実際の若き武術界のチャンピオン達を集結して作り上げたマレーシア産の格闘アクション作品。

17世紀の末のマレーシア。
建国前のこの地では『スズ』の生産地として注目され当時の中国から大量の若者たちが労働者として送られていた。

彼らは『苦力』と呼ばれ、国にある多額の借金を返すために祖国を離れて働き、いつか借金を返して祖国に帰ることを夢見ていたが実際は朝から晩まで働きづめでも一生帰ることは叶わずかの地で暮らすことが殆どでありやがてマレーシアの建国の原形となったという。

1884年。大規模なスズの鉱山を所有する洪は軍国化の進む日本や天龍会の三王を相手に莫大な利益を得ていた。
しかしその過酷な労働条件のため労働者たちの間では悲鳴と不満が限界にまで達しようとしていた。

工場長を務める天芍は人徳が厚く、彼の息子代わりの阿龍、阿光、阿杰、阿虎は実の兄弟のような関係であり、それぞれが武術に長けていた。

そんな中で労働者たちの不満を解消すべく天は社長に根回しをして労働条件の改善の訴えの返事を阿龍と阿虎に取りに行かせる。
洪は既に聞いているとして天に知らせるように二人に促して帰すが、洪はそんな彼らに刺客を放ち抹殺しようとする。
同じ頃十五夜記念の晩餐をしていた労働者たちの宿舎に洪の右腕である武術の達人阿林率いる監視人たちが乱入。労働者たちの皆殺しを画策する。

死屍累々のなかで重傷を負いながらも逃げ延びた4人と天。
4人は離れの原住民たちの村に介抱され治療をうける。
薄れる意識のなかで4人はそれぞれに抱いていた過去を思い出していた。

阿龍は兄弟たちの未来について想いを馳せ、阿虎は洪社長の一人娘丹丹との恋について想いを馳せ、阿杰は洪によって親を失った娘を幸せにするために賭博に手を染め別れた想いに。そして阿光は自分の出生の秘密についてそれぞれに思いを巡らせる。

やがて離れた場所で村長の仲間によって天も助け出される。
しかし彼らが生きていると知った洪は三王と共に刺客を放ち追跡を続けていた。

天の捜索のために街に来ていた阿杰と阿光は刺客に襲われる。
謎の助太刀で阿杰は危機を脱するもなおも追跡してきた刺客がすぐそこまで近づいていた。
洞窟に身を隠していた阿龍と阿虎は手負いのまま挑み、辛くも返り討ちに成功する。

一方、阿光を追い詰めていた阿林は三王から預かった手紙を彼に渡す。
そこには普段から阿光が抱いていた不満と亡き父に関する秘密が書かれていた。
しかしそれは新たに鉱山業に手を出すための三王が仕組んだ罠であり、天に不信感を持っていた阿光を裏切らせるための策略であった。

洪が自分たちを皆殺しにしようとしたことを知った天たちは復讐のため4人もそれぞれに鍛練を積みその機会を待つ。

しかし阿光は自分の父親を殺したのは天ではないかと疑い、三王に協力を申し出る。
そして兄弟のなかでも最も冷静
で強敵となりうる阿龍を呼び出し、兄弟を裏切って阿林と共に阿龍を暗殺するのだった。

阿光の裏切りと非道な洪と三王の野望に怒り震える天と阿杰と阿虎。
三王によって新たな鉱山の工場長を決める武術大会が開かれることを知った天たちは阿光もそこに現れると察し、復讐のために二人を大会に送り出す。

阿光が工場長就任として盛り上がる中に乱入する阿杰と阿虎。
兄の仇のため阿杰は阿光と壮絶な一騎討ちを繰り広げる。
そして阿虎は丹丹が見守るなか全ての元凶となった強敵、阿林との最後の戦いに挑む。

自由を掴むため、正義を貫くため二人は戦うのだが…

昔のマレーシアを舞台にした本物の格闘家たちが入り乱れる本格派の格闘アクション作品。

カンフー映画においてフィリピンやタイに渡った中国人『華橋』をテーマにしたものは多いが建国されていない未開地だったころのマレーシアを舞台にしたカンフーアクションはなかなかに珍しいのではないだろうか?
ここでは彼らは『苦力』と呼ばれて清の末期から流れてきた若者の労働者を指している。
しかし実際のところ彼らは奴隷に近い生活だったようでその過酷さは本作からも見てとれる内容。

そんな中で主役格となるのが4人の若者なのだがこれがみんなそれぞれに武術の達人であるところがみそ。
実際に演じている俳優陣も本物の武術大会において幾度もチャンピオンに輝いた強者である。

実質の主人公である阿虎役のマイケル・チンはマレーシアのカンフー大会を連覇したり、阿龍役のロビン・ホーは三度の武術大会優勝者、阿光役のデビッド・タオは世界太極拳大会の覇者。敵役で出てくるゴツいショーン・リーは散打のチャンピオンと肩書きだけでも限りなく豪華。
そんな彼らのアクションを指導したのが元ジャッキー・チェンのスタントチーム出身で自らもアクションスターだったチン・ガーロッである。

キョンシー作品で主演を務めるなどショウブラザーズ出身のアクションスターとして名高いチン・シウホウの実弟でガーロッ自身も『酔拳2』などでアクションをみせるなどポテンシャル高いアクションスター兄弟として知られている存在。
そんな彼が武術指導として関与した本作はまさにジャッキー作品で見せていたリアルヒッティングに撤したスタントと格闘シーンとなっている。

前半ではショーン・リー達が乱入する宿舎での乱闘シーンにおいて蹴られた労働者が高所から転落したり階段からもんどりうって落下したりと危険な受け身のスタントが見処。

中盤では洞窟と自然を使った武術の鍛練のシーンなどカンフー好きなら思わず気持ちが盛り上がるものもあり、クライマックスにおける実力者同士の一騎討ちへと雪崩れ込む。

それぞれに武術のスタイルが違うだけに中国拳法でありながら異種格闘技戦的な要素も感じられ、竹の柵で覆われたリングで行われる太極拳対少林拳、少林拳対散打とその戦い自体は非常に見応えのあるものである。

ただその戦い自体はいいものの結果として編集において変な血しぶきの安いCG がつけられていることによって迫力が台無しにされている所が問題。
アメコミのような演出でスピード感なのかを表現したかったのかもだが、今回においては完全に蛇足と化している。

そして余計な傾向は物語全般にもあり、主役格の4者4様の回想録が展開するのだが、これが唐突な恋愛やヘビーな出生の秘密など散漫で纏まりがついてない印象と共に中弛みを感じさせてしまっている。

とにかくカッコよさを追求したかったのか主題歌がゴリゴリのヒップホップなのに挿入歌は柳ジョージのような渋いボーカルによるロックバラードなどそれが物語の舞台と相まっていないのでどうも全体的にちぐはぐ感が否めないところ。

シンプルなアクションスタイルにすればかなりよくなったのかもだが、余計な味つけのために素材のよさが薄れてしまったという感じだろうか。
若きアクションスターの発掘ものとしては押さえておいてもいいが、ごちゃまぜな世界観は観るものによってかなり賛否が分かれそうな作品といえる。

評価…★★★
(素材もアクションもいいのに何か勿体無い。これは編集の罪か(^^;?)

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