東山魁夷と四季の日本画が東京・広尾の山種美術館で開催中です。
本展では、魁夷の芸術を構成する重要な要素のうち「四季」と「風景」を テーマに、魁夷を中心とした近代・現代の画家たちの作品が展示されています。
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第1章 日本の四季を描いた系譜
この章では、さまざまな画家の四季を描いた作品が紹介されています。絵を通して、日本の豊かな四季を感じることができます。

橋本 雅邦 「春秋田家」 1899(明治 32)年頃
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明治画壇の巨匠で、近代日本画の礎を築いた雅邦の作品。右幅に春の籾撒き、左幅に秋の脱穀の光景を描いたもので、13 年ぶりの公開です。

竹内 栖鳳「四季短冊」 1926-42 年頃(昭和初期)
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椿、朝顔、菊、水仙の取り合わせで描いた短冊。さらさらって描いているようなのですが、やはりうまいですね。

菱田春草「月四題」1909-10(明治 42-43)年頃
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月と季節の花木を組み合わせて四季を表現した作品。墨を基調として、静謐な世界が表現されています。

結城 素明 「春山晴靄・夏渓欲雨・ 秋嶺帰雲・冬海雪霽」 1940(昭和 15)年頃 
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東山魁夷の師で、日本画に洋画の写実をとりいれ、自然を写生することの重要性を説いた結城素明の四季の連作。

今回の見どころの一つは、東山魁夷の連作「京洛四季」4点が約4年ぶりに一挙公開されていることです。下の作品はそのうちの冬を描いたもの。
東山魁夷「年暮る」1968(昭和 43)年
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大晦日の雪降る京の町並みを描いた作品。手前に一つ明かりのついた家があり、暖かみを感じさせます。「東山ブルー」と称された群青色を基調に用い、年の瀬の京都の街並みが静かに表現されています。

千住 博 「四季」1989(平成元)年
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世界的に活躍する日本画家・千住博の作品も。描かれているのは日本の四季。水や大気の繊細な表現をぜひ間近でご覧ください。皆さんはどの季節がお気に入りでしょうか?

第2章 皇居新宮殿ゆかりの絵画
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1968(昭和 43)年、皇居に新たな宮殿が造営されるのに伴い、当時、第一線で活躍していた日本画家たちの作品で室内が装飾されることになりました。東山魁夷にも国賓などを迎える長和殿の障壁画か依頼されます。今回展示されている横幅9mの大作《満ち来る潮》は、新宮殿でこの作品を目にした山種美術館創立者の山﨑種二﨑氏が、多くの人に見てもらえるよう、魁夷に同じ趣旨の作品を依頼し制作されたものです。
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この大規模な壁画制作と連作「京洛四季」は、ほぼ同時期に着手されており、魁夷は「共に日本美への志向の高鳴りによって生まれ出た」作品だと述べているそうです。

左:山口 蓬春 「新宮殿杉戸楓 4 分の 1 下絵」 1967(昭和 42)年 
右:山口 蓬春 「楓図」 小下絵 1970(昭和 45)年 
いずれも©公益財団法人 JR東海生涯学習財団
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山口蓬春も皇居新宮殿の杉戸絵の制作の依頼を受け、楓を描きました。山﨑種二﨑氏が依頼した同趣旨の作品は、蓬春の病気により未完に終わりましたが、本展では、その作品の小下絵と皇居宮殿作品のために作成した《新宮殿杉戸楓 4分の1下絵》が展示されています。

第3章 風景画に見る春夏秋冬
この章では、魁夷と重なる時代を過ごした画家たちの風景画を、春・夏・秋・冬に分けて紹介されています。 各々の画風や感性によって表現された四季の絵画が楽しめるコーナーになっています。

川合 玉堂 「渡頭の春」1935-43(昭和 10-18)年頃
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魁夷の師の一人であった川合玉堂の春の穏やかな川の様子を描いた作品。

東山魁夷「白い壁」 1952(昭和27)年
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青を基調とした背景に、白壁に差す月光や影の具合を工夫して、蔵の白い壁が浮かび上がるように描かれています。魁夷が風景画家として活躍し始めた頃に制作された作品。

東京美術学校の同窓生で生涯にわたり交流した加藤栄三の作品も。
加藤 栄三 「流離の灯」 1971(昭和 46)年
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 山口 蓬春「錦秋」 1963(昭和 38)年 ©公益財団法人 JR東海生涯学習財団
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奥田 元宋「松島暮色」1976(昭和 51)年
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他にも、魁夷とともに苗字に山が付くことから『日展三山』と呼ばれ、同時期に日展で活躍した杉山寧(第2章 皇居新宮殿ゆかりの絵画に展示)、高山辰雄らの作品も展示されています。

山種美術館では、カフェ、ミュージアムショップも美術館の魅力の一つ。 
カフェでは、展覧会にちなんだオリジナルメニューがいただけます。
青山の老舗菓匠「菊家」が展覧会出品作品をイメージして作ったオリジナル和菓子5種は、和菓子自体が芸術作品と言えるほど美しくおいしそうです。今回は東山魁夷の「京洛四季」4点と「満ち来る潮」をモチーフにした和菓子がいただけます。
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素材と季節感にこだわったランチメニューもおすすめ。鑑賞後に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

ミュージアムショップでは、出品作品をあしらったクリアファイル、ポストカード、一筆箋など展覧会の記念になるミュージアムグッズが多数揃っています。
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また、1月3日午前10時からは毎年好評の副袋が販売されます。限定50個でなくなり次第終了なので、お早めにどうぞ!
※カフェ・ミュージアムショップの営業時間は、美術館開館時間に準じます。

日本の四季の風景の美しさを改めて実感できる展覧会です。
魁夷を中心に近代・現代の画家たちによって描かれた美しい四季の世界をぜひ会場でご覧ください。

東山魁夷と四季の日本画  美術館WEBサイト
会期 開催中~2021年1月24日 
会場 山種美術館
住所 東京都渋谷区広尾3-12-36
開館時間 10:00~16:00(土日祝日〜17:00)※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日 月(11月23日、2021年1月4日、1月11日は開館)、11月24日、2021年1月12日、12月28日~2021年1月2日(年末年始休館)
観覧料 一般 1300円 / 大学生・高校生 1000円 / 中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
☆入館日時オンライン予約システムのご案内☆
事前にオンラインで入館日時指定付のチケットをご購入していただきますと、待ち時間 なくご入館できます。 オンラインによる予約がなくても従来通り、美術館受付でチケットをご購入のうえ、ご鑑賞いただけます。ただし、混雑時にはご入館をお待ちいただく場合がございます。
詳細は入館のご案内をご覧ください。
過去2週間の混雑状況をご確認いただける「混雑状況表」を掲載しています。 「混雑状況表」はこちら

※会期、開館時間は変更になる場合があります。最新情報は美術館WEBサイトにてご確認ください。
※写真掲載の作品は全て山種美術館所蔵
※会場内の写真は美術館の許可を得て撮影