ジャン・クロード・ヴァン・ダムの出世作であり後にシリーズ化リブートまでされた格闘アクション作品。

キックボクシングチャンピオンのエリック・スローンは今宵も挑戦者を華麗な技で仕止め、タイトルを防衛した。
そんな彼の次のタイトル戦はキックの本場タイのバンコクで行われることとなった。

弟のカートと共にタイへ渡り、余裕の表情でタイを満喫する兄弟。タイトル戦を前にエリックの調子も充実しており勝利を確信する二人だった。

試合当日。開始30分前に身体を冷やす氷を頼まれたカートは途中でどこからか鈍い打撃音を耳にする。
その音を辿るとエリックの対戦相手である弁髪の男がセメントの柱を蹴っていていた。

その異常なまでの光景と強烈な殺気にカートは言い知れぬ恐怖を感じ、エリックに試合を辞めるよう進言する。
しかしエリックは耳を貸さず、試合開始。
すると対戦相手のトン・ポーは圧倒的な破壊力の肘や膝でエリックなぶり殺し状態に。
何とか1ラウンドは耐えるが2ラウンド早々に強烈な膝とラッシュでダウンするとカートのタオル投入を無視してトン・ポーはエリックの背骨を肘でへし折ってしまう。

興業主であるフレディ・リーの指図によって瀕死のエリックとカートは会場の外へと放り出されてしまう。
助けを求めるカートを見かねた、元軍人で今は武器商人のテイラーによってエリックは病院へと担ぎ込まれるが、命は助かったものの脊髄の損傷により下半身はマヒし、一生歩けない身体にされてしまう。

未だ目を開けない兄にカートはトン・ポーへの復讐を決意するが、それはまさに無謀な挑戦であった。
バンコク中のムエタイ道場に赴き、トン・ポーを倒すためにムエタイを習いたいと言うと嘲笑されたり、罵詈雑言を浴びせられるもカートはさ迷い続けるしかなかった。

見かねたテイラーは唯一ムエタイを教えてくれそうな達人をカートに紹介する。
それは郊外にすみ、テイラーをして『変人』と言わしめる男であった。

カートは早速案内された場所へと訪ねていくと途端に逆さ吊りのトラップにかかってしまい逆さ吊りのまま目の前には小柄な老人が現れる。

ジアンと名乗るその男にカートは弟子入りを志願するのだが、彼は事も無げにカートを姪が働くという近くの集落まで買い物にいかせる。

集落につくと物珍しそうに集まる子供たちと戯れるカート。
一段落してジアンに言われた姪マイリーの店で買い物をしようとしたとき、店にチンピラたちが現れ売上金を強奪しようとする。

正義感からチンピラたちを撃退するカートだったが、彼らはフレディ・リーの子分であった。
報復を恐れて反対に罵られたカートは釈然としない気持ちで家に辿り着く。

その蛮勇を聞いたジアンはカートをみとめ弟子入りをゆるすのだった。
翌朝早くから早速特訓は始まる。
それは原始的でありながら哲学的であり、そして何よりもハードであった。

脛を折れる寸前まで木の根元を蹴る訓練や耐久力とスタミナをつけるための水中訓練。
そんな過酷な特訓を経てカートはムエタイファイターとしての腕をめきめきとあげていく。

そして特訓の手伝いをするマイリーともいつしかお互いに愛し合う仲になっていった。

ムエタイの特訓を始めて数ヶ月。ジアンは特別レッスンとして郊外にある水上バーへとカートを連れていく。
強い酒でしこたま酔わせ上機嫌となっているカートにジアンはとあるテストを仕掛けていた。
気分よくダンスするカートにいきなり襲いかかる男性客たち。
カートは酔っぱらいながらもそれを返り討ちする。

実はこれがジアンの売り込みであった。
居合わせていたフレディ・リーにその様子を見せ、彼の子飼いであるトン・ポーとの対戦相手として彼を勧めるためであったのだった。

手始めにフレディは前座として自分の選手と戦わせる。
カートはそこで快勝し、会場全体を味方にしてフレディにトン・ポーとの決闘を改めてアピールするのだった。

数日後。
ジアンのもとに巻物が届く。
それは正式なムエタイの決闘の果たし状であった。
昔ながらの拳にガラス片をまぶした古式ムエタイのデスマッチ方式での決戦に居合わせたエリックはカートを止めようとするが彼は気持ちを新たに特訓に励むのだった。

しかし裏ではトン・ポーの勝利を確実なするためフレディがあらゆる工作を仕掛け暗躍し始めていた。
トン・ポーによって拉致されたマイリーがレイプされ、手下達によってエリックが人質にされ、ジアンの飼い犬が瀕死の重傷をおう。

