香港アクション三羽烏の一人で日本でも人気を博していたユン・ピョウの主演デビューとなるカンフーアクション。

シャオバイとダーバイは詐欺師兄弟。街でカモをみつけてはあれやこれやでお金や宝を騙しとり生活していた。
この日も高利貸しを騙してお金をせしめた兄弟は賭博場で一攫千金を狙うが持ってきたお金はふらっと現れた謎の浮浪者に石ころとすり替えられ、二人は店の用心棒たちに袋叩きにあってしまう。

ほうほうのていで逃げ出した二人は食堂で次なるカモを物色していた。
シャオバイは奥に座る白髪の男に狙いを定め、ダーバイの指輪を使った置き引き詐欺を装うのだが、反対に男にやりこまれ目論みは失敗。

二人は街道を歩く男に因縁を吹っ掛けるがこの男恐ろしいほどのカンフーの達人であった。
赤子の手を捻るかのようにあしらわれた二人はカンフーで強くなるために男に何とか弟子入りを志願する。
そのしつこいくらいの押し掛けぶりに根負けした男は二人を弟子に特訓を開始する。

シャオバイは元の柔らかさを活かした足技をダーバイは球をひたすら転がすことで十字拳の基礎を学ばされる。
やがて二人のカンフーの腕前は急成長し並の相手では負けないくらいの成長力をみせる。

早速腕試ししたい二人は朝市を荒らしまくるチンピラたちを相手にカンフーをみせ撃退。
更にせしめた金をもとに賭博場へと向かう。

二人はダーバイのボタンを使ったイカサマで一儲けを企むが、またしてもあの浮浪者に邪魔されてしまう。
用心棒に囲まれた二人だったが今度は圧倒的な差で彼らを返り討ちにすると意気揚々と賭博場をでる。
二人はあの浮浪者を見つけこらしめようとするのだが、その浮浪者は信じられない体術で二人を圧倒しどこぞへと消えてしまう。

屋敷に戻った二人は見知らぬ男二人がいることに気づく。
二人は自分達の師匠を追っているらしく個々の力では敵わない強敵であった。

二人が帰ったあとに入れ替わりで戻ってきた師匠はシャオバイから事の顛末を聞き、ほくそ笑むととある作戦をシャオバイらに授け、自身を追う二人を呼び出す書状を送りつける。

数日後。相対するシャオバイたちと敵。作戦通りにダーバイと二人で敵の一人チーヨを圧倒する中で師匠はもう一人を必殺技で殺害。そして残ったチーヨも頚を折って殺してしまう。

長年の禍が晴れたと二人に食堂で祝宴の準備を任せた師匠は着替えのために家に戻るとそこには一人の男が待ち構えていた。
男は実は役人であり、師匠は実は街で強盗を働いていた極悪犯のチャーであった。
チャーを追ってきた男は仲間二人が彼に殺されたことを知り自らチャーに挑む。

その頃師匠を呼びにいこうとシャオバイは家に戻ってきたがそこであの役人と師匠が戦っているところを目撃する。
実は凶悪犯だったことを知り困惑するシャオバイが隠れていることを知らず、役人を殺害したチャーは死体を隠して店に行こうとするがそこにダーバイが現れる。

ダーバイによりシャオバイが自分の正体を知ったチャーは有無を言わさず彼を殺そうと襲いかかる。
意味も分からずに抵抗を続け止めようとするシャオバイだがチャーはもはや師匠ではなく凶悪犯としての本性を露にしていた。

見たこともない必殺拳を武器に二人を圧倒するチャー。
執拗に襲われるシャオバイを救うためにダーバイは身を呈してチャーに反抗し、シャオバイを逃がすために自分を犠牲にして殺されてしまう。

チャーの追跡を逃れるため闇雲に走り逃げるシャオバイ。
ダーバイの死に怒り震えるが実力差は歴然であり、憤激するしかなかった。

その夜。シャオバイは灯りに誘われて覗きこむとそこにはあの浮浪者がいた。
チャーにひけをとらない達人と見込んだシャオバイは何とかして彼に弟子入りし、ダーバイの復讐を遂げようと考える。

翌朝になり弟子入りを願うも無下に断られたシャオバイは一計を案じてその浮浪者ととある賭けをする。
浮浪者が負ければ拳法を教えるという条件で。
狡猾なシャオバイは見事に一杯食わせて悲願の弟子入りを果たすのだった。

