ジャン・クロード・ヴァン・ダムの人気を決定付けたキックボクシング作品の続編。

若くして現役を引退したデヴィッド・スローンはスラムの街中で貧しい子供たち相手のキックボクシングジムを営んでいた。
若手のホープとして期待されているブライアンなど実力はあるもののジムの経営は火の車で、会計士のジャックの手立てもむなしく、2ヶ月もの家賃の滞納が続いており、授業料を一斉に上げるか、デヴィッド自身が現役に戻ってファイトマネーを稼ぐしか方法はなくなっていた。

かつてデヴィッドの試合を組んでいたマカイアは彼の足元を見るようにデヴィッドに現役復帰の誘い水を出すのだが、悪どい興行と金のためなら何でもありな彼の考えにデヴィッドは頑なに復帰を拒む。

しかしブライアンは選手としての将来を考え、密かにデヴィッドに内緒でマカイアと接触をもつ。
頑なにプロとしてのデビューに拘るブライアンに対し、デヴィッドは説得を重ねるのだが、意固地になった彼は聞く耳をもたずデヴィッドのジムを去る。

そして遂にデヴィッド自身もいよいよ経営が成り立たなくなってくると、デヴィッドは渋々ながらマカイアに試合を組むように頼むのであった。

マカイアが彼の復帰戦に選んだ相手は自身の懐刀であり、ヘビー級のチャンピオンであるニールであった。
試合会場でブライアンに揶揄されながらもリングに上がったデヴィッドは、ウェイト差など卑劣な組み立てにも関わらず、圧倒的なテクニックと実力でニールを圧倒し、復帰戦でタイトルを奪取。
歓声に沸くなかで、デヴィッドはそのままタイトル返上して引退を宣言し、マカイアの裏の所業をテレビ中継にぶちまけて帰ってしまう。

業界の信頼を失なったマカイアはこの試合の資金提供を行った謎の男サンガの諫言によってデヴィッドに報復を計画する。
数日後の夜。物音で目覚めたデヴィッドが見たものはジムに放火する数人の暴漢であった。
反抗し戦うが多勢に無勢、デヴィッドはリンチにあい、ジムは全焼。彼のジムに住み込みで通っていた少年のジョーイが犠牲となってしまう。
犯人の一人はあのニールであり、逮捕されたものの心と怪我によるショックははかり知れず、塞ぎ混む毎日を送るデヴィッド。そんな彼の前に一人の老人が現れる。

その老人はかつてデヴィッドの兄であるカートを鍛え上げ、最強のムエタイファイター、トン・ポーを倒したカートの師匠、ジアンであった。
飄々とする彼を尻目に、かつてそのトン・ポーによって二人の兄を殺されたデヴィッドはその復讐を頑なに拒む。

一方、デヴィッドのもとを離れたブライアンはマカイアのもとに入り、破竹の勢いで連勝街道をひた走るが、それはハードなトレーニングと過剰な薬物投入による結果であった。

そして怪我がようやく癒えてきたデヴィッドはジアンの指導のもと、強靭な肉体を取り戻すためハードなトレーニングを続け、復活にかけていく。
そんな中、ブライアンは遂にタイトル戦が決まり、リハビリに励むデヴィッドのもとにサンガから受け取ったチケットを渡す。

ブライアンの家族と共に、デヴィッドは彼のタイトル戦を見に行くのだが、ブライアンの対戦相手は出場できなくなる。
ざわつく会場内にサンガから渡された対戦表を発表させるマカイア。
そして呼ばれた弁髪の男にジアンは顔面蒼白となるのだった。

サンガが新たな対戦相手として呼び寄せた男こそデヴィッドの兄であるカート、エリックを殺害したムエタイボクサー、トン・ポーであった。
サンガは試合以外の闇討ちで対戦相手を殺し、ムエタイ界から追放されたトン・ポーを復活させるため、ブライアンを今まで利用してきたのである。

サンガはトン・ポーに敗北を刻んだスローン兄弟の末弟であるデヴィッドと戦い勝つことでムエタイ界への復活を目論んでいた。
ジアンよりそのトン・ポーの凶悪さを聞いたデヴィッドはブライアンに試合を止めるように説得するも、ブライアンはこれを聞かず、試合は始まる。
反則技や殺人技を平気で使うトン・ポーになす統べなく攻められ続けるブライアンは遂にポーの非情の一撃を受けてリング上で帰らぬ人となってしまう。

