこれからの人生でも10人だけ、とか1人だけ、採択率1%とかいう世界はいくらでもあるだろうから、そういう時は受かったらラッキーぐらいの精神で受けるのが良いのかもしれない。


内藤記念海外研究留学助成金が何故落ちたのか考察

①内容がわかりにくかった。
もう少し内容を噛み砕く必要があった。今見ると、専門用語のオンパレードで分かりやすいとは言い難い。学振のように「背景」「問題点」「目的」「結果」のような項目を自分で作成するともしかしたらより、伝わりやすかったのかもしれない。

②もう少し意義について触れる必要があった
研究の意義をもっと一般的にも理解できるように紹介すべきかもしれない。

③誤字がある(泣)
今見返すと一か所、誤字があります。誤字を無くしたいです。

④研究内容も甘かった?
研究の内容ももしかしたら甘かったかもしれないです。これが原因だったらきつい。


やはり定期的にこういった機会にチャレンジするのは大事

こういう書類を書くのは学振DC以来だったので、トレーニングになりました。やはり、DCの時より徹底できなかったので、今の自分の実力と今回の準備っぷりでは、内藤財団に申請してきた人たちの中10%には入らないということでしょう。

上原記念生命科学財団と内藤記念海外研究留学助成金の合計で、年間120-130人ほどが支援を受けています。一方で、海外学振からは170人採用しているので、日本の留学は結構な率でこの二つの公益財団法人に支えられているようです。


学振・財団系フェローシップお役立ちリンク


アメリカのポスドクからファイザーの研究職に就いた方の大変役に立つ情報
http://luckprepopp.com/phd-postdoc/jsps-abroad/



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