それ、問題です!

引退した大学教員(広島・森田信義)のつぶやきの記録

女性差別の裏にあるもの

2018-08-09 23:57:45 | 教育

 東京医科大学の入試で、女子と三浪以上の受験生に不利な操作が加えられていることが発覚し、大学は過去の事例の調査発表するとともに謝罪した。
 大学前では、女性差別反対などのデモがあったようだが、この問題は、あまり単純ではない。
 現場の女性医師へのアンケートでは、6割を超える医師が、大学の措置を理解している。その理由は、病院は、男性医師の労働に負うところが多く、女性医師の増加は、単純に喜べないというのである。
 今や病院という職場は、典型的な「ブラック職場」のようで、特に産婦人科、小児科の勤務は厳しいといわれる。救急病院も例外ではない。このブラック状況は、男女を問わずに医師に多大な負担を強いる。大学入試における女性差別とは別の視点で問題に対応しないと解決は難しい。
 単純に考えれば、病院勤務が激務で、長時間労働、しかも休憩時間なし等の問題は、医師の数を増やすことで解決できる面もあろう。医師は、言うまでもなく、「計画養成」で、国家が大学での医師養成数を管理する。特定分野では医師の数が多すぎて病院経営が難しくなっているというような事実もあるようだが、一方で過疎地等における医師不足という事実もある。養成者数だけでなく、勤務状況の指導、助言、管理などを国に期待したい。 一時、アメリカの医学部入試についての情報では、入試には、すでに学士号を持つ受験生に対して、極めて長い時間をかけ、単なる学力でなく、人格、識見等の人間のありようまで評価の対象にするということであった。このように選ばれ、養成された医師は尊敬に値する人材であることが多いのだとも言う.納得である。それが、現代もそうであるのか、全米の全医学部の方法なのかどうか知らないが、このような方法は、わが国でも必要なのではなかろうか。教科の点数、小論文で入学の可否を決定するというのでは、とんでもない医師を生み出すことにもなりかねない。
 そもそも、女子受験生の点数を減点するというのは、女子の方が男子より優れているという考えや事実の反映である。女性差別であると同時に、男子蔑視でもある。大学教師の経験から、男女の学力差について振り返ってみるとき、成績上位グループには、女子学生の方が多い。これは素質のみならず、学習態度が優れている故であろう。(学部によって男女の学生数には大きな差があるので、成績上位グループについての雑駁な記憶であることをお断りしておきたい。)医師のみならず大学を卒業して、社会人として、多様な職業人になるが、彼らの能力は、「学力」の違いのみに規定され、保障されるわけではない。入試段階でも、狭い意味の学力に限定せず、多様な人間評価法を追究すべきであろう。その方法は、AO入試における心許ない面接や実技では不十分である。認識能力、態度、など、人間の本質的な部分についての客観的な評価は難しい。しかし、一人の人間の生き方を規定し、社会人としての資質を決定する部分である。大学が、教育の専門家によって構成される機関であるのなら、この難しい問題に誠実に取り組まなくてはならない。男女の差などは本質的な問題ではない。
 このところ、教育の現場には、あきれかえり、落胆することのみ多いのだが、人作りの場としての教育機関、教育のありようを反省すべきであろう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