16世紀末。イギリスの沿岸で一人の宣教師が新大陸へ追放されようとしていた。
彼の名はエステバン。
キリスト教の牧師でありながら悪魔崇拝に傾倒しサタンの復活を願って若い妊婦らを生け贄にするなどで迫害されたのである。

時は変わって現代。
カリフォルニアの陸軍士官学校に通うクーパースミスは小肥りな体型とその愚鈍さ、要領の悪さから格好のいじめの標的とされていた。

彼はプライドの高い士官学校の教師からも疎まれており、いじめの加害者の中でもクラスメイトのババ率いるグループは特にクーパースミスへの当たりが強かった。

ある日授業に遅れてしまったクーパースミスは担当教師に嫌味を言われつつ罰として地下室の掃除を命じられる。
ホコリ被った地下室にはサージという酒浸りな小間使いが生活しており、おどおどするクーパースミスをからかい追いかけ回していた。

そんな彼が地下室の奥の間に偶然逃げ込んだ時、一冊の古びた教本を見つける。
ラテン語で書かれたそれは表紙に禍々しい紋章がついており、興味を持ったクーパースミスは密かに持ち帰って読みふける。

パソコンを使ってラテン語を訳していくうちにそれがエステバンの悪魔崇拝の教本であることを知ったクーパースミスはその世界にのめり込み翻訳して教本をパソコン内に保存していく。

一方でババたちによるいじめは激化の一途を辿っていた。
陰湿化してきた彼らのやり口に加え、学長にも睨まれ始めたクーパースミスはある日学長室に突然の呼び出しをくらう。
説教をくらい豚小屋の掃除という罰を課せられるクーパースミス。
しかしその時に持ってきたあの教本を置き忘れてしまい、その本は秘書であるフリードメイヤーが持っていってしまう。
読んでみるも分からない彼女は表紙にある紋章を取り外そうとする。すると突然クーパースミスの掃除していた豚たちが暴れ始め危うく彼は襲われそうになるのだった。

掃除を終えたクーパースミスは教本を忘れてきたことに気づき、フリードメイヤーに訪ねるも彼女は教本を持ち帰るため知らないとウソをつく。
既にパソコンに教本をインストールしていたクーパースミスだが学園内ではパソコンの時間に限りがあるため、彼は地下室へとパソコンを持ち込み教本の翻訳にのめり込むのだった。

しかしそんな彼をみたババたちは黒いフード姿でクーパースミスを驚かせいじめを続ける。
気絶する彼を目に高笑いする4人。
一心不乱にクーパースミスは教本に取りつかれたようになるのだった。

そんなある日、クーパースミスは地下室に迷いこんだ子犬を発見。心のよりどころのなかった彼はブレッドと名付け、祈祷で飾った地下室で飼うことにする。

しかし泣き声から小間使いのサージに地下室の祈祷部屋が見つかり、荒らされそうになるが突如パソコンが稼働しクーパースミスの目の前でサージは首の骨を折られて死んでしまう。
パソコン内には既にエステバンの悪霊が息づいていたのだった。
更に同じ頃、教本を持ち帰ったフリードメイヤーはシャワーを浴びていた所をエステバンに操られた野豚の大群に襲われ貪り喰われて殺される。

恐怖に動転したクーパースミスは学長たちに報告しようとするが一笑に臥されたうえに更に怒られてしまう。
仕方なく戻りサージの死体を隠すと友人がクーパースミスを学園祭に誘ってくる。

ちょうどミスコンが行われクーパースミスはイチオシだった彼女が賞を逃したことを励まそうとし告白するが、そこにババ達が現れ彼女の目の前で服を脱がしパンツだけの姿にして嘲笑する。
ショックを受けた彼はトイレの一室で引きこもり泣くしかなかった。

しかし更に悲劇は続く。
酒を飲んで酔っ払ったババたちは地下室に忍び込んでクーパースミスのイチオシの彼女といちゃつこうしていたが、そこで彼の飼っていた仔犬に女の子たちは気づく。
邪魔されたババたちは謎の声に誘われるかのように子犬をナイフで惨殺し逃げ帰るのだった。

憔悴しきったクーパースミスが地下室に帰ってくると大量の血痕と共に無惨にも殺されたブレッドの遺体が転がっていた。
激しい怒りと絶望にクーパースミスは自らの魂をエステバンに捧げ、悪魔の使徒として復讐を決意する。

人間の血液を欲するエステバンにクーパースミスは自分を追ってきた教師を祭壇で串刺しにし、その血を飲み干す。
やがて封印されていたエステバンの十字架の墓が砕けちり、コンピューターの画面を通じてエステバンが復活。
クーパースミスの身体の中に取りつき彼を悪魔の使徒として復活させる。

