貯蓄から投資へ?

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家計部門が預金を株式に持ち替えるには次の操作が行われる:企業部門の株式発行に応じて*1家計は預金の一部を企業部門に振込み、企業部門は振込まれた預金で銀行借入を返済*2する。さて何が起こるか?

 特段何も起こらない。企業価値は資本構成と無関係なので、この操作は企業部門の価値に影響しない。ただ預金を株式に持ち替えた家計はそうでない家計よりも大きなリスクと期待リターンに直面する。要するに家計による預金か株式かの選択は家計間でのリスクエクスポージャーの調整であって、個人が投資をしないから経済が活性化しないという話はナンセンスである。*3

*1:そうではなく他の家計から株式を購入した場合、家計間で預金と株式が交換されるだけなので、家計部門全体の金融資産構成を変化させることはできない。

*2:なお家計部門から預金(=銀行に対する債権)が振り込まれた時点で企業部門の銀行に対する純債務は既に減少しているので返済の操作は実は本質的ではない。

*3:だから家計部門の預金残高が多いのを見て預金が死蔵されているとか言うのも普通に間違っている。