新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

コロナ危機と自殺の関係

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NHKニュースで「8月の自殺者 大幅増加で1800人超 コロナ影響か分析へ」という記事が流れました。

www3.nhk.or.jp

 

ニュース抜粋

8月、全国で自殺した人は合わせて1849人で、去年の同じ時期より240人以上増えたことが分かりました。国は新型コロナウイルスの感染拡大の影響がないか、分析を進める方針です。

警察庁によりますと、8月全国で自殺した人は速報値で1849人で、去年の同じ時期に比べて246人、率にして15.3%増加しました。

このうち、男性は60人増えて1199人、女性は186人増えて650人となっています

 

このニュースを見て直感的に「コロナによる倒産・廃業や失業の増加で経済的困窮状態に陥ってこれだけの人が自殺したんだろうなあ」と思う人が多いでしょう。「政府はもっと財政出動をして困っている人たちを助けてあげないといけないじゃないか」とか「コロナ自粛を早く解除しなかったから経済的理由による自殺者が増えたんだ」という声がいくつも出ています。

しかしことはそう単純でないと私は見ています。日本において感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令された4月~5月までの間ですが、このときは逆に自殺者が大幅に減少しています。それともうひとつ注意すべきは男性より女性の自殺者増加が目立っています。ニュースには出ていませんが年齢層も確認しないといけません。

経済学者の飯田泰之さんはこのニュースについてツイートをされています。

 

 さらに飯田さんは次のツイートもリツイートされていました。鬱病になった人の自殺はいちばん症状が重いときではなく、そこから脱しかけているときだという話です。

 

 巨大災害や戦乱がもっともひどい混乱期は自殺者が急減します。自分の母親は戦時下で幼少期を過ごし、B29による空襲の中で逃げ回った経験しています。とにかく自分の命を護ることが精一杯だったといいます。あと大怪我をした経験を持つ人ですと受傷したときはさほど痛みを感じなかったけれども、しばらく経つと激痛が襲ってきたという話をすることが多いです。自殺にはそうしたタイムラグがあるということを頭に入れておかねばならないでしょう。とにかく失業増加などの経済的事象と自殺を単純に直接結び付ける議論がなされがちですが、自殺に関する諸データの精査しないと的外れなものになってしまうかも知れません。

 

もうひとり経済学者の田中秀臣さんがコロナ危機と自殺に関して仰っていたことを紹介しておきましょう。

引用

田中秀臣なぜ日本社会は戦前から自殺者数が多いのだろうか。

tanakahidetomi.hatenablog.com

 

田中さんはブログの文中で次のような注意を促します。

自殺者数と景気悪化を単純に結びつける論者やネット匿名が多いが、僕はこの新型コロナ以降、注意を再三促しているように、景気悪化そのものが自殺者数の増加をもたらすのではなく、その景気悪化を放置したりさらに加速させる経済政策の失敗が生み出す。この理解に乏しい人はこの問題を語る資格がない。

 天災や激しい経済ショックだけが自殺増加をもたらすのではなく、誤った経済政策で人々をさらに経済的苦境に追い込んだり、絶望感を抱かせることで自殺が増加するということです。

そしてこのブログ文の冒頭で緊急事態宣言が敷かれていた4~5月に自殺者が急減したのは多くの人々が日頃軋轢の多い企業や学校に行かなかったためであると述べております。表題で「なぜ日本社会は戦前から自殺者が多いのだろうか。」とありますが、その後「組織(企業、学校など)の日本的な在り方に大きな欠陥があるのだろう」と続けています。

緊急事態宣言と自粛要請で多くの勤め人たちは歪んだ職場から一時的に離れることができ自殺の原因となるようなストレスに晒される機会が減っていました。もうひとついえば休業や離職に追い込まれてしまった人たちは休業補償や失業保険給付などの公的な補償や保障を受けています。しかしながら緊急事態宣言や自粛要請が解除され、抑止されていた社会活動が再開されると、再び様々な社会的軋轢やストレスが圧し掛かることになります。鬱病でない人でも日曜日の夕方に起きる「サザエさん症候群」みたいな経験をされた方がいるでしょう。

上の飯田さんが仰っている疑問点とあわせて考えると、自殺で最も注意しないといけない時期は回復期と社会復帰の段階であるということかも知れません。さらにいえば公的支援が打ち切られるタイミングもそうです。この段階は復帰後の不安感や焦りが募りやすいです。社会復帰への自信をつけるための心理的サポートも必要となってくるのではないでしょうか。

あと田中さんのブログ記事では家庭内暴力、ネグレイト、児童虐待若い人たちのセックスに関する悩みやトラブルがコロナ自粛下で増加している点も指摘されています。さらに保育所の休園によって家庭内で未就学児を抱えなければならない状態になってしまった保護者たちの6割が強いストレスを感じ、うつ状態に陥っているというニュースも引用されていました。

新型コロナウイルスの影響で、未就学児の保護者のうち6割近くが強いストレスを感じ、国際的な指標に照らすとうつ病の検査を推奨される状態だったという東大大学院のアンケート結果がまとまりました。

 

先に私が述べたように8月の自殺増加は女性の増加が目立っています。私的領域における問題が女性の自殺増加につながっている可能性を疑ってみる必要があるでしょう。

 

どちらにしても飯田さんが仰るように8月の自殺増加の原因ははっきりしない点が多いです。厚生労働省警察庁から自殺動機や年齢層などのデータが公表されるのを待たないと検証ができません。


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