まさか岸本先生が、お宝を探していたなんて…
あらためて気づくと、落ち込む裕太だ。
その様子に気が付くと、「ちがうよ」と颯太。
「そうじゃなくて…あくまでも交換条件としてだろ?」
励ますように言う。
「岸本先生は、ボクたちの味方だろ?」
そう強く言うと、そうだよね?と裕太は老人の顔を見上げた。
「はい」
老人はうなづくと、裕太から受け取っていた金色の像と、白い陶器の入れ物を
裕太に返した。
それを受け取り、じぃっと見つめると、
「本当に、ボクたちが埋めてもいいんですか?」
うつむいたまま、裕太が聞いた。
「うん」と老人はうなづき、
「悪いが…君たちにお願いするよ」とニッコリと笑う。
「先生…大丈夫かなぁ」
急に境内に置き去りにしてきたことが、気になって、先生のことを思う…
「大丈夫だよ」
老人は大きくて、ごつくて厚みのある手を、裕太の頭にポンと乗せると、
「コーヘイさんがいるし…死神も無関係な人間まで、手を出したりはしないはずだ」
キッパリと、妙に確信を持った、言い方をする。
「大変なのは…君たちだ」
そう言うと、老人は颯太の方を向き、
「君は…早く自分の家に、帰った方がいいかもしれない」
真面目な顔で言った。
「どういうこと?」
老人の言葉の意味が、わからない…と老人を見つめる。
それからすぐに、ハッと我に返ると、
「でも…裕太は?」
急に眉を曇らせると、裕太の方を振り向いた。
「ね、裕太。裕太も一緒に帰ろう」
その声を聴くと…思わず裕太は、言葉につまり、何も言えなくなった。