さっちゃん 空を飛ぶ

認知症で要介護5の妻との楽しい日常を 日記に書き留めたいと思います

昨夜のさっちゃんは最終的には団地内をそぞろ歩きました

2019-10-09 23:52:19 | 大変なこと
さっちゃんはよく「家に帰る」と言います。
どうもその家は実在の家ではなくて、さっちゃんの心の中にある「自分が帰るべき家」のようなのです。

詳細を記録すると、際限なく長い文章になりそうですから、箇条書き風に簡潔に書こうと思います。

9時ころだったでしょうか、さっちゃんの入れ歯を綺麗にブラッシングしてあげました。
その入れ歯を口に戻すとき、さっちゃんは拒否。
昨晩はひと晩、入れ歯洗浄剤の液に浸けておくことになりました。
それだけなら別に問題はないのですが、さっちゃん突然に、家に帰りたいモードになってしまったんです。

疲れてしまって、ちょっと布団で横になってる僕を起こそうとします。
おそらく、帰るべき家へ僕も一緒に連れて行こうとしているのでしょうか?
あるいは、その帰るべき家を僕は知っていると思ってるんでしょうか?
横向きの僕を自分の方へ向かそうと腰に手をかけて引いたり、タオルケットを引っ張ったりします。
僕が抵抗して動かないので、足や腰や胸を手や他の何かで叩いたりもします。

そして、玄関へも行って、ドアを開けようとしています。
チェーンを掛けてるのでさっちゃんには開けることが出来ません。
何故だかさっちゃんの靴や僕の靴も部屋の中に持ってきたり、履いてきたりもしました。
さすがにそれには僕も起きて、元に戻させます。

他にもいろんなことがあって、僕も部屋の電気を全部切って、真っ暗にしてみたり、
洗面所の部屋でじっと座り続けたり、ベランダに出て、身を隠したりしたんですが、効果はありません。
さっちゃんはずうっと「家に帰りたいモード」のままなんです。

1時間は経過したのでしょうか? 
僕は別の手を考えました。
こうなればさっちゃんを思い通り外へ出してあげて、家へ帰らせよう、と。
チェーンを外して、ドアが開きました。
さっちゃんは外に出ますが、外でじっとしています。
「こんな夜に僕は出かけないからね」と言うと、さっちゃんは怒りだします。
僕の手を強く引いて、一緒に外へ連れ出そうとしますが、僕は抵抗して出ません。
そんな拍子に、さっちゃんの手が僕の眼鏡にかかって、レンズが外れてしまいました。
僕はさっちゃんを怒ります。
足元に落ちていたレンズを拾って、眼鏡を見ると、フレームも曲がってしまっています。
(それは今日、眼鏡屋さんで直してもらいました)

何度も何度も押し問答があって、僕が一緒に行く振りをしたり、さっちゃんがまた戻ってきたり、
そこでも長い時間が経過して、やっとさっちゃんは部屋を出て、二人の住む棟の外へ出ました。
僕はさっちゃんとは別の階段から降りました。
さっちゃんの姿を追いながら、さっちゃんに見つからないようにしながら、尾行しました。

さっちゃんは後ろを何度も何度も振り返りながら、ゆっくりと歩いています。
駅の方へでもなく、スーパーの方へでもなく、いつもの散歩コースへ進んで行っています。
角々でどちらに行こうが自信なさげに行く道を決定しているよう。
結局、散歩コースからは外れて、団地内の隣りの隣りの棟へ行きました。

棟のエレベーターの前で、そこに来た住人と何やら話しています。
その住人からすれば、入れ歯の入ってない老女が何やら意味不明なことを語りかけて来て、不気味だったでしょうね。
僕はそこで尾行を止めることにしました。
一緒にエレベーターに乗ってしまうと、大変なことになりそうだからです。
見失ってしまう可能性も高まりますし。

さっちゃんのところへ行って、手を引きます。
さっちゃんは驚いた様子もありません。
でも、まだ手をつないで歩くことには抵抗して、手を振りほどきます。
ただ、僕が進む方向には素直に付いて来ます。
団地内をグルグルと寄り道ばかりして、僕たちの棟まで戻って来ました。

さっちゃんは僕たちの階の下の階で僕から離れて、僕たちの部屋の真下の部屋へ行ってしまいました。
僕も慌ててさっちゃんの後を追いました。
下の部屋の方に迷惑を掛けたら申し訳ありませんし。
再び、僕の後から付いてくるようになりました。
今度はふたつ上の階まで上って、そこから降りてきました。

まあ僕としては、さっちゃんが出て来た家(部屋)とは違う家(部屋)に来たんだと、演出したかったんです。
さっちゃんが「帰るべき家」はここなんだよ、と演出したかったんです。
さっちゃんにそんな僕の演出が少しでも影響したかどうかは分かりません。
多分、そんなこと以上にさっちゃんは何故夜に家の外をフラフラと歩き回ったのか?
その理由を忘れてしまってると思います。

その後、さっちゃんはすやすやと心地よさそうに眠りに就きました。
僕はそういう具合にはいきませんでしたけれど。
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