郊外にある古ぼけた屋敷。
数々の墓標の傍らにたつこの家では入った者が行方不明となる噂があった。
そして今日も学生のカップルが肝試しで空き家となっているはずの部屋で事を済ましていた。

そんな中で彼氏が忽然と姿を消す。心配になった彼女が彼を探しにいくとそこには頭を割られ脳漿を出しながらこちらを見つめる彼の姿が。
錯乱状態となり逃げ出そうとする彼女は何者かの腐った腕に掴まれ、頭から刃物を刺されて絶命する。
こうしてまたこの家の新たな犠牲者が増えたのだった……

それから数年後。
ニューヨークの歴史学者ノーマンは前任者であるエリックの突然の自殺の訃報をきき、彼の研究のあとを引き継ぐため妻ルーシーと一人息子ボブと共にニューイングランド郊外にある古ぼけた洋館屋敷へと引っ越してくる。
裏にいくつもの墓碑がならぶ不気味な佇まいに不安を抱きながらも越してきた彼らは生活を始める。

しかし屋敷内には奇妙な現象が起こっていた。
息子ボブは自分そっくりの肖像画をみつけるがルーシーたちにはそれがみえていなかった。

やがてボブは隣に住む謎の少女メイと親しくなり友達となる。
メイから古ぼけた人形をもらったボブは大事に持ち帰り片時も離さなかった。
そんなボブの世話にとノーマン夫妻は子守り兼家政婦としてアンを雇うのだが、ルーシーはそこでアンの首が切り落とされるという幻覚をみて激しく動揺するのだが、彼女の他にその異変に気付くものはいなかった。

改めて不動産屋の案内人であるローラに屋敷内を案内されるノーマン夫妻。
しかしルーシーは周囲が墓碑に囲まれている不気味さに不安を覚えるのだが、ノーマンは高額で研究を引き継いだ手前もあり彼女を何とか説得して住み着くことになるのだった。

そんな中でノーマンは固く閉ざされた扉を発見する。
それは地下室に通じるものであった。

その夜からノーマンは地下室からきしむような音やすすり泣くような呻き声などをききはじめる。
翌日、アンはその閉ざされていた扉の板をおもむろに引き剥がし始めるのだがノーマンは奇異的なものを感じるのだった。

前任者であるエリックのことについてノーマンは聞き込みを始めるのだが、誰もその原因を知るものはおらず、途方にくれる
そしてノーマンの留守中掃除をしていたルーシーはとある部屋の中で薄汚れたカーペットを取り外すとそこには墓石があった。
そこには『フロイトシュタイン・ジェイコブ』と彫られており、その直後から地下から何者かが暴れる音や低い呻き声が聞こえ始める。

地下には家族以外の何者かが潜んでいる。
言い知れぬ恐怖に震えるルーシーはノーマンに墓石と地下から潜むものについて話し出す。
決意を固めたノーマルは遂に地下室への探索を始めるのだが古ぼけた扉は錆び付いた鍵もありなかなか開かない。
ようやくこじ開け地下へと進むといきなりコウモリの群れがノーマンたちに襲いかかる。
苦闘の末に何とか撃退するのだが獰猛なコウモリの群れはノーマンの手をズタズタに切り裂いていた。

次々と起こる怪奇現象にしびれを切らしたノーマンは過去の文献などをあさり、フロイトシュタイン博士について調べはじめる
するとノーマンはフロイトシュタインが過去に禁断の研究に手を染め医学界より追放されたという文面を発見する。

不審な記録やたて続く怪奇現象に遂にノーマンも家を出て解約することを決意。案内人と共に不動産屋に駆け込み手続きをはじめる。

手続きの進むなかで案内人のローラは留守となった屋敷に調査へとはいるがそこで床がぬけ彼女は穴にはまってしまう。
すると奥底より何者かが近づいてきて動けなくなっているローラにナイフを深々と突き刺す。
断末魔の悲鳴をあげる彼女に容赦なくナイフは何度も刺され、片目も抉られた彼女の死体は腐った腕をもつ何者かに引きずり運ばれていくのだった。

翌日、血だらけとなっている床を掃除するアンに起きてきたルーシーは何事かきくもアンも分からないまま。
ノーマンはエリックの真実を探り調査書をまとめるため一度ニューヨークに戻ることをルーシーに伝え出かけていく。

その頃外でメイと遊ぶボブは帰宅時間となり家に戻ろうとするがメイは一言『家には入るなと警告したはずよ』と呟き、ボブを見送る。

ニューヨークで調査を進めるノーマンはエリックが残したとされるテープレコーダーを発見。
再生するとそれは想像を絶するフロイトシュタインの残酷な研究内容と呪われた真実が残されていた。
彼は急ぎ自宅へと戻るのだった。

同じ頃ボブを見失ったアンは彼を探しに禁断の地下室へと入ってしまう。
ひとりでに扉が閉まり閉じ込められるアン。
やがて恐怖におののく彼女は奥底よりきた何者かによって首を切り落とされてしまうのだった。

アンの断末魔の悲鳴をきいたボブは地下室へと降りてしまうが、彼は階段の上から転がり落ちてきたアンの生首に絶叫する。
開かない扉を必死に叩き助けを求めるボブに近づいてくる気配。
何とか逃げきれた彼は駆け寄ってきたルーシーにことの顛末を話すのだが、既にアンの首も死体も忽然と姿を消したあとであった。

