千葉真一率いる『JAC 』のトップヒロインにして日本における最初にして最高のアクション女優とされる志穂美悦子のデビュー作となった人気アクションシリーズ第1弾。

香港警察に召還された李紅竜は署長より兄である李万青が日本で行方不明になったことを知らされる。
万青は香港の麻薬Gメンであり、警察の協力をもとに日本の貿易会社『セントラル貿易』に潜入捜査をしていたが、敵の罠にはまりつかまったままだという。

兄の生死の情報をつかむため、一路横浜へ来日した紅竜。
万青が世話なったという叔父の所を拠点として早速敵の情報を集め出す。
セントラル貿易には万青の他に女性潜入捜査員の麗子が潜んでおり、捕らえられた万青の行方を探っていたが分からずじまいであった。
酒場で彼女と待ち合わせする紅竜だが、彼女はセントラル貿易の社長である角崎の部下に拉致されそうになる。
紅竜が戦うも多勢に無勢、麗子は連れ去られそうになるが、そこに謎の男が現れ、麗子を連れて消えていく。

翌日。手がかりを失った紅竜は万青が所属していた少林寺拳法の道場を訪ねるが、そこには昨晩麗子を連れ去った男がいた。
響と名乗る男は角崎と組み、少林寺拳法界を始め、日本の武術界を支配しようとする犬走と敵対する万青の味方であった。
恋人のしのぶの所に麗子を隠しているという響と共に隠れ場所に急ぐ二人だが、犬走たちがしのぶ達を強襲。奮闘するも麗子は敵が放った刺客によって命を落とす。

一方、角崎は万青の行方を探る紅竜や彼女に協力する少林寺拳法道場に業を煮やしていた。
彼が雇い入れた世界各国の格闘家たちを刺客にし、紅竜たちを亡きものにしようと襲いかかる。
紅竜は彼らを撃退しつつも徐々に角崎率いるセントラル貿易の裏側の顔を知る。

しかし彼女が世話になっている叔父が実は角崎への借金を理由に犯罪への手助けをさせられ、紅竜を裏切るように仕向けていた。
娘を人質にされ凌辱され、泣く泣く紅竜を罠に嵌めるべく呼び出す叔父。そうとは知らぬ紅竜は敵の刺客に襲われ、これを撃退するも待ち構えていた犬走との一騎討ちで吊り橋から落とされてしまう。

辛くも無傷だった紅竜は敵アジトにあった大量の麻薬を証拠として押収しようとしていた響や万青の妹弟子の絵美を助け、自身は再び兄を助けるべく角崎の邸宅に乗り込む。

邸宅の地下深くの牢獄にとらわれていた万青を見つけた紅竜。
しかし万青は角崎の麻薬の実験台にさせられ身体はボロボロで歩くことすらままならない状態になっていた。
更にそこに暗殺者が襲いかかり、彼の放った鉄の矢によって万青は死亡する。

刺客を倒したものの囚われてしまった紅竜は見せしめに処刑されそうになるが、そこに侵入者が現れ、隙をみた紅竜は処刑を回避して反撃を開始。
駆けつけた響や絵美、しのぶらが角崎の刺客や犬走と死闘を繰り広げる中、角崎を追い詰めた紅竜は、全ての決着をつけるべく角崎との一騎討ちに挑むのだが…

日本における最初にして最高のアクション女優であった志穂美悦子のデビューとなったアクション作品。

志穂美悦子といえば押しも押されぬJAC の看板女優であり、日本で最初に世界的認知されたアクション女優といっても過言ではない。
彼女が出現するまでの女優のアクションといえば、いわゆるイロモノ的な感覚であり、にっかつの『女番長』シリーズなどで出てくるスケ番やただバイクに乗れるといったくらいでもアクション女優として認知された時代であった。
そしてその殆どが戦いの最中にオッパイを振り乱して乱闘するというエロチックな要素を備えていたものであり、それは主役級の女優であっても適用されていた。

