B級格闘スターの二大巨頭、ジャン・クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンの初共演、対決が話題となったヴァン・ダム黄金期最大のヒット作品。

1965年のベトナム。
敗戦間近のアメリカ陸軍のとある部隊。数週間後に除隊となるリュックは半狂乱と化した仲間たちから部隊の指揮権をもつスコット軍曹が狂い、敵味方問わず虐殺しているという証言をきく。
果たして彼が駆けつけるとそこには犠牲者の耳をペンダントにし悦に入ったスコットがリュックを見つけ叱咤する。

リュックの目の前で人質を射殺し、爆殺するスコットに逆上した彼は銃剣でスコットを刺すがスコットもリュックに銃撃を浴びせ、二人はそのまま死亡するのだった。
それから数時間後。現場に駆けつけた医療班は凄惨な現場に閉口するが軍部の指揮官はリュックらの遺体を氷付けにして運び出すという謎の指示を班に下すのだった。

それから25年後…
アメリカでは相次ぐ凶悪なテロ事件を次々と解決していく謎の部隊『ユニバーサル・ソルジャー』が話題となっていた。
今回もダムを占拠したテロリストグループを抹殺するため派遣されたユニバーサルソルジャーたち。その中には死んだはずのリュックとスコットの姿もあった。

超人的な力と能力であっという間にテロリストたちを全滅させるソルジャーたち。しかしそのなかでリュックは人質たちの姿が最後のシーンとオーバラップし、記憶が混濁してしまう。

ニュースレポーターのベロニカは謎に包まれたユニバーサルソルジャーたちの情報を仕入れるため、彼らが根城としている航空機施設内に侵入する。
ベロニカはそこで蜂の巣になっていたソルジャーの一人を発見し無我夢中でシャッターをきるのだが、その瞬間蜂の巣になったままのソルジャーが目を開け彼女に迫る。

侵入のばれたベロニカは急ぎ逃亡を図るのだが、ソルジャーたちから逃げられず車は横転。引っ張り出された二人は説明を求めるも、命令を無視してスコットはベロニカの同僚を撃ち殺す。
だがそれを見ていたリュックは記憶の断片が蘇りスコットに攻撃してベロニカをつれて何処へと逃亡するのだった。

二人は逃げようとするが途中車はガス欠を起こし立ち往生。その時リュックは凄まじいパワーで車を郊外のモーテルまで運ぶがそこでオーバーヒートを起こしやむなく一室で潜むことに。
リュックの身体はその凄まじい能力と引き換えにエネルギーの消費も激しく、熱が溜まり込んでしまうのだった。
バスに氷を敷き詰めて冷やすとリュックの負っていた銃創はたちまち回復していく。

その頃、モーテルを囲むように配置されたソルジャーたちは彼らに向けて一斉射撃を始める。
銃弾の嵐のなかを二人は何とか耐え抜き、彼らの隙をみて車で逃げおおせる。

だが執拗な追跡は続いていた。
何かしらの追跡装置が仕込まれていると考えたベロニカはリュックの大腿部に埋め込まれていた追跡装置を取り外し、追ってくるユニバーサルソルジャーたちを反対に罠にしかける。
やがて装置を便りに追い付いたソルジャーたちは小屋の中に飛びいるのだが、そこで罠にはまり大爆発に巻き込まれる。
ほとんどのソルジャーが焼け焦げ戦闘不能となるなかでスコットの記憶が復活。
指揮官であるペリーを射殺して残ったソルジャーたちを率いてリュックの行方を追う。

故郷の記憶が蘇りつつあるリュックはベロニカと共にユニバーサルソルジャー計画の責任者であるグレガン博士のもとを訪れていた。
彼はそこで自身が既に死んでいた人間であり、適切な処置をしなければいつ活動不能に陥るかも分からない状態だと知らされる。

スコットは自分を裏切り陥れようとする博士たちを次々に殺害。しかし手榴弾の誤爆で装甲車が爆発し、スーパーに立て籠った彼は駆けつけた警備員たちを次々射殺するなど暴走を始める。

グレガンの忠告をきいてもなお故郷にもどるとするリュックはベロニカと分かれ別行動しようとするがそこに警官隊が現れ完全包囲されてしまう。

護送される中でうなだれる二人。そこに突然大きな衝撃が襲いかかる。
護送車を襲っているのはスコットたちが率いる巨大トレーラーだった。
ベロニカを逃がし、容赦なく猛進してくるトレーラーにリュックは決死の覚悟で乗り移り運転するソルジャーを戦闘不能にすると、トレーラーはスコットの咆哮と共に護送車ごと谷底へと墜落し爆発する。

