地名から名づけたという「喫茶 空」。

 何年ぶりだろう?オムライスが、というよりも、あのトマトソースの味が恋しくなり、東京から帰省している友人と久しぶりに訪れてみた。

 

 8月だというのにクーラーいらずの久住。高原を吹き抜ける風はひんやりしていて気持ちがいい。居心地の良い店内から、ふと窓の外を眺めると、椛がうっすらと赤く染まっていた。昼でもこの涼しさなので、朝晩は相当冷え込むんだろう。


 壁に飾っている魚拓をみると、渓流釣りが得意だったオーナーを思い出さずにはいられない。屋久島にエノハがいるいないの激論を交わしたこともあったが、結論的にはこの周辺が一番大物がいるというオチだった。場所だけは最後まで教えてくれなかったが。

 ある会議の後、自慢のオムライスをぜひ食べに来て欲しい、そう誘われて初めて食べた時の僕のリアクションに、ニカッと微笑んだあのうれしそうな笑顔が懐かしい。

 久住の個店では地産地消は当たり前で、奥さんのご両親が荻町で育てている完全無農薬栽培のトマトをふんだんに使っていること、10を超える糖度なのに酸味の強い品種からこの味が出ることなど、こだわりにこだわった完成秘話をしてくれた。

 以来、強烈な一ファンになったわけだが、男一人で来るようなお店でもないので、誰かと一緒に久住に来る機会があるたびに寄らせていただいていた。

 

 しばらくして目の前に現れた、あのひと皿。

 

 真っ先にスプーンでソースをひとすすりすると、濃いというか深くもしつこさはない、何とも表現しにくい酸味が口中にひろがる。これだよ、これ。

 

 

 同行している友人たちも少々驚いていたご様子。二人とも都内の有名店は、全て味わい尽くしたというかなりのグルメだが、このレベルはそうそうないと話す。そんなことを聞くと自分のあやふやな説明がなんだか申し訳なくもあり、出来れば、オーナーのいらっしゃる時に連れて来たかったな。そんなことを思いながら、七里田温泉へ向かった。

合掌

 

 

 

 

 でわ!