本格的な格闘技だけで売るアクション女優は恐らくは日本では志穂美悦子が最初に世間的にも認知された女優であったと思われる。
アイドルのようなルックスに似合わず見せるアクションはド派手なスタントや華麗な蹴り技など本格的で、JAC 創成期の頃から当時のアイドルよりも人気を呼んでいたという。

デビュー作となった本作においても基本的には志穂美悦子以外の脇役女優にはヌードシーンがあったり、エロチックな場面があったりと当時の邦画アクションのエログロ路線に沿った内容であり、エロと同じく残酷路線も激しめ。

腕を叩き折るのは序の口で、鉄の矢が刺さって水芸のように噴き出す血や首を180度回転させられて折られた敵が前後逆に歩いて倒れるシュールなシーンもある中、その残酷路線の最高峰といえるのがクライマックスの千葉真一が放った貫手で腹を貫かれて、抜いた所から腸がこぼれ落ちてくるというホラーも真っ青なシーン。
規制の緩かった当時を感じさせるような何でもありの描写が今で見ると新鮮にもうつる。

ストーリー的には行方不明の兄を探して妹が兄を拐った巨悪と戦うというシンプルなもの。
これはシリーズ化された次作以降も基本のコンセプトは変わってはおらず、この基本路線に沿って主役の紅竜が大暴れするシチュエーションである。

注目となるアクションであるが、これはJAC の本領発揮ともいえる内容で、とにかく大々的に少林寺拳法をフィーチャリングした格闘シーンが多い。
志穂美悦子のアクションは冒頭の演舞からキレキレで、特に各国の刺客たちとの戦いで見せる回し蹴りの切れ味や犬走役の剛柔流空手の達人、石橋雅也との対決などは非常に見応えあるものになっている。

また主役の志穂美悦子以外にも助っ人役として登場する千葉真一は段違いのアクションの切れを見せていて、クライマックスでの敵の暗殺者や石橋雅也相手に見せる連続攻撃の速さは凄まじい。
他にも志穂美同様に当時のJAC の新人枠で主演した早川絵美などもそこそこ見せるアクション
を披露している。

そして主役陣にもまして個性強めなキャラが集まっているのが敵役。
ラスボスの角崎はクライマックスでは鉄の爪を装着して紅竜と戦い、これはまさに『燃えよドラゴン』のハンをイメージしたものに相違ない(笑)

その他にもどこから拾ってきたのか分からない怪しさ満載のタイのキック女子7人衆やダブルヌンチャク使い、トンファーに鎖ガマ、あげくは水中銃や吹き矢など格闘技以外の達人を最後に紅竜ぶつけてくる荒唐無稽さもオモシロイ。
まるで何が出てくるか分からない闇鍋な要素をあるからこそ楽しめるといった所もある。

また本作は後の日本を代表する特撮アクションにも通じていて、かの志穂美悦子も『キカイダー』でビジンダーを演じて健康的な色気のある格闘アクションを毎回見せてくれていた。

本作では志穂美悦子の兄役として登場している宮内洋が後の『仮面ライダーV 3』であるし、犬走の側近のひとりは後の『宇宙刑事ギャバン』の大葉健二が演じていて志穂美に強烈に蹴りまくられている。

最近でこそハイレベルなテクニックなどが注目されがちだが、志穂美悦子のアクションはとにかくダイナミックさに定評があり、男性をも凌駕するようなオーラを感じさせる。
80年代に歌手である長渕剛と結婚し、芸能界引退した志穂美悦子ではあるが、今でも世界的に人気で復活の声を期待するものも多い。
アクションのレベルも決して当人的には低いものではなく、特撮系アクションも好きな方なら本作の格闘シーンはハマるはず。

惜しむらくは敵方にあれだけ個性豊かな敵を集めながらもその
ポイントを活かしきれているわけではないところ。
ラスボスも『燃えドラ』ハンのパクりなのが残念なところ。
それでも千葉真一らが仕掛け見せる格闘アクションは見応えたっぷりで迫力もの。
志穂美の演技の瑞々しさと相反するアクションのレベルの高さは世界的にファンができるのも納得といえるだろう。

評価…★★★★
(世界のスー・シホミが躍動する日。千葉ちゃんも美味しいとことってます(笑))