楽天のワークマン撤退に見るショッピングモールの今後

図らずも連日、楽天に関するニュースが報道されています。楽天にとっては第4の通信業者としての事業も大事ですが、いかに本業であるネット内のショッピングモールを拡大するかに企業としての今後がかかっていることから、その中で多少の小競り合いも起きてきていて、かなり厳しい論調にさらされているような感じもします。

そもそも、楽天市場は多くの業者が集まった集合体のようなもので、おおまかに言うと楽天自体は市場に参加した業者からの手数料で利益を得る構図になっています。ここがAmazonのような直接自分らで商品を売るのとは違うところで、とにかく楽天は多くの参加店を集め、多くの売上を上げることによって野球チームを持ったり海外からイニエスタのようなレジェント級のサッカー選手も招聘することもできるのです。

今回紹介したいのは、昨年のトレンドと言ってもいい、以前は作業服の専門店として決して好んで着られていたとは言い難い「ワークマン」が新たな事業展開によりブレイクし、これまでの出店とは違う形のショップに、女性が集まるような人気になったことに端を発しています。

テレビのニュースやバラエティ番組ではワークマンの新製品の紹介や取扱いのある商品の魅力について取材し、本来ならば大変なお金のかかるお店および製品の宣伝を勝手に行なってくれたことで、すっかり2020年になってその商品の良さが知られることになりました。それまでのワークマンでは集客できなかった人がお店にやってくるだけでなく、ネットでの売上も上向きになっています。特にネットはテレビを見て検索すればすぐに当該商品が出てくるわけですから、こうした販売チャンネルというのは企業にとっては重要です。

今までは、ワークマンはその知名度をカバーするため、楽天市場にショップを出店していたところもあったのでしょうが、これだけ日本の中でユニクロに匹敵するかも知れないくらいの知名度を持った中では、自社の専用サイトで通信販売をした方が、楽天市場を通して販売するよりも手数数の支払いがない分利益を伸ばせるでしょう。さらに、近い将来に楽天市場に出店しているショップの商品について、3,980円以上の単価のものについては一律送料無料にすることをアナウンスしました。ここでは楽天の方が発表したものの、送料自体は出品店が負担することになるため一部の出店者が強硬に反対していますが、楽天がこうした発表を行なったこともワークマンが楽天を離れることになった理由の一つではないかと思われます。

楽天市場はネット上にあるデパートのようなイメージで、どうしても欲しい商品を探す場合にはAmazonやヤフーショッピングとともに比較検討されるべき存在であったと思います。

楽天にとっては競争相手であるAmazonやヨドバシ・ドット・コムが送料無料でのネット販売を続けている中で、やはり「送料無料」というキーワードのインパクトを重要視したからの今回の発表だったと思うのですが、送料は決して無料ではないというのは過去のブログにも書いた通りです。他の業者が運送業者とぎりぎりの折衝を行ない、自前で負担しているのに対し、楽天は今までの手数料ビジネスを崩すことなく、あくまで「楽天市場」という大きな知名度のあるショッピングモールに参加しているメリットが有るのだから、こうした送料についても一部負担をお願いするという姿勢を今も貫いています。そんな中の「ワークマン」楽天から撤退というニュースなので、やはりそれなりのインパクトは今後持っていくのではないかと思います。

私自身はこのニュースを聞いて、mikihouseがZOZOTOWNから撤退を表明したニュースを思い出しました。ショッピングモールの中では様々なお店が出たり入ったりする中で、消費者のニーズに合ったお店を揃えていかないと他のお店にお客を取られてしまいますが、今回楽天が一部送料無料を実現させたとしても、Amazonやヨドバシ・ドット・コムにとっては痛くも痒くもないかも知れません。小さかったり安かったりする商品でもそうした業者では送料無料での配送を行なっていますし、さすがに楽天には1000円以下の商品まで送料無料には今の騒ぎを見ているととてもできないと思われるからです。

