アルバイト動画炎上騒ぎの裏にあるもの

スマートフォンの普及率が上がるにつれて、アルバイトの職場内の様子をSNSに投稿したことがきっかけでテレビニュースで放送されることが本当に当り前になってきただけでなく、様々なファーストフードのチェーン店に騒動が広がってきていることに愕然としています。牛丼・回転寿司・コンビニ・和定食店の全国チェーンの全てがダメということになると、深夜まで走ることも珍しくない車中泊の旅では本当に困ってしまうのです。

そんな騒動が起こるはるか前、24時間営業のお店が発達し、深夜営業のファーストフードが全国展開していることが当たり前になった時期にはただ便利だとしか思っていませんでした。その認識が変わったのが、牛丼チェーンの「すき家」の一部店舗における休業が発表された時のことで、現実に近所のお店が営業をストップすることになった休業店舗を見て消費者の利便性だけでは社会は回っていかないことを思い知らされました。もっともそれ以前から、酒屋さんなどから転身してコンビニ経営をしていたお店のオーナーについて、24時間営業を維持するためにアルバイトの応募がなければ自ら店頭に立ちお店番を続けなければならないという過酷な現実を知ってはいたものの、そこまで深刻には考えてはいませんでした。

私自身、日々の生活の中ではそこまで常習的にコンビニやファーストフードを利用する機会はないのですが、車を使った旅に限らず見知らぬ土地で困った場合には全国どこでも同じサービスが受けられるインフラが整備されていることはすごいことで、そのインフラを維持できているのはただそこで働いている人たちのおかげであることは疑いもありません。それだけ「凄い」事であるのですが、残念ながらそこで働くアルバイトの人たちへの評価というのは、正社員と比べるとどうしても低くなりがちです。

さらに言うと、現在の日本は政府が言うところの「好景気」が続いていて、アルバイトに応募しようとする人に対する求人は引く手あまたで、今働いているところより待遇および時給がいい他のバイトがあればすぐに移ることも厭わない人間関係の緩さというものも存在しているのではないかと思えるところがあります。ここからは個人的観測に基づいた推察になりますが、SNSに職場内での行動をアップして炎上してしまう遠因になっているのではないかと思うのです。

さらに言うと、バイト先で真面目に仕事をやったとしてもサボったりしている人との差がないなど、日々の仕事で評価を受けない事が当り前になってしまった場合、お店の業績を上げようとかお客様のために働くというよりも、バイト仲間と楽しみながら働ければいいとなってしまうケースが少なくないのではないかと思います。もちろん、着替えて店頭に出るということになれば、普通はスマホを職場に持ち込むことは基本的にはダメであることも考えられますので、動画を撮影している時点で「いつやめさせられても次のバイトはすぐ見付かる」というような気分が先行してしまっているのではないかとも思えます。
確かにアルバイト募集は常にどこでもされていて、どこかをクビになってもすぐ次が見付かるという現実があることも確かでしょう。しかし、多くの職場での不適切と思われる行為の記録された事例が増える中で企業そのものに対する業績にも影響が出るまでになってきています。そうなると雇う会社の方も単なるクビという対応だけではなく、売上減少を受けたことに対する損害賠償を請求するケースもこれからは出てくるでしょう。今後アルバイトをする機会があるかも知れない方については、この点は十分に考えるべきでしょう。

話は少し変わりますが、昨日テレビで女優の樹木希林さんと市原悦子さんが共演した映画、河瀬直美監督の「あん」を見る機会がありました。映画はそれまでお金をもらって働くことのなかった樹木希林さん扮する老女がどら焼屋さんで働きたいと懇願し、募集では時給600円のところ時給200円でもいいと懇願してどら焼きのあん作りをすることになるのですが、そのあんの味は絶品で、今まで閑古鳥が鳴いていたお店には開店待ちの行列ができるまでの人気店になってしまいます。そうしたお店さんの反応を直に感じることができることは、老女にとっては生涯のうちの一番の喜びだったでしょう。そんな仕事をすることの中の喜びというものを感じられる職場であったなら、今回のような炎上騒ぎは起こることはないでしょう。しかし、現実というものは厳しいわけで、全ての人がやりがいのある仕事に就けるわけではありません。

これは、アルバイトではありませんが全国各地で問題になっている児童相談所について、問題の根元にあるのは、本気で児童を助けようと思う人がどれだけ働いているかというところにもあるのではないかと言われているところがあります。地方自治体の組織であると、必ずしも使命感を持って能動的に働くのではなく、自治体職員としての異動で在籍する中で、次にまた異動するまで無事に務め上げることが目的になってしまうところがあるのなら、別の意味での悲劇がそこでは起こっています。

世の中にある仕事というのはどんな仕事でも尊く、誰でもできる仕事であると考えているものでも、実際に行なってくれる人がいなければ多くの人が困ります。車で旅をすることが多い私としては、コンビニや地元のスーパー、ファーストフードや食堂・レストランできちんとしたサービスを提供してくれる方々がいるおかげで大がかりな荷物や食料を持たないでも全国を旅することができます。その恩恵を感じつつ、正社員パート関係なくきちんとやったことが評価される社会になることが、ひいては働く人に働きがいを与え、SNSでの炎上騒ぎを防ぐための第一歩になるのではないかと考えているところです。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

スポンサーリンク

コメントを残す