岸本先生は、そのあたりのことを、気付かなかったのか…と、裕太は思わず
突っ込みたくなる。
けれども、きっと忙しかったのだろう…と、言い訳のように考え直した。
「もう、いいか?じゃあ埋めるぞ」
思い思いに、写真を撮っていた子供たちに、先生は声をかける。
すると 大きく手を上げる男の子が1人。
「先生!目印か何か、立てないのぉ?」
ちょっと間延びしたような声で、ジュンペイが声を上げる。
先生は「あっ」という顔になり、
「目印?そうかぁ~やっぱりいるよなぁ」
ボリボリと頭をかくので、
「えっ、先生!考えてなかったのぉ」
ケラケラとショータが笑う。
先生はあわてて、頭を振ると、
「ごめんごめん!
先生は、タイムカプセルを作ることで、頭がいっぱいだったから…」
らしくなく、言い訳をする。
「そうなの?」
「先生~大丈夫?」
あっという間に、子供たちが口々に、わぁわぁ騒ぎ出した。
「何かないかなぁ」
先生はつぶやくと、
「何か植えたら?」
ひときわ高い声で、女の子の声が響く。
ヨーコちゃんだ。
ヨーコちゃんは、女子の間でも、リーダー的な存在で、女子の間でもかなり
人気がある。
すると女子のグループからも、数人が大きくうなづいて、
「そうよね!」
「桜の木とか?」
「梅とか?」
「キンモクセイ?」
「バラなんかは?」
「そうだなぁ~」
次々、好き勝手に、自分の知っている花の名前を言う。
まさに、思いつく限り、並べる…という感じだ。
「うーん、そうだなぁ」
先生はまだ何か、考えているようだ。
「でもねぇ~木の根っこで、もし万が一、タイムカプセルが傷ついたり、
壊れたりしたら 困るなぁ~」
少し渋い顔をした。