サンガが数時間後にトン・ポーとのデスマッチを宣言するなか、デヴィッドは兄たちとブライアンのためにジアンの制止も聞かず戦うことを決意する。
関係者以外無人のリングに古式ムエタイのデスマッチ方法で上がるデヴィッドは因縁の仇敵トン・ポーに挑むのだが…

ヴァン・ダム主演で大ヒットとなった格闘アクション作品のまさかの展開となった続編。

『キックボクサー』シリーズは言わずと知れたジャン・クロード・ヴァン・ダムのヒット作であり、彼の代表作として挙げる人も多いほどのスポ魂溢れる格闘アクション作品。
そんなヒット作がB級アクション界では有名なアルバート・ピュンによって続編が作られることに。それが本作である。

しかし前作の主役であるヴァン・ダムはなんといきなり宿敵トン・ポーによって試合後に暗殺されたという衝撃の展開から始まる。
そのため彼の後を継ぐべく今回主役となるのが前作では一ミリも語られなかった末弟デヴィッド。それを演じるのがモデル出身のサシャ・ミッチェル。

なんと彼は本作がアクション映画としてデビューとなり、以降の『キックボクサー』シリーズの顔として『4』までヴァン・ダムの後継という形を担うこととなる。
追記すると彼は本シリーズでアクションのみならず、格闘技そのものに目覚め、なんとプロレスラーとしてデビューした逸話をもっている。

アクション的には、武術指導を務めたのが『スパルタンX』でジャッキー・チェンとアクション史上に残る死闘を演じた元キックボクシングチャンピオン、ベニー・ザ・ジェット・ユキーデということで嫌が上でもそのレベルに期待が高まるところ。

ただ実際はというと、主役のサシャ・ミッチェルはほぼ素人なため、ユキーデの指導でまぁ見れるほどにはなっているものの、ヴァン・ダムでの代名詞だった飛び回し蹴りにチャレンジするが体の軸はぶれまくっていて、ほぼ体制の崩れた回し蹴りになってしまっている。

中盤でのサシャ対マチアス・ヒューズ戦では図体の大きいもの同士が隙だらけの大技の回し蹴りをただ乱舞するだけという味気ないものに。

そしてクライマックスでのブライアン役ヴィンス・マードッコ対トン・ポーのミシェル・クイシからのサシャ対トン・ポーという場面はユキーデの一番の指導の見せどころ。
ところがこれはユキーデが悪いのか、ピュンのカメラワークが悪いのか(たぶん後者だろう)アクションのインパクトを強調するためだろうが、スローモーションの編集が多く、打撃やキックのヒットシーンも近くによりすぎてのパンチやキックがヒットする構図なため、本当に格闘シーンとして演じているのかが疑問になるところも。
サシャ・ミッチェルはともかく、ヴィンス・マードッコとミシェル・クイシは格闘家出身なのでそんな構図にしなくてもちゃんと立ち回りはできたはずである。
この辺りピュンのアクションへの詰めの甘さが感じられるところである。

またピュンが続編を請け負う際の特徴として、前作までの主人公を活かさず、主人公を新しくすり替えたり、勝手に殺してしまったりするワンパターンな手法。本作だけでなく、SF アクションの『ネメシス』シリーズなどでも同じような手法で行っていて、あまり引き出しが多くなさそうである。
主人公の刷新はカラーを変えるのに即効性ある方法だが、似た方法が増えれば違いが見えにくくなってくるのも事実。

以降『キックボクサー』シリーズはスローン兄弟対トン・ポーの因縁サーガとして『4』まで続くのだが(『3』は番外編的な役割)、サシャが降板し、マーク・ダカスコスが務めることとなった最終作『5』ではその因縁サーガも関係ないただの格闘アクションになってしまい尻すぼみとなっていく形となっていくのが残念ではある。

評価…★★★
(ヴァン・ダムが受けなかった時点でもう厳しかった。その上のアルバート・ピュンならもはややむ無しか(笑))


関連作品

スローン兄弟対トン・ポーの因縁サーガその不完全燃焼な結末


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