高速バスに急に乗れない理由は様々

名古屋駅から大阪駅に向かう高速バスにおいて(名古屋20時30分発→大阪23時30分着)、名古屋から乗り遅れた40代から50代くらいの男性の乗客とおぼしき人物がバスの前に立ちはだかり出発バス停から100メートル位行った道路上でバスを止め、運転手が警察に通報するとその場から逃げるという事件が起こったというニュースが有りました。その様子は動画で撮影されていてYou Tubeでもアップされ、すでに乗って出発していた運転手および乗客にとってはちょっとした恐怖体験ではなかったのかと思います。

このニュースを考える上で、問題になることは複数あって、「バス停以外では乗客の乗降はできない」という事が主に論評では取り上げられ過ぎているように思います。田舎でなくてもバス停に走って、もはやバス停を出ようとするバスを呼び止めるような光景は私ですら見たことがありますが、場合によってはバスは停まって走ってくる乗客を乗せるところも見た事があります。一部の方はそうした「温情」をバス会社側が出してあげてもいいのではないか? という風に考える人もいるようではありました。しかし、最初に書いたようにこのバスは「路線バス」ではなく、さらに「名古屋発20時30分発」ということで、このバスに乗り遅れたとしても、他のバスや在来線・新幹線を使って大阪に行く手段が確保された中での話だということを忘れてはいけないでしょう。

もし深夜バスでこのバスに乗れずに深夜の名古屋駅で行き場がなくなるような状況だったら変わっていたかも知れませんが、そうではないわけですから法令で規定されたバス停以外での停車が禁止されている理由で走り去ってしまっても文句は言えません。少々のお金をケチらないで現金がなければクレジットカードで在来線や新幹線の乗車券を購入し、別の方法で大阪へ行くべき状況であると言えるでしょう。もっと言うと、このバスに乗っている人の中には自宅は大阪駅近くではなく、そこから改めて在来線や私鉄の最終電車に間に合わせようと定時運行を願っていた人もいる可能性があるということです。たった5分前後の遅れでも、次の電車にそのせいで乗れずに終電を逃し当日帰りが不可能になった場合、単なる威力業務妨害だけにはとどまらない賠償義務が出るかも知れません。

さらに、高速バスの場合は路線バスと決定的に違うことがあります。というのも、週末に東京まで出掛ける予定にしているのですが、18切符のシーズンは終了しているのでできるだけ安く静岡から東京まで往復するために何の交通手段を選んだかというと静岡駅と東京駅を結ぶ高速バスで、過去に何回もその路線は利用していることから、だいたいの乗車の仕組みは知っているので、その流れから言うと発車後の路上から高速バスに乗ることは難しいと言わざるを得ません。

あくまで私の経験した乗り方をここでは紹介しますが、バスが出発時間に近づいて乗客が集まってくると運転手さんがお客さんを集めるような形で、乗車券(Web乗車券を含む)の確認作業を行ないます。路線バスのようにどの席にでも座ることができ、立っての乗車が認められるバスではなく、高速道路を走るということできちんと席が決まっていてシートベルトをすることが求められるバスの事なので、事前にチケットを購入していて(事前に料金を払っているか)、どの席に座るかまでを運転手さんがいちいちチェックしてから乗り込むようになっています。詳しくはわかりませんが、もしその際の座席の状況はバス会社とオンラインで共有されているとしたら、一名欠員と登録して出発したバスで、出発してから改めて「キャンセル扱い」の席の設定を変えて乗車するように変えることはシステム上からも無理な場合があるのではないかと思うのです。特に運転中の運転手にその作業を強要させる事は運転しながらスマホの操作をする事とほとんど同じでしょうから、ワンマンバスの場合は物理的に不可能なのではないかと思われるのです。

繰り返して書きますが、これが全席指定でなく立ったままでの乗車も大丈夫な路線バスであるならそこまでしないと思いますが、全ての座席の管理が安全な運行のために義務付けられている以上、こういった場合のゴネ得というのは無いと考えた方がいいような気がします。と同時に「高速バス」「夜行(非深夜)バス」「全席座席指定」というキーワードを抜かして説明すると、そのニュースを受け取る人の間には間違った考えが入ってくることにもなりかねません。ニュースを伝えたり解説したりする方にもこうしたバス会社の事情というものを理解して利用を促すようにしないと同じような事件がまた出てきてしまうような気がしてなりません。

ここを読んでいる方が全席指定の高速バスを利用する場合には、出発ぎりぎりではなく少し前には乗車口に到着し、乗り遅れた場合にはバスの運転手に直接言うのではなく、チケットを購入したターミナルやバス会社に直接電話をしてその後の対応をお願いするなどの配慮を持って高速バスの利用をした方がいいのではないかと思うのです。


カテゴリー: 旅行・交通関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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