あの賭けのあと、あらためて出直して、男のところへやって来た女に…
今回の計画を聞かされたのだ。
そのとんでもない企てに、さすがの男は、断ろうと思っていた。
だが断りの言葉を口にしたとたん、にこやかな顔をしていた女が
「なに?」
急に鬼女のような顔に変化して、男をにらみつけるので
「いや…なんでもない」
さすがに 断りそびれたのだ。
「何言ってるの?
男に二言はない、って言うのは、ウソなの?」
ものすごい剣幕で、迫ってきたのだ。
自分にとって、無理な話は断ればいい…と男は軽く考えていたので、
(やはり この女はヤバイぞ)
すぐに後悔をした。
(このうわばみ女…ただ者じゃあないなぁ~)
「どうだ?何か見つかったかぁ?」
先ほどまで…バカンス気分で、浮かれていた王子だったが、
さすがに謎の追跡者のせいで、たるんでいた気分がすっかり一転した。
姫に何かあってはいけない!
本来の目的を思い出す。
「護衛の者を増やしましょうか?」
大臣の息子も、2人の空気を察して声をかける。
彼はフェンシングの腕に、かなり自信があるのだが…
ここはもっと、人手がいる、と悟ったようだ。
「いや、いい…」と言いかけて、ふと不安そうにする信子に目を向ける。
黙ったまま、こちらを見ている信子に気が付くと、
「うん、そうだな、頼む」
あわてて言いなおした。