【コラム】大学院生のメンタル不調について 〜打開策・予防策編〜

前回は、僕が大学院生だったときの自分や周囲の人の経験、教員になってから見てきた看護系大学院生のメンタル不調について、原因やなりやすい人の特徴を記事にしました。

(まだ見ていない人はコチラから→「【コラム】大学院生のメンタル不調について」

今回は万が一メンタル不調に陥ってしまった際の打開策や予防について私見を記事にしたいと思います。

メンタル不調の打開策

眠れない、気分が上がらない、寝すぎてしまう、食欲がない、楽しみを感じないなど、メンタル不調のシグナルを自覚したとき、どのような対処をとればよいのでしょうか。僕もかつてそうでしたが、精神疾患的には「適応障害」に分類されることが多いと思いますが、根本的な改善を目指すのであれば、環境を変えることが一番の改善策になります。僕も周囲で同様に診断された人も、「大学院生活から離れること」を専門家から勧められました。

しかし、これまでの努力やこれからのキャリアを考えたとき、なるべくそれはしたくない…そうしたときにどうすればできるだけ上手く付き合っていけるのでしょうか。

個人的な経験から、以下の5つの対策は検討してみると良いでしょう。

  • 環境を変える
  • 生活にメリハリをつける
  • 誰かに相談する
  • 身近な人のアドバイスを受け入れる
  • 専門機関に相談する

 

環境を変える

「大学院生活から離れること」以外にも、環境を変える方法はあります。
例えば僕は、研究室内の人間関係が物凄く辛いときは研究室へは行かず、図書館や自宅で作業するようにしました
普段であればなんとも思わない人間関係も、メンタルが弱っているときはすごく悪い刺激になったりします。実験系の研究をしている人以外は、研究室以外でも比較的作業しやすいと思いますし、手軽にすぐできる対処法なのでおすすめです。

ちなみに、今は完全回復している僕ですが、院生室がうるさいとき(他の院生がお喋りしているとき)や先輩が愚痴をこぼしかけたりしているときは研究室を抜けて図書館で作業したり帰宅したりして回避しています。笑

 

生活にメリハリをつける

単位を取り終わって学位のための研究しかやることがなくなると、途端に生活リズムは乱れやすくなります。僕もそうでしたが、とくに一人暮らしの方は要注意意識しないと就寝時刻、起床時刻が遅くなり生活リズムがすぐに乱れていきます
また、研究が煮詰まってくると、ご飯を食べているときもお風呂に入っているときも寝る前も、常に研究のことで頭がいっぱいになり、私生活と研究生活のメリハリが無くなっていきます
研究が煮詰まっているときに起きやすく、そのようなときはたいていネガティブで悶々とした思考が頭を支配しているので、気分も上がりません。
朝早く起きて研究室に行き、時間を決めて退室する。それ以外は基本的に研究のことは考えない。気持ちが上がらないときは特に意識してメリハリを付けましょう。

 

誰かに相談する

研究そのもののことは誰にでも相談できるものではありませんが、鬱々とした気分は誰かに聞いてもらって発散したほうが良いです。研究の込み入った話を相談しても、周りの友人や家族は「よくわからない…」と身構えてしまう可能性が高いので、あくまで「最近楽しいことがなくて気分があがらないんだ」と、今の気持ちについて打ち明けてみましょう
気心の知れた友人とかであれば、「よし、遊びに行こう!」とか「飲みに行こう!」と誘ってくれるかもしれません。そういうときは遠慮なく行きましょう。これもメリハリです
何より、「誰かに話す」というのは人間にとってとても重要なストレス対処法です。そのときポイントになるのは、先程述べた「込み入った研究の話をしないこと」と「答えやアドバイスを求めないこと」です。とにかく聞いてもらうことが大切です。

 

身近な人のアドバイスを受け入れる

相談相手や、最近のあなたの行動を見た身近な人がアドバイスをくれることがあります。「最近疲れてない?」とか「少し休んだほうが良いんじゃない?」とか「ちゃんとご飯食べたほうが良いよ」とか。メンタル不調に陥っているときは往々にして自分のことを客観的に認識できていないことがほとんどです。
こうしたとき、身近な人の目に映るあなたの姿は今のあなただと思って、その助言を受け入れるようにしましょう。「いや、疲れていない!」とか「休んでる場合じゃない!」とか思って拒まないこと

 

専門機関に相談する

メンタル不調によって何らかのサイン(不眠など)が出ているときは、迷わず専門機関に相談しましょう。大学によっては学生のメンタル支援室が充実していたり、最近では心療内科やカウンセリングルームも探せば意外と身近にあったりします。
僕もメンタル不調に陥っていたとき、当時付き合っていた彼女(現在の妻)に促されて心療内科に通院しました。
僕の場合眠れないことが本当に辛かったので、眠剤や抗不安薬の内服でだいぶ気持ちが楽になりましたし、内服後は正直通常より頭が鈍くなる感覚があったので、強制的に研究のことを考えなくなる時間が作れました。診てくれていた先生からは、症状的に緩やかな内服で大丈夫そう、とのことだったのでカウンセリングは強くは勧められませんでしたが、場合によっては心理士さんのカウンセリングを勧めてくれたりもします。
何より、メンタル不調はこころの風邪のようなものなので、不調を感じたら早めに専門機関に相談したほうが結果的に早期に改善する可能性が高いです。

 

メンタル不調を未然に防ぐには

ここまでメンタル不調に陥ってしまった際の対処法を紹介してきましたが、ここではメンタル不調を未然に防ぐ方法について紹介したいと思います。僕の経験上、以下のような点に気をつけるべきでしょう。

  • 自分に合った研究室を選ぶ
  • 情報収集をいい加減にしない
  • 生活にメリハリをつける
  • いい意味で研究室(あるいは研究)と距離を置く

「生活にメリハリをつける」「いい意味で研究室(あるいは研究)と距離を置く」は、対処法とほとんど同じなので詳細は省略しますが、不調に陥る前から注意しておくことが大切です。

「自分に合った研究室を選ぶ」「情報収集をいい加減にしない」の2つは、多くの大学院生や進学希望者があまりきちんとしていない印象があります。研究室によっては、メンバー同士仲睦まじい研究室もあれば、関係性自体はドライな研究室もあります。ガチガチに実績重視の研究室もあれば、「頑張り」が評価される研究室もあります。メンバーの研究以外も学ぶ姿勢のある研究室もあれば、基本的にコミュニケーションはメンバーの研究に関することしかコミュニケーションがない研究室もあります。

また、とても親身な指導教員もいれば、「背中を見せる」タイプの指導教員もいます。やるべきことを次から次へと伝えてくる指導教員もいれば、院生の自律性を重んじる指導教員もいます。

たとえ同じ大学院であっても、研究室のカラーは多種多様です。自分に合った研究環境はどれか、しっかりと情報収集して、後悔しない研究室を選択することが重要です。

どのような研究室に行くべきか。その選択基準はこれらだけではありませんが、進学前にじっくり吟味する必要があります。

 


大学院生活は、自分と向き合う時間でもあります。自分のダメな部分、嫌な部分と向き合わなくてはならないこともとても多いですが、学ぶ一歩を踏み出すことはとても尊いことです。そして身近なリソースを上手く活用することも大学院生にとっては重要なスキルのひとつです。

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