以前の記事“行政書士事務所がパスポートを取り上げ!?”でお伝えしていた行政書士を京都地検が起訴したようです。この頃は不法残留などの事件をよく耳にするようになってきました。
そこで、本当に増えているのかを法務省の統計で見てみたいと思います。
| 入管法違反はほとんどが不法残留
法務省の統計によりますと、2018年中に入管法違反によって退去強制手続をとった外国人は約1.6万人にも上ります。2017年から約19%も増えています。
2014年 10,676件
2015年 12,272件
2016年 13,361件
2017年 13,686件
2018年 16,269件
2,500件以上、20%弱の増加ですので、かなり増えたと言っていいと思います。
近年は、入管法違反での退去強制のうちで85%近くが不法残留になっています。
2014年 8,274件(約78%)
2015年 9,982件(約81%)
2016年 11,198件(約84%)
2017年 11,502件(約84%)
2018年 14,353件(約88%)
不法残留以外では、不法入国、不法上陸、資格外活動、刑罰法令違反などがあります。それぞれ総数の2~5%くらいですから、不法残留がいかに多いかが分かります。
| ベトナムと中国が2トップ
入管法違反の多い国籍はどこでしょうか。2017年までは中国が最も多かったのですが、2018年はベトナムが最多になっています。
2016年 中国(4,000人余)、ベトナム(2,300人弱)、タイ(1,800人弱)
2017年 中国(4,000人弱)、ベトナム(2,900人余)、タイ(2,000人余)
2018年 ベトナム(4,400人弱)、中国(4,200人余)、タイ(2,100人余)
中国やタイも増えてきていますが、ベトナムが急激に増えていますね。約1.5倍になっています。上位3か国以外では、フィリピン、インドネシア、ネパール、韓国、ブラジル、トルコ、ウズベキスタンが多いです。
| 短期滞在の在留資格が不動の1位
在留資格別で見てみますと、短期滞在、技能実習、特定活動、留学の4つだけで全体の85%程度を占めています。
2016年 短期滞在(4,500件弱)、技能実習(3,300件余)、留学(1,600件余)、特定活動(800件余)
2017年 短期滞在(4,700件余)、技能実習(3,100件余)、留学(1,700件余)、特定活動(1,270件)
2018年 短期滞在(5,300件余)、技能実習(3,500件弱)、特定活動(2,600件弱)、留学(2,300件弱)
特定活動が年々増加しています。留学の件数も増えているのですが、とうとう留学を追い抜いて特定活動が3位に上昇しました。短期滞在も5,000件を超えていますが30~35%くらいで推移しています。。技能実習は横ばいと言ったところでしょうか。
特定技能の在留資格を持つ外国人が多くなってくると、特定技能もランクインしそうです。ちなみに、2019年11月現在で特定技能の在留資格を持っている外国人は1,019人しかいないそうです。初年度に最大4万人を見込んでいましたが、全く届かない状況ですね。今後は、新型コロナウィルスの影響も出そうです。
| 増えてきている“特定活動”って?
近年増えてきている“特定活動”による入管法違反事案。“特定活動”とはどのような在留資格なのでしょうか。
“特定活動”は、“技術・人文・国際業務”などの就労系資格、“日本人配偶者等”などの身分系資格と以外の“その他の活動”を行う在留資格です。インターンシップやワーキングホリデー、外国人看護師・介護福祉士候補者などが該当します。個々の外国人について法務大臣が特に指定する活動とされています。
“特定活動”には、入管法に規定された特定活動、告示に規定された特定活動、告示に規定されていない特定活動の3種類があります。
“特定活動”について詳しく書くと長くなりますので、次回以降に譲りたいと思います。
| まとめ
1 入管法違反のうち不法残留が約85%!
2 ベトナム人の入管法違反が増加!
3 特定活動による入管法違反が急増!