「彼は島を出て、都会の大学を卒業後、ある社長令嬢と仲良くなったんだ…
滝本は、その1人娘をうまく取り込むと、そのまま婿養子となり、滝本と
名乗るようになったんだ。
社長も彼のことを気に入って、自分の会社をまかせると、
面白いくらいに、どんどん会社を大きくして、この家の権力者として君臨したんだ。
このまま順風満帆に行くかと思いきや、とんでもない落とし穴が、待っていたんだ」
老人は淡々と、滝本の話を続ける。
そこには、物語かと思うくらいに…ドラマチックな展開が待ち受けていた。
「まぁね、人生上り坂もあれば、下り坂もある…
そう全てがうまくいくとは限らない…
あいつが幸せの絶頂にいた時に、あの男が現れたんだ。
それがあの男…風来坊と呼ばれた…死神なんだ」
いったん老人は言葉を切ると、裕太と颯太の顔を見る。
2人はポカンとした顔をしていて、
『もしかして、それが、あの人の事?』と信じられないように、お互いの顔を見合わせていた。
「まさか…まさか、それがあの…?」
うすうす気づいていたものの、まだ信じられない気持ちでいっぱいだ。
なぜなら教頭先生が、死神…ということになると、ここで疑問が残る…
あきらかに、老人よりもかなり年の差がある、ということだ。
親子ほど…も離れているというのに、それは可能なのか…と
疑問が残ったのだ。
すると老人は思いついたように、裕太と颯太を見ると
「あっ、ここで言っとくけど、教頭先生は風来坊じゃないよ」
サラッと言ってのけると…
「えっ、どういうこと?」
思わず混乱して、声を上げる裕太たちを見て、老人は笑った。