ここは 何階?
物干しは どこ?
見下ろすと、目まいがするくらい、地面がかなり遠くて、
しかも緑は 目に入らず、家や建物や大きな道が、広がるばかりだ…
(はだしで、野原を走りたいなぁ)
仕方がないので、窓の外に出ると、ヒンヤリと冷たいグレーの床が
広がっている…
「何、これ?石じゃないの?」
エラはコンクリートを知らないのだ。
足元を見ると、傍らにはスリッパが置かれている。
おそるおそる足を突っ込むと、
(あら、はきやすいこと!)
それは男物の黒いクロックスだ。
カポンカポンと、脱げないように気を付けて、音を立てて歩くと…
ベランダには、植木もなければ、何もない…
黒いゴミ袋と、ポリバケツがあるだけだ。
「これじゃあ、洗濯物が干せないじゃない!」
ガッカリとして、ベランダをもう1度、グルリと探す。
「タクトは、どうしてるんだろ?」
不思議に思いつつ、よくよく見ると…
それでも低い位置に、長い棒(物干し竿だ)があったので、
これでとりあえず、フトンを干そうと思い立った。
他にも何かないかなぁ~と、各部屋をのぞいたり、廊下を出たり
入ったりして、廊下の壁に取っ手を見つけると、
それをグイッと引っ張ると…物置きが姿を現した。
「モップは?雑巾は?掃除機は?」
何かないかと探すと…
四角い箱が目についた。
「これは なに?」
しゃがみ込んで、その箱をのぞき込む。
ところが蛇腹なホースもあるけれど、
「なに これ!
掃除機じゃないの?」
さっぱり訳がわからなくて、使い方がわからない。
「まぁ いいわ!
あの人が帰って来てから聞こう」
そう思うと…ひとまず他に、何か出来ることがないか…と、
キョロキョロとした。