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公開日:2019年2月17日
最終更新日:2019年4月23日


こんにちは。営業の田中です。本日は日付を遡って僕が刑務所回りをするキッカケとなった「母校訪問」について報告したいと思います。

僕は外からも刑務所を見てみたいとずっと思っており、出所して半年経った頃に喜連川社会復帰促進センターの矯正展に行きました。僕は緊張していました。知っている刑務官に会ったら「お前、この間出たばかりで何しとんじゃ!」と怒られるのではないかとビクついていましたが、実際に行ってみると大変賑わっていてお祭りの様でした。このたくさんの人達の理解と協力があって僕はまた社会で生きられるのだと感じました。

記憶や感覚といったものはどうしても薄れてしまいますよね。その方が良い事もありますが、薄れさせてはいけない事もあると思います。僕の場合だとそれは、自分が犯した罪とやり直しの機会を与えてくれた社会への感謝の気持ちだと思っています。ところが、そびえ立つ高い塀や門、砦の様な収容棟を見た時、もしかしたら既に薄れてきているのではないかという恐怖が襲ってきました。受刑中からあれだけ薄れさせてはいけないと考えていたのに、たった半年でこれなら1年も経ったらどうなってしまうのだろうと怖くなりました。

僕は、受刑者が作るカレー、通称「プリズンカレー」を購入してしばらく見つめていました。どのタイミングで、どういう気持ちでスプーンを持てば良いのかが分からなかったのです。意を決して一口食べてみました。温かい・・・。たったそれだけの事で涙が溢れて止まらなくなりました。一緒に売られていた「受刑者が作るパン」も齧ったらさらに涙が止まらなくなりました。齧ったパンの断面にある空気の穴を数えながら「外に出たら好きなパンを買って食べよう」いつもそう思っていました。カレーとパンを食べて泣いているのなんて僕一人だけでした。

僕は涙が止まらなくなった本当の理由に気づいていました。絶対に薄れさせてはいけないと言っておきながら知らず知らずに薄れてしまっていた事に気付かされ、悔しくて、情けなくて、涙が止まりませんでした。分かっていたはずなのに、あんなに気をつけていたのに、自分はできていなかったのです。「年に一度必ずここへ来てこのカレーとパンを食べなければダメだ」そう思いました。また一つ刑務所から教わったのです。最後に刑務所に向かって頭を下げました。心の中で「ありがとうございました!」と精一杯の気持ちを叫びました。釈放の時にしてこなかった事です。あの時の僕はなんだかんだと言っても、やはり開放感の方が勝っていました。
初心に戻ってリセットできた良い日になりました。



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三宅 晶子
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