昨年訪れた時は、立ち入りが禁止されていた御厨人窟(みくろど)。

 

 前回ブログ「GODZILLAのような室戸岬」

 

 修行時代の若き弘法大師は、この洞窟の中から見える景色を見ながら「世の中には空と海しかない」と開眼。“空海”と改名したと云われている由緒ある聖地で、最近はパワースポットとしても名高い。

 

 今回、高野山奥之院への御礼参り後の翌朝、九州へ帰る際に立ち寄ってみたところ、中に入れるようになっていた。但し、「ヘルメット着用」が義務付けられていて、手前にある納経所で貸し出しを行っているようだが、時間が早いため納経所はまだ空いていない。

 昔はヘルメットなど無かったんだからと自分に言い聞かせ、侵入を試みる。

 

工事中のような入口

 

ここで生活していたらしい

 

残念ながら視界にあるのは空と海でなく、鉄骨と鳥居であった

 

 有名なパワースポットで何か強い気持ちの変化があったかというと、そんなことは全くなくて、むしろ少々がっかりした気分で洞窟の内部を見回していたところ・・・

 

 

 これまで見たこともない、眩いオレンジ色のカニが目の前をのっそのっそと歩き過ぎた。人間に慣れていないのか、ひどく怯えているような震える動きが、愛おしいというか新鮮に映る。

 

 なんだか、心がすーっと洗われた気がした。

 

 もしかしたら、1200年以上前に空海もこのカニの先祖を見ていたのではないか。いや、きっと目にしているに違いない。そこで何を思ったのだろう?そんなことをぼんやり考えていると、随分と満たされた気分になった。

 

 四国遍路の道程や弘法大師の伝承は、長い年月の間に幾度となく上書きされていて、何が真実なのか戸惑うようなことも多かったが、自分がこうして目にした現実こそが全てではないかそんなことを考えていると、これまで終わりたくないと思い続けていた旅の終わりを初めて受け入れようと思えるようになったのである。

 

 

 

 

 

 でわ!