よく見ると、小さなホコラに、しおれた花を供えた形跡がある。
『ここも昔は…たまに人がお参りに来たものだが、管理をする人が
いなくなって…すっかり人通りが途絶えて、さびれてしまったんだ』
もう覚えている人も、あまりいないだろうなぁ…
まるで、見たことがあるような体で、リュウタは話す。
「そうなんだぁ」
じゃあ、じいちゃんは、知っているのだろうか?
ふと裕太は、自分のじいちゃんのことを、頭に思い浮かべる。
すると、裕太の頭の中を見透かしたように、
『キミのおじいさんくらいだよ。
何日かに一度、ここを掃除しに来てくれるのは』
当たり前のように、続けて言う。
「へぇ~」
リュウタは、じいちゃんのことも、知っているんだ!
(さすが、じいちゃんだ)
裕太は自分のじいちゃんのことを、誇らしく思う。
「じゃあ、ここは、神社のあった所?」
全然知らないけど…
裕太はリュウタに、たしかめてみる。
『あぁ~それは、もう少し先に行ったら、神社があるよ』
リュウタは起き上がることなく、そのままの姿勢で答える。
確かに、鳥居がこの辺りにはなさそうだ。
「ねぇ、リュウタ…本当に、大丈夫?」
異変を感じたのは、何だかリュウタの様子が、ピクリとも
動かなくなったからだ。
『あぁ~心配しなくても、大丈夫だ。
ちょっと、疲れただけだ。
すこし休んだら…動けるようになるよ』
ムリをするように、リュウタは首だけを動かそうとした。