一方、ババたちを含むラグビーチームの面々は姿の見えないクーパースミスなど御構い無しに礼拝堂へと集まり、牧師のミサに参加していた。
そんな中、キリスト像に打ち込まれた釘が動きだし、牧師の脳を直撃し死に至らしめる。

そして壮絶な爆発音と共に大剣を用いてクーパースミスが出現。空中を浮遊するとわめきたてる学長の頭を剣で一閃し惨殺する。

それと同時にクーパースミスに操られた人食い豚たちが出現。逃げ惑うチームメイトやババの仲間たちを襲い食い殺していく。
悪魔と化したクーパースミスは空中を漂いながら因縁の相手を次々と剣の餌食にしババに迫る。

阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるなかでクーパースミスによる惨劇は続いていく…

壮絶なクライマックスの殺戮劇が話題となったオカルトホラー。

公開当初より本作は何かとサイキックホラーの名作『キャリー』と比較され、一般的には『キャリー』の男版と称されている。

たしかに冒頭の試合に負けて責任転嫁され虐められるシークエンスや構図、プロムでの度を越したいじめのシーンなどは狙ったかのように重なる部分も多い。
しかし本作は同じ流れ、似通った設定であっても単に『キャリー』の模倣という評価では勿体無いパワーが感じられ現代においてキャリーよりも再評価がされつつある作品といえる。

主演を務めたクリント・ハワードは名監督であるロン・ハワードの弟であり本作が主演デビュー作。
しかしそれすら感じないほど彼のいじめられっ子の演技はドハマりしており、何となく愚鈍でおどおどした感じがしっくりくる。
それゆえにクライマックスでの血ぬれに瞳孔が拓いたまま空中に漂うあの禍々しい姿はかなりの恐怖感を与える。

そして主役のクーパースミスだけでなく周りのキャラクターもかなりたっていて、いかにも陰険そうな教師や同情の念が一欠片も出てこないほど憎々しいいじめっ子たちなど残酷ながらも爽快感すら感じるクライマックスを盛り上げる非常にいい伏線となっている。

ストーリー的にはクライマックスまではエグいシーンはおさえめでひたすらクーパースミスの受難を延々と見続ける形だが、この蓄積がのちの爆発力に繋がるだけに退屈ではあるが重要な要素。

ただそれでもショックシーンは所々あり、サージが勝手に首を捻り折られる描写や現れた野豚の群れに裸の美女が内臓もろとも喰いちぎられるなど残酷描写のインパクトもなかなか。

しかし本作の最大の見処は圧倒的迫力で繰り広げられるクライマックスの10分にわたる大殺戮シーンである。
壊れたマリオネットのように吊られて浮かぶクーパースミスが獲物を見つけた瞬間にみせる狂気の表情、そして次々首チョンパされ転げ落ちる犠牲者の首。
反省しようと懇願しようと容赦なく惨殺するシーンは残酷ながらも荘厳さすら感じる。

そして食人ブタの群れの蹂躙が面白い。
使役するのがなぜブタなのかはさておき雑食性で何でも争うように貪るブタが人間に襲いかかり喰い尽くす様はなかなかにショッキングである。

さすがに直接的に人間を食べている描写などはないものの襲われてコロンと手首だけ転がるなどスパイスの利いた表現が見事である。

当時ではパソコンを通じて悪魔が復活するという設定も斬新だったが、現在に置き換えていくと本作はまた違った怖さが見えてくる。

インターネットが普及した現代では翻訳処理も早く、そして何より簡単。
パソコンがオタクのものだったのは昔の話であり、今ならスマホやタブレットで子どもでも操作できる。

いじめは相変わらずなくならずしかも陰湿化してるとなれば現実にクーパースミスみたいな人物が出てきてもおかしくないだろう。
まぁ悪魔に頼るというのはナンセンスかもしれないが、超能力で紅蓮の炎に包んだキャリーよりは遥かにいま見るとリアリティある内容ともいえる。

『キャリー』はリメイクされたそうだが、淡い青春ホラーに薄まったことを考えると本作がリメイクされればかなり上質なホラーになりそうではある。
いじめの復讐に悪魔崇拝、そして何より本作が怖いのは『キャリー』と違ってクーパースミスがあれだけの凄惨な殺戮を起こしたにも関わらず単なる狂人として精神病院に入院させられただけというラスト。

悪魔として覚醒したままのクーパースミスのその後の続編が観てみたくなるような傑作といえる。

残酷度…★★★★★

評価…★★★★★
(ネットが普及した今だからこそなおさら怖さを感じる作品。残酷だけじゃなくクーパースミスはいつでも現れる可能性があると思えるのが一番の恐怖ですな(^^;)

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