ニコロ・パガニーニ Caprice No.24に舞う弓毛のことだとか

2018-11-17 08:31:57 | エッセイ

YahooのGYAO!で視聴可能の映画を見ていた時に眼は入った"パガニーニ"の文字。映画に彼の名の入るものがある? と確かめ見つつ思ったのがパガニーニを演ずるならばヴァイオリンは不可欠。ヴァイオリニスト以外にできない。というところで浮かんだのはDavid Garrett。超絶技巧もお手のもの。俳優もやれそう。案の定見始めた映画の画面には彼の名。ところが私の知るヴァイオリニストDavid Garrettの面影の全然ない、これが彼? としか思えない別人演ずるようなパガニーニがそこにいて、それは最後まで変わらず。メーキャップのせいで、ステージで見る彼の素顔とは結びつかないままだった。そして彼の演じたパガニーニは素晴らしいと思った。そうそう、ひとつだけ、やっぱり役の中でもこれは彼、と思わせたのは弾く時の口元や表情、目の動き。2013年のドイツ映画。原題Der Teufels geiger(悪魔のヴァイオリニスト)。

ヴァイオリンが私の趣味で10代の中頃に始めたのだが、所属したのは大学の交響楽団位。あれこれの曲を一人楽しんで練習し、弾いてきている。2年ほど前になるかな。youtubeで父ドイツ人、母アメリカ人でドイツ生まれのDavid Garrett(1981~)の弾くこの曲ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を初めて聴いた。自分も弾きたくて楽譜に書き、以降弾いている一曲なのだが、印象に残るのはDavidの表情。弾きながら指揮者に向ける眼など。映画の中に垣間見えるものがあったこと。パガニーニを演じている彼の上に。

https://www.youtube.com/watch?v=AqTjkyu1Dlk&index=23&list=WL&t=0s

知る人はパガニーニのCapriceを弾く時に弓毛が飛ぶことはご存知なんだろうけども、私はその場面を見たことはなかった。ヴァイオリン協奏曲の1番が好きでモスクワ生まれ、イスラエル人のShlomo Mintz(1957~)、或はイスラエルのテル・アヴィヴ生まれのItzhak Perlman(1945~)のものを好んで聴いているけれども、弓毛が切れるなどということは考えられないから、Capriceでの特別さが分かる。映画の中でCaprice No.24を弾いている後半でライトの中に踊る、或いは舞う弓毛を見た時には、驚きを覚えた。弓使いのはげしさが分かるようなその眺め。とりわけ激情的なパガニーニなればこその動きとも思え。                                                                                 他はどうなのだろうかとヴァイオリニストとしては好きなロシアのMaxim VengerovのCaprice No.24を聴いてみた。やはり、弓毛は途中で飛んでいる。ライトの中を舞っている。フラジオレットの変奏部分でヒラヒラ揺れて見える弓毛。普通にはない驚くべき眺めと言うしかない。それから面白かったのは、この演奏で最初のTema(主題)部分の後のVar(変奏).Ⅶ辺りになるのか、ピッチカートでの変奏部分がある。ここでのピッチカートは右手の指で弾かない。右手は弓を持ったまま、それも使いつつピッチカートは左指で奏でる。超絶技巧が必要と分かるせいか、その小変奏が終えると聴衆が感嘆の声を上げて拍手をした。普通ならそこもまだ曲の途中で次の変奏部に移る場面。拍手をせずに待つところだから、演奏者のVengelovが思わぬことに出会ったような眼を聴衆に向けたところも、珍しい眺めではあった。

いずれもJewish violinistですけどね                                                                                                           

Itzhak Pearlmanと言えば4歳の時に小児麻痺にかかり以降下半身が不自由になり、演奏も椅子に座る形でだけれども、1945年生まれで誕生日が私と10日違いということもあり自身の親近感も一方的に限りがない。同年代の傑出した代表としても見ている。既に14歳でドイツ・グラモフォンと専属契約をしていたDavid Garrettが、17歳の時にニューヨークのジュリアード音楽院に入学、ドイツを離れたのだが在学中にPerlmanに入門した最初の学生となったということを知った。ジュリアードはPerlmanもアイザック・スターンに強力に推薦されて入学した音楽院でもある。

それではPerlmanもCapriceの演奏では、ついには弓毛を舞わせてしまうのだろうか?  想像できなかったのだけれども、演奏場面の動画はなく音のみの視聴で確かめようがなかったものの、どうも弓毛を切らせて演奏するとは思えない音の流れからの感じ。どうなのだろう? 両足でしっかりと立ち体を思うがままに揺らせて弾ける人の場合と、椅子の上に腰を置き、上体に頼るしかないヴァイオリニストの場合の違いのようなもの、それが全然分からない。楽器から醸し出されるPerlman特有の世界があるとすれば、違いからきているものの影響があることは、考えられるのではないかと思うのみ。  

 

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この映画DEVIL'S VIOLINISTの中で忘れ難い、そして恍惚とさせられたのは、奏でるパガニーニと愛する女性シャーロット(Andrea Deck)の美しい歌声の最上、極致のような協奏。I loved it.   

 



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