エリックを人質にとられたカートは八百長を余儀なくされ、その解決もつかぬまま試合当日を迎える。

血生臭いデスマッチは兄を人質にとられ攻撃らしい攻撃のできないカートを次第に追い詰めていく。
そして遂にトン・ポーはカートを仕止めるためハンデなしの勝負にでる。

そんな中で、ジアンとテイラーの協力によってエリックが助け出され、ボロボロのカートに檄を飛ばす。

遂にカートは逆襲を開始。
様々な想いと怒り、そして復讐を経てカートはトン・ポーに戦いを挑むのだが…

格闘俳優としてのブレイクを確実なものにした記念碑ともいえるヴァン・ダム初期の代表作。

『ブラッドスポーツ』の主演デビューから知る人ぞ知るアクションスターとして注目されていたヴァン・ダムだったが、本作と『サイボーグ』をきっかけに一気にメジャーに躍り出た。

この頃のヴァン・ダムは自身のポテンシャルを出し惜しみせず持てる得意技は全て出しきっている感がある。
代名詞となった180度開脚、打点の高い飛び後ろ回し蹴り、足ビンタなどなど。現在ではキックひとつ出さない時もあるだけにその瑞々しい肉体美と共にヴァン・ダムアクションは堪能できる。

ストーリー的には昔の香港カンフー映画をトレース
(肉親が殺される若しくは痛めつけられる→偉大な師匠と猛特訓→宿敵と戦う)
したような設定であり、分かりやすくシンプル。完全な勧善懲悪ストーリーで見ていて考えさせれることはない。

そのシンプルさゆえか以後本作の模倣的なシリーズ作品も多く現れ、そのほとんどはこの香港スタイルの設定となっている。
本作自身も後に続編シリーズが作られていったがかなり明後日の方向を向いた展開になっており、最終作となった『5』ではもはや本作と関係ない人物の別物ともいえる感じになっていった。

本作の肝となるアクションだがやはり注目は主人公ヴァン・ダムのやる気に溢れた格闘シーンと奇想天外な特訓シーン。
一応はムエタイ映画だが厳密にいうとヴァン・ダムはファイトスタイルは空手とキックボクシングのミックスでクライマックスにおいてもムエタイの技というものは意外に見せてはいない。

格闘シーンの一番のハイライトはやはりクライマックスの宿敵トン・ポーとの古式ムエタイのデスマッチ戦だろう。
拳にガラス片をまぶしたみるからにヤバそうなやり方はまさに合法的殺し合いのような様相。
序盤での猛り狂うようなトン・ポーの攻撃をすんでで避けるヴァン・ダムにはこちらも息を飲むようなスリリングさを感じ、中盤からはボコボコにされまくってグロッキーになるヴァン・ダムに想いを重ねるような熱気を観ている方も感じるだろう。

ただ終盤からエリックが戻ったあとのヴァン・ダムの強さとトン・ポーの棒立ち具合はちょっと違和感を感じざるを得ない所もある。
それまでヴァン・ダムのキックにも平気な顔をしていたトン・ポーがサイドキックひとつでいきなり苦悶の表情になりあとはヴァン・ダムの必殺技のオンパレードをひたすら食らいまくる様は映画的にはいいけど現実的ではない。
まぁそこまでリアルには拘ってはいない様子なのでカタルシスは重視ということで。

また特訓シーンにおいてはお馴染みの股裂きから硬いヤシの実を腹部に落とす腹筋チャレンジなどお子様が真似するにはハードな特訓シーンも満載だが、一番インパクトあるのは『ローキック竹割りチャレンジ』だろう。
復讐心をだしにして腫れ上がるほどに蹴りまくるヴァン・ダムにこちらも熱くならざるを得ない(^^;

アクションにおいては他にも酒場でのファイトシーンなどもあるがここでは寧ろヴァン・ダムのクネクネダンスの方がインパクトある(笑)
これはファンの間でも語り草となっていて後にリブートされたときもこのシーンは弄られまくってここだけエンドロールに追加されたほど(笑)
なかなかマッチョのダンスなど見ることもないが、とみにヴァン・ダムはうまいのか変なのか微妙なラインでだからこその弄られ具合なのだろう(^ω^)

本作のおかげでヴァン・ダムは見事にスターダムへと乗ったわけだが、本作における一番のMVP は敵役のトン・ポーであることは間違いない。

リブート版でもラスボスはトン・ポーだったが、バティスタの演じたトン・ポーは悪役としてはちょっと足りないものがあった。肉体的にはまさに超人的ではあったが。
本作におけるトン・ポーを演じたミシェル・クイシは強さもそうだがその凶悪さクズさにおいてまさにベストな仕上がりだった。トン・ポーといえば弁髪というイメージを決定付かせたあのスタイルも素晴らしく、その姿かたちはそのままリブートでも受け継がれているほど。

小兵な師匠ジアンとカートのやり取りもいい具合の距離感で『ベストキッド』のダニエルのミヤギを彷彿させる。
そして特訓の最中においてもちゃっかり姪を口説くカートのリア充ぶりもさすが(笑)

『ロッキー』のような逆境からの逆転劇に香港テイストのアクションが加味された美味しいとこ取りの作品。両ジャンルいずれかに好みがあれば本作は間違いなく楽しめることだろう。

評価…★★★★★
(ヴァン・ダムもやる気十分だしいい終わり方なのに続編とかリブートホンとに必要だったのか(^^;?)

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