カナダのマーシャルアーツスター、ジャラル・メーリを筆頭に香港テイストのアクションを目指した刑事アクション作品。

市民課の刑事であるリンダは囮の痴漢捜査など日頃より小さな事件を扱うことにストレスを感じていた。
そんなある日、彼女は殺人課で話題となっている連続武道家殺人事件、通称『死の配達人事件』に注目し、その捜査担当となるべく殺人課に自身を売り込む。

犯人のプロファイル分析などで認められたリンダは事件の担当となるが、条件として相棒を持つことに。
その相棒が麻薬課に在籍するタレクであった。
タレクは一匹狼気質で単独行動を好む潜入捜査官だが、マーシャルアーツの達人であり、今回の事件のアドバイザーという形で停職処分を保留にして起用されたのであった。

リンダから渡された遺体に残された傷跡からタレクは犯人が中国拳法の達人で、最も古来からある必殺拳『虎爪拳(タイガークロー)』の使い手であると推理。
自身も学んだことのある虎爪拳の犯人を探るため、リンダとともにチャイナタウンにある中国拳法の道場を片っ端から調査するが、手掛かりはつかめずじまいだった。

そんなある日、チンピラ達に絡まれていたとある道場の生徒を助けたタレクとリンダは彼から虎爪拳を秘密裏に教えている達人チョウの情報を得る。
タレクの友人も参加していた格闘大会でその姿を確認し、接触を図り、リンダにその道場の場所を尾行させる。

しかしその間にまたしても死の配達人による殺人事件が発生。
犠牲者はタレクの友人であった。

業を煮やしたタレクはリンダから聞いた場所を尋ね、半ば強引にチョウの道場に潜入するため入門。
やたら敵対視してくる門下生のウォンに犯人の可能性を感じるものの真相は掴めずじまいであった。

そんな中、タレクは友人となった門下生の一人と道場でひたすら壁画を書いている男、チョンと共にバーへと繰り出す。
そこでギャングが強襲し、タレクは撃退。チョンも武術の腕を見せるのだが、そのチンピラがかつてタレクと揉めた経緯で彼が潜入捜査官であることをばらされてしまう。

タレクが刑事であることを知ったチョンは遂にその本性を露にする。
彼こそが一連の殺人事件の真犯人であり、正体を知られ、暴走した彼はチョウを含めた道場生たちを皆殺しにする。

一方でチョンこそが犯人と確信したタレクとリンダも道場に駆けつけるのだが、チョンの異常な儀式の祭壇こそ破壊するも、あと少しの所でチョンに逃げられてしまう。

彼を追い続けるも足取りは掴めず、タレクはライバルに捜査妨害として逮捕されかかるが、その時行方をくらましていたチョンがタレクたちに襲いかかる。
手錠により手を封じられたタレクはチョンを逮捕するため、絶対的不利な状況の中で、待ち受ける殺人鬼チョンに最後の戦いを挑むのだが…

シンシア・ラスロックら香港系アクションスターたちが凱旋し、その格闘シーンをみせるポリティカルアクション。

格闘技系刑事アクション作品において殺人鬼のシリアルキラーとの対決ものは結構取り上げられている題材のひとつで、過去にもチャック・ノリスやゲイリー・ダニエルズといったアクションスターたちが作り上げてきた。

このジャンルでは味方もそうだが、敵のポテンシャルも重要であり、ゲイリー・ダニエルズの作品ではスーパーキッカーであるダレン・シャラヴィがゲイリーとの激しいキック合戦を繰り広げて話題となった。
本作ではその武道家ばかりを狙ったシリアルキラーにあのボロ・ヤンを起用。
ハリウッドでは強面ながらヒーローもこなす彼の本領発揮とばかりに見事なサイコキラーぶりを見せつけ、そのパワフルな虎爪拳でボロ・ヤンの衰えぬ肉体美を堪能できる。

実質の主役はカナダ出身のアクション俳優、ジャラル・メーリ。制作やプロデュースまでこなす多才さでB 級アクション界では知られた人物である。
突出したアクションのポテンシャルがあるわけではないが、柔軟性や時折みせる回し蹴りなどはそこそこの迫力。
とにかくアクションの見せ方が上手い。

そして彼の相棒となるのが香港から凱旋してきたシンシア・ラスロックである。
彼女は今回、香港時代を彷彿とさせるような連続回し蹴りなどのアクションも見せていて、この辺りはさすが香港アクションで鍛えられただけある。

格闘シーン自体は全体的には地味な虎爪拳の描写や雑魚敵のポテンシャルの低さもあり、もっさり感は否めないところ。
ただ、主要キャラが絡む対決は組み合わせ的にも期待値があがり、実際香港映画では実現しなかったシンシア対ボロ・ヤンの対決、クライマックスでのジャラル・メーリ対ボロ・ヤンの一騎討ちは見応えがある。

三者三様のキャラがあり、それぞれに見せ場や注目すべきポイントはあるが、やはり本作での一番のポイントはシリアルキラーぶりをみせたボロ・ヤンのインパクトの強さ。
香港時代からカンフー映画の名悪役として知られていた彼だが、ジャッキー・チェンらよりも先にハリウッドに進出し、B 級アクション映画ではスターの一人として数えられた彼は、やはり悪役がよく似合うし、イキイキしているように見える。

その後彼のキャラの強さを活かした続編シリーズも作られており、主役の二人よりもボロ・ヤンの強さとインパクトが目立ち、裏の主役として挙げても可笑しくない。

未DVD 化の代物ではあるが、続編では更なる格闘技出身のスターも参加していることあり、そのアクションを堪能しておきたいところである。

評価…★★★★
(悪役ボロ・ヤンの一人勝ち状態か?)