話をワークマンに戻すと、今年も好調な業績はさらに伸びて行くでしょうし、人の集まるショッピングモールへの「ワークマンプラス」の出店も増えていくと思われます。ただ、ネット通販についてはもはや楽天には頼らず、直営店のサイトが中心になるでしょう。こうした流れによって、注文した商品を自宅近くのお店で受け取ることで広いはんいで「送料無料」のサービスを行なうことができるようになります。すでにオンラインストアでは店舗受取は送料無料ということでやっていますので、ワークマンにとってはこの方式の方が楽天を利用し続けるよりもメリットがあるでしょうね。

楽天にとっては今までの売上増につながってきたパートナーとの関係解消は痛いはずです。楽天にとってはパートナーとなったショップは搾取の対象ではなく、お互いにウィンウィンの関係になることでサイトの魅力も持てるわけですから、今回のワークマンの離脱を受けて楽天市場自体がどう変わっていくのかということも注意して見ていきたいと思っています。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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楽天のワークマン撤退に見るショッピングモールの今後」への2件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    アマゾン、ヨドバシカメラ、ビックカメラはともに自前の倉庫を持って発送するので流通業者に対して交渉能力が高いという利点がありますね。発送の効率化を図るために箱の大きさが荷に関係なく、発送の都合で決まる。いつも大きな箱で来ます。
    自宅近くにアマゾンの拠点があるので倉庫から発送するものは着くのが早いです。
    楽天の送料無料化問題はやり方が強引過ぎましたね。アマゾンであればトータルで利益が出れば良いのであって個々の品物の個別損益を無視しても全体としての収益拡大を図れるが個別発送の楽天では業者によっては負担が大きくなりすぎる。
    送料無料ではなく、ネット上で送料込みの代金をわかりやすく表示させるような改善を優先させえるべきだったのでは。
    楽天モバイルと楽天市場送料無料化という事を同時に行うのは第二次世界大戦における日中、日米、ドイツの東西両面戦争のように体力不足で敗退した姿を感じさせられます。
    逆に楽天ペイの拡大が疎かになってPaypayに後れを取っている。楽天は楽天Edyと楽天Payの一体化を優先させて考えるべきだったのでは。いろいろな方面に手を出す割には相乗効果が生かされていないですね。
    話は違いますが、モバイルSuicaも高輪Gateway駅でQRコード対応の実験的試行を行うという事です。モバイルでQRコード、フェリカに同時に対応出来るようになればさらにモバイルSuicaの通用範囲が広がる。Edyにもとってかわるのでは。
    QRコード対応で設備投資の面で対応できなかった地方のローカル駅でもSuicaが使えるようにする目的があるようですが。
    モバイルSuicaのポイント還元がカードの4倍と言う事もあり、都会ではスマホで改札を通過する人も増えてきた感じがします。
    方向性が見えない楽天の迷走ぶりが感じられます。

  2. てら 投稿作成者

    ケータイオタクさん コメントありがとうございました。

    ここ2日あまり楽天についてのニュースについて書くことになってしまいましたが、今後の楽天の迷走が続くようだと本当に心配になります。

    少し古い話になりますが、プロ野球の近鉄が身売りをするという話になった時にライブドアの堀江貴文氏が名乗りを上げた際、マスコミを含む大方の意見は否定的なものばかりで、その後楽天の三木谷社長が名乗りを上げた時にはまさに手のひらを返すような報道となり、少々違和感を覚えた記憶があります。

    現在の楽天は楽天ゴールデンイーグルスというプロ野球球団と、サッカーJリーグのヴィッセル神戸という日本の二大スポーツのプロ球団を持っています。今後もし楽天という会社自体の経営に不安が出てきたらと思うと本気で心配になります。楽天は単にネットビジネスだけでなく、多くの野球・サッカーファンの夢を背負っているということも忘れて欲しくないです。

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