様々なトラブルに見舞われながらようやく故郷へと帰りついたリュック。
25年ぶりとなる親子の対面を果たし、ベロニカもソルジャー計画の真実と殺人犯とされた汚名をはらすため帰ろうとするのだが、そこに死んだはずのスコットが立ちはだかる。

両親をベロニカを人質にし一騎討ちをのぞむスコット。血清をうち圧倒的なパワーをもつ宿敵を相手にオーバーヒート寸前のリュックはなす術がない。
だがベロニカがスコットの手榴弾によって倒され、ついにリュックの怒りが爆発する。

豪雨の中、すべての因縁を断ち切るためリュックはスコットに最後の戦いを挑むのだが…


ヴァン・ダム史上最高のヒットとなりのちにシリーズ化もされたSFアクション作品。

今でこそヴァン・ダムとラングレンの共演というのは珍しいことでもないが、本作当時はアクションファンとしてはかなり衝撃の企画であった。
当時のハリウッドアクション界では勝手にライバル関係に仕立てることで切磋琢磨というか煽り合う関係性があり、その共演というのが暗黙の了解でタブー視されていた。

有名なところではシルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガー。
作品に似通ったジャンルのある二人はことあるごとに比較され、やがては互いの作品内で弄り合う感じにまでなっていた。
そしてこうした関係性を構築させられてきた第2弾がヴァン・ダムとラングレンである。

二人は作品としての共通性は少ないものの同じ空手出身のブレイクしたアクションスター同士として勝手にライバル関係にされていた。
しかし本作が企画される頃はヴァン・ダムは飛ぶ鳥を落とす勢いであったが、ラングレンは大ヒット作品に恵まれず斜陽化してきたところ。
ネームバリューバランスとしては奇しくも同じくらいという奇跡も本作が大ヒットとなった要因のひとつかもしれない。

本作の監督を務めたのはあのローランド・エメリッヒというのも注目点。
ディザスタームービーの大御所として数々のパニック映画を手掛け、最初のハリウッド版『ゴジラ』の監督を務めるなど、ダイナミックな映像が特徴的だが、本作ではド派手な爆発シーンなどにその片鱗がみえる。

ストーリー的には今でも都市伝説として囁かれる人造兵士計画をもとにした陰謀論を組み込んだもので、死体を兵士として使うゾンビソルジャーにまつわるもの。
ただしアクション作品として基軸はあるのでいわゆる倫理観や内部の陰謀といったドラマ性は極力除いている。

しかしそのなかでも次第に生きていた頃の環境や望みの記憶が蘇り、それがそれぞれの行動パターンに反映していくというのがストーリーを楽しむための肝となっているところにも注目したい。

肝心のアクション面であるが、これは宣伝通りとなるヴァン・ダムとラングレンの二人の味が見所。
昇り調子であるヴァン・ダムは全盛期だけあり、その蹴りひとつにしても見せ方のインパクトが違う。
血生臭いアクションが多いなかでレストランでの格闘シーンは小気味いい彼の空手アクションが楽しめ、コメディ的な要素すら感じられる。

一方で今回久々の本格的悪役を演じたラングレンは重厚で余裕すら感じる佇まい。しかし長身から繰り出されるハイキックなど近年では見られないアグレッシブな格闘シーンがある。

そんな本作最大の見所となるのがクライマックスの一騎討ちシーンだろう。
スピードとテクニックのヴァン・ダム、パワーのラングレンの激突は当時のファンからしたらまさに夢のカードで、対峙するだけでも興奮必至。

対決内容的には今見るとかなりラングレンが技らしきものを出していなくてとにかく力任せにぶん投げてばかりなのが惜しくはあるが、そんな巨人のラングレンに必死のキックをぶちこむヴァン・ダムの動きは流石。
単発な蹴り技や飛び蹴りが多いが、カメラワークの妙もあり見ていて燃える内容になっている。

このあと『エクスペンダブルス2』で再共演するまでにそれぞれの道を歩むわけだが、再共演からせきをきったように共演作品が増えてしまったためありがたみやその豪華さが薄れてしまったのはもったいなくもある。

ただ本作は二人が最高の形で激突した傑作であり、シリーズ化されてもなおその仕上がりにおいてはベストオブベストであることに間違いない。
最高に輝いていたヴァン・ダムをみるなら一番オススメといえるだろう。


評価…★★★★
(この二人の共演だけで文句無し。ただ対決シーンにおいては少し単発な感じもあったのが唯一惜しいところか)

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本作の『正統』な続編である作品。かなりダークな感じになりました