一体どうしたら、こんな風に人の気持ちを動かせることが出来るのだろう…
でもじいちゃんに聞いても、おそらく
『ワシは ただのジジイだ。
コツも何も、ないよ』と答えることだろう。
フットワークも軽く、オジサンを手伝うと、さっさとトラックの方に、移動させるのに成功した。
「で、頼みって、なに?」
相変わらず機嫌のよい顔で、オジサンが裕太の方を向くので、
なんだか裕太は、後ろめたい気持ちがする…
「そう!あんたが忙しいのは、分かってるんだけどねぇ~
アンタを見込んで、頼みがあるんだ」
裕太の代わりに、じいちゃんが調子よく オジサンを持ち上げるように言うと、
まんまとトラックの荷台の方まで誘導した。
「頼みとは、他でもない…」
そう言いながら、じいちゃんは荷台のブルーシートをはずす。
するとオジサンが「あっ」と声をもらした。
(やっぱり、そうなるよなぁ)
裕太はちょっと離れたところで、様子を見守っている。
「こりゃあまた、えらく派手にやられたもんだなぁ」
まいった、とオデコをピシャリとたたくと、大きな声を上げて、オジサンは荷台の壊れ物を
見つめた。
「そうなんだよぉ、ひどいだろ?」
だがじいちゃんは、陽気な声で大げさに声を張り上げる。
そうして芝居がかったポーズで、オジサンに向かって手を合わせる。
「だから、たのむよぉ~
裕太も自転車がないと、困るし、ワシだってバイクがないと、不便極まりないんだ」
ぱんぱんと手をたたいて、拝むようにする。
(神様でも、仏様でもないんだぞ)
その姿を見て、裕太は心の中で、茶々を入れたくなる。けれど…
「そうだよなぁ」
人のよい顔をして、うなづくオジサンを見て
(あっ、この人、いい人なのかもしれないなぁ)
初めて好感を持った。
さらにオジサンは、急に真面目な顔になると
「わかった」と短く答える。
「だが…条件がある」
ポツリとそう言うと、裕太の方をチラリと見た。