ルーシーになだめられてベッドに入るボブだったがやはり気になる彼は真夜中、意を決して地下室へと再び入り込む。
彼を迎え入れるかのように開き、そして閉じるドア。閉じ込められた彼の前にフロイトシュタインが迫りくる。

必死に助けを求めるボブ。
悲鳴をきいたルーシーもドアをこじ開けようとするがナイフをてこ代わりにしてもびくともしない。
だがそこにようやく帰ってきたノーマンが駆けつける。

フロイトシュタインの秘密を知った彼は手斧をもち閉じ込められたボブを救おうと扉に斧を打ち付ける。
だがそこには腐った腕に髪を掴まれたボブが扉に押しつけられていた。
ボブは意識を失い懸けながらも手を振り払い奥へと逃げ込む。

そこにはローラやアンの無惨な死体、そして臓物や肉片、さらには血塗られた虐殺道具が飾られていた。
追い詰められたボブに迫りくるフロイトシュタイン。しかしすんでのところで駆けつけたノーマン達にボブは助けられる。

犠牲者の新鮮な肉片や臓物を移植することによって百数十年以上も生きていたフロイトシュタインはもはや怪物と化しておりその怪力でノーマンの手斧を奪い投げ飛ばすと執拗にボブに襲いかかろうとする。

ノーマンはそばにあったナイフでフロイトシュタインの腹部を刺し抉るのだが、不死の怪物となった彼の身体からは腐敗した液体と共にウジ虫が涌き出るだけであった。
そして返す刀でノーマンは喉を抉られて絶命する。

ルーシーはボブを逃がそうと微かに光が差し込む階段に彼を上らせるが自らはフロイトシュタインに足を掴まれ、引きずり下ろされた際に階段に顔面を打ち付けられて死亡する。

一人残されたボブにゆっくりとせまるフロイトシュタイン。果たしてボブの運命は…


マカロニ残酷ホラーの大御所、ルチオ・フルチが手掛けた不条理ゾンビホラー作品。

『サンゲリア』で自身最高のヒットを生み、たちまち世のホラーファンの間にその名を広げたルチオ・フルチ。
数々の作品を産み出している彼だが中でもその世界観や残酷描写の激しさからファンの間でも勝手に三部作に認定されているものがある。

それが『地獄の門』、『ビヨンド』、そして本作の『墓地裏の家』である。
このうち『地獄の門』と『ビヨンド』は似たような世界観をもち表裏一体、姉妹作とも呼ばれているのだが、本作においては地獄の門という宗教的世界観ではなくとある屋敷の敷地内というミニマムな世界で繰り広げられているにすぎない。

しかしいずれにおいてもゾンビなのか怨霊なのか分からない怪物が無差別に犠牲者を拡げていくという点では一致しており、何よりもその拘りある残酷描写においてフルチ自身も三部作としてのくくりを気に入っているようではある。

ストーリーとしては得たいの知れない怪物が潜む屋敷で次から次へとそこに訪れ、住むものを襲い殺害していくもので、いわば残酷色の濃いお化け屋敷的な設定ともいえる。
とはいえフルチ作品はもともとストーリー性を重視することはなく物語の展開はただ場当たり的により残酷な死を迎えるためのお膳立てにすぎない。
そのため何かしらの伏線なのかと思わせるシーンも結局何も関係なかったなんてことも少なくなく、本作においてはアンの首斬り描写を暗喩するような分かりやすいとこくらいしか伏線回収がない。

フルチ作品の最大の見所は激しく過ぎる残酷描写であるが、これは元々マカロニウェスタンもので鍛え、定評のあったフルチの本領発揮ともいうべきところ。
本作においても冒頭から脳漿を垂れ流して佇む青年に後頭部から口へ貫かれるナイフなど掴みから強烈。

そして特に本作は痛々しい残酷描写が多く、中盤ではナイフを使って身体を何度も抉ったり、首をグリグリと切り落としたりと耐性のない人なら正視に耐えない描写ばかり。
一応のヒロインも階段の縁に顔面を何度も打ち付けられるなどエグいやられ方をする。
そしてフルチの哲学である『目』に対する破壊描写は今回も登場しており、抉られた死体が引き摺られる様は身震いするほど。

また今回の肝となるフロイトシュタインの造形はその滑り感やクリーチャーぶりが見事でありまるで怪人のような出で立ちでありながら腹を刺すとトロトロの液体と共にウジ虫がボトボトと出てくる生理的嫌悪感満載の描写で一度みたら忘れ難いインパクトを残している。

そんな不気味かつ陰惨な本作品の最大の功労者は他でもないボブ役の子役につきる。
ホラー作品においてはクリーチャー以上に強烈な印象を与える子役が多いが、本作におけるボブ少年はブサカワな感じでありながら金切り声の悲鳴が鼓膜に焼きつくほどで80年代における強烈な子役のベスト3にも入るくらい印象深いだろう。

終わりも良く分からない感じではあるが、前述したようにフルチの作品に完全性を求めてはいけない(笑)
衝撃的な残酷描写に影響を受けながら終わったあとはそれぞれの思想、考え、思いに委ねるのが本作含むフルチ作品の面白さの醍醐味でもあるのだから(^^;


残酷度…★★★★★

評価…★★★★
(残酷だけど結局何だったか分からない。それがフルチ三部作の正しい理解の仕方です(^^;)

関連記事
勝手に三部作の二作目。やっぱり世界観はぶっとんでます
ABEMAプレミアム

 


TSUTAYA TV / TSUTAYA DISCAS