「裕太、おまえ…ずいぶん、動き回っているんだなぁ」
感心したようにじいちゃんは言う。
「そんなこと、ないよ」
ちょっぴり照れたように、裕太は鼻の頭をこすった。
「友達はなぁ、大切にした方がいいぞ、
やっぱり、唯一の財産だからなぁ」
ハンドルを握り締めながら、じいちゃんが言う。
「じいちゃんも、そんな友達…いるの?」
思わず裕太は、じいちゃんの横顔を見上げた。
どんな人だろう?
やっぱりじいちゃんみたいに、カッコイイのかな、などと…裕太はあれこれと
想像する。
「友達?」
じいちゃんは、驚いたように聞き返すと、
「友達なら、いるよ」
毎日、色んな人に会ってるもんなぁ~と前を向いたまま言う。
「そうじゃなくて!」
じいちゃんの言う友達は、ちょっと違うようだ。
思わず大きな声を出すと
「なんだぁ?」
じいちゃんは、ちょっと顔をしかめる。
「そうじゃなくて、子供の頃からの友達とか…」
じれったく思いながらも、裕太にはやっぱりピンとこない。
じいちゃんにも…颯太のような、友達がいるのだろうか?
仙人のような人かな?
それとも、先生のような人なのかな?
そう考えていたら、裕太は何だかとても、ワクワクしてくる。
じいちゃんは前を向いたまま、
「うーん」とうなると
「そういう友達っていうのは…このところ、会ってないかなぁ」
ボソリと言った。
なんだ、そうなんだ…
裕太は何だかガッカリとする。
大人になっても、ワクワクと心が躍るような友達って…本当に出来ないのかなぁと
思うのだ。
「みんな、島を出たりしたしなぁ~
病気になったり、色々あるしなぁ」
思ったよりも、サバサバとした口調でそう言う。
じいちゃんは、いたって元気だけれど、それでもやっぱり、色々あるんだろうな、と
裕太は思いなおしていた。