颯太の切実な声を聴くと…裕太の心がぐらぐらと揺れる。

思わず「うん」と言いそうになる。

そうして…自分は 子供だ。

どうしようもなく、自分は子供なのだ…

悲しいほどに、無力なのだ、と感じると、急にシュンとして、裕太は下を向いた。

そんな裕太の頭を、老人はゴシゴシとかき回すと

「大丈夫だよ!ここにはほかにも…まだまだ 楽しいことが、たくさんあるさ!」

親指を立てて、楽しそうに笑う。

「君なら…きっと見つけられるはずだ!

 本当の宝物を!」

そう老人が言うと、そうかなぁと、裕太は大きくうなづく。

 

 このままでいいのか…と裕太は少し、不安なのだ。

何よりも、これで颯太とお別れする、というのが、いやなのだ。

急にその日が来る、という実感がわいてきて、裕太はたまらなく嫌だと強く思った。

「大丈夫!君ならきっと、うまくいくよ。

 前へ進んでごらん」

裕太の心の動きが、読めるかのように、老人は大きなその手のひらで、

ガシガシと裕太の頭を撫でた。

「そうだよ!タイムカプセルを埋めに来るんだろ?

 また会えるよ」

颯太だって、本当はとても、心細くなってきたのだ。

だけれど、ここは裕太の気持ちを察して、わざと明るい声で微笑む。

「また 会えるさ!

 そうだろ?

 だって、ボクたち…」

颯太は裕太の顔を見つめる。

「だって、ボクらは、親友なんだもの!」

「うん…」

泣きたい気持ちをグッとこらえ、裕太は握りこぶしで、ぐぃっと目のふちをこすると、

「そうだね!これを返しに行かなくちゃいけないしね!」

リュックサックに、軽く手を触れて大きくうなづいた。

 

 

 

 

 

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