企業が現預金を貯め込んでる、って本当か?

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 上の記事は企業の現預金残高が高水準にあることで日本の景気が悪くなっていると主張する。企業が貯めこむことで家計に現預金が流れず、家計の消費が抑制されているのだという。

 そういう話が成り立っているなら、反対に家計の現預金残高は低い水準にありそうなものだ。が、実際にはそうなってはいない。日本企業の現預金残高は他国に比べて高い水準にあるが、同様に、家計の現預金残高もまた高い水準にある。*1

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 そして企業が保有する現預金と家計が保有する現預金の比率は、日本も米国も2対8で変わらない。

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 日本は企業の保有する現預金が大きいというより、日本経済全体に存在する現預金の量自体が大きいのである。企業の現預金残高は経営上の現金保有動機から分析されることが多く、この単純な事実はしばしば見過ごされてきた。

 預金残高の大きさは日本が間接金融優位の経済であることの反映かもしれないし、長期にわたる低金利の結果かもしれないが、いずれにせよ経済の資金循環全体を視野に入れて分析されるべきものだろう。

*1:グラフはOECD statのfinancial accountsから作成