『どうした?心配なのか?』
リュウタの穏やかな声が、裕太の耳に届く。
「心配に決まっているじゃないか。
本当は、あそこから出たら、いけなかったんじゃあないのか?」
リュウタの疲弊ぶりは、異常だ。
もしかして…自分のせいなのか?
そう思いついたことに、裕太は自分で愕然とする。
『あれぇ?本当に、心配してくれているのか?』
リュウタは心持ち、声を弾ませる。
「当たり前だろ?
もしかして、リュウタは…外に出たら、いけないの?」
うかつだった…
その可能性を思いつかなかった自分に、ひどく後悔する。
『大丈夫だよぉ。いっつも地下ばかりだから、たまには外の空気を
吸ってみたいと思っていたし』
努めて明るい声で、リュウタが答える。
だけど裕太には、それがカラ元気に聞こえる。
「でも、どうして、ここに?
海とはずいぶん、離れているけど?」
どう見てもここは、森の中だ。
もしかしたら、自分たちは、出口を間違えたのかもしれない…と
裕太は考える。
『それは、決まっているだろ』
やけに自信満々の声が、返って来る。
『こことあそこは、つながっているんだ』
「海から離れているのに?」
『そうだ』
「ここって、やっぱり、森?」
『いや、キミがよく知っている場所のはずだよ』
よく、周りを見てごらん。
リュウタは穏やかな顔で、微笑んでいるように見えた。