浮浪者は実は猿拳の達人であり、シャオバイはそのユニークながらも激しい特訓により猿拳をはじめとしたカンフーの腕を上達させていく。

特訓を始めて数ヶ月。猿拳もマスターし始めたある日、達人の使いで酒を買いに街へ出たシャオバイはそこでチャーの姿を見かける。
復讐心にかられ追いかけた彼は自らチャーに決戦を挑む。

腕をあげたシャオバイは一進一退の攻防を繰り広げるのだがまだ見せてないチャーの必殺技を前に徐々に圧されはじめる。
やがて郊外の茶屋で乱闘となった二人に達人が加勢。
実は浮浪者のように振る舞っていたこの男はチャーを追って派遣されてきた役人であった。

息の合ったタッグの猿拳で追い詰めるが不意をついたチャーの反撃で達人が負傷してしまう。
シャオバイは苦しみながらも戦い続ける。そんな強敵を前に達人はある奇策を用いるのだが…

香港随一のスタントマンともいわれるユン・ピョウの初の看板となるカンフー作品。

ブルース・リー以降最も優れたアクションスターとして評されるスター、ユン・ピョウ。
彼はジャッキー・チェンやサモハンと同じく京劇軽業集団『七小福』の最年少メンバーであり選抜であった。
当初からアクロバットの腕はピカイチでありその身体能力の高さは数々の危険スタントで証明されている。

七小福を卒業後は最年少スタントマンとして『死亡遊戯』のリーのダブルやチョイ役で下積みしながらサモハンのスタントチームに入って本作の主演デビューを果たす。

一応本作はサモハンの人気シリーズである『燃えよデブゴン』にナンバリングされているが察しの通り各作品に繋がりはない。
ちなみに本作は第5弾扱いとなっている。

この頃大ブレイクを果たしたジャッキーの『拳シリーズ』を意識した作りにはなっているが、そこはサモハン彼らしいユニークなアイデアとガチなカンフーアクションでシリーズの中でも特に評価が高い。
前半はユン・ピョウと兄役の粱家仁のボケとツッコミの関係からくるコメディアクション風だが、粱家仁が殺されてからは一転シリアスな復讐憚に空気感が変わり、二度美味しい感じにも見える。

作品内でも主人公が複数の師匠からカンフーを習うという珍しいパターンであり、しかも一方の師匠がラスボスになるという展開も斬新でこの辺りはサモハンのアイデアが光る。

そして何より注目なのはアクションレベルの高さだろう。
主人公のユン・ピョウをはじめサモハンスタントチームを結集した動ける面々が揃い踏み。
粱家仁や師匠兼ラスボスにゴードン・リュウの義兄ラウ・カーウィン、もちろんサモハン自身もコミカルながら猿拳の達人としてユン・ピョウの師匠役でいい味を出しまくる。

前半戦はユン・ピョウの鮮やかな足技の数々と粱家仁の見栄えする十字拳アクションが素晴らしい。
賭博場での立ち回りなどは2回あるが最初はコミカルなアクションを2回目は二人のテクニカルな格闘シーンを堪能できる。

後半はサモハンとのユニークな特訓、そしてクライマックスのラウ・カーウィンとの壮絶な死闘が見処。
アクロバットが得意なユン・ピョウを象徴するかのように高速の連続バク転や大縄跳びを使った特訓が圧巻。

それを踏まえてのクライマックスは表題のコミカルさとテクニカルさを合わせた猿拳を駆使してラウ・カーウィンと戦うのだが、ここでのサモハンとユン・ピョウのタッグ攻撃はスピードもさることながら息の合ったコンビネーション攻撃の多彩さにも注目したい。

そしてそれをも凌駕するラウ・カーウィンの強さ。老け役ではあるが重厚な威圧感とオーラがあり、キセルを使った蛇拳という珍しいカンフーも見せてくれる。

このクライマックスの後半からは本作でしかないユニークな決闘が見れるのでぜひその目で確かめてもらいたい。

また珍しいところではジャッキーの作品にもよく顔を出していて、芸人『ほんこん』の元ネタとなった名脇役『火星(マーズ)』が出演しレアなカンフーアクションをみせている。その点も注目である。

とぼけた警察隊長にカール・マッカが担当し灰汁の強いボケをかますなどコメディもアクションも高いレベルでバランスのとれていたサモハンの手腕が光る本作。
ベタすぎる演技は視る人によって好き嫌いがありそうだがカンフー作品としては間違いなく楽しめることは間違いない秀作といえる。


評価…★★★★★
(ユン・ピョウの身体能力もスゴいがサモハンがそれについていけるのが更に驚き。流石は世界一動けるおデブだけある(^ω^))


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