人間から水が漏れる

 本記事のタイトルを見て、「尿もれ」とか「失禁」を想像された人もいるかもしれない。書いてるヤツが漏れてもおかしくない年だしね。
 が、その種の話ではない。その手の話は、ホントはキライではないんだけどね。
 
 さて、わしら夫婦は、集合住宅の2階に住んでいるのだが、先日、夜の10時過ぎに階下の住人から電話がかかってきた。
 
 こんな時刻に何だろうと不安になりながら応対すると、不安は的中した。
 わが家の真下にある部屋の天井に、水のシミができているという。「お宅の水道管か下水道管から水が漏れているのではないか・・・」という電話だった。
 
 やっぱり来たか、それもこんなに早く・・・。
 
 と思ったのには理由がある。
 今から7,8年くらい前だった。同じように水道管から水漏れがあって、階下の部屋の天井と壁に大きなしみをつくってしまったことがあったのである。

 そのときこの家に住んでいたのは数ヵ月まえに亡くなった義母だったのだが、床を剥がしたりして修理工事がたいへんだったことや、階下の天井や壁の弁償に多額の金がかかったことは聞いている。
 
 それだけではなかった。じつは修理を頼んだ水道工事屋とトラブルが発生したのである。早い話、法外な工事代を請求されたのだ。
 義母から見せられた請求書の額面をみてガクゼンとした。シロートのわしらから見てもありえない金額だったからだ。
 
 わしらは憤慨した。
 そのとき義母は90歳をすこし出たころだった。高齢できちんと対応できないとみて、その弱みに付けこんで暴利を得ようとするなんて、足腰立たない老婆に暴力をふるうのと同じだ。
 
  かわりにわしらが立ち上がった。
  ・・・といっても、当方だってソートー高齢だ。そのうえ水道工事に関する知識は幼稚園児といっしょ。こぶしを握って立ち上がった足元がやっぱりフラフラしてたというんでは、水道屋はせせら笑うだけだろう。
 
  じっさい義母の代理でわしが電話で値段の交渉をしようとすると、相手はハナから威圧的だった。専門用語を並べたてながら、請求書の額が通り相場であることを強調し、なんなら出るところへ出ましょうか、わたしらはそれでいいですよ、と強気だった。
 
  しかし、そのていどの脅しで腰くだけになったのでは、古希まで生きた(当時)甲斐がない。・・・というかいかにもカッコ悪い。
 
  なんとかならないかと、法テラスに支援をあおいだ。
 「法テラス」とは、民事・刑事をとわず、国民が直面する法律問題に無料で相談にのってくれる「日本司法支援センター」の愛称である。
 
 法テラスはわしらの話をきいて、2人の専門家をつけてくれた。ひとりはこの手のトラブルに詳しい弁護士、もうひとりは現場経験のゆたかな一級建築士である。
 
 じっさいこの2人の援助は強力だった。
 具体的な話は省くが、水道屋が送りつけてきた請求書の明細や、工事中に撮った写真等を見せて事情を話すと、たちどころに請求内容のおかしなところを指摘した。同一の工事にたいして別の名目をつけて複数請求していたり、通常(慣行上)は料金をとらない所で多額の料金を計上したりなど、明らかにこちらが素人で分からないだろうと踏んで細工をしていた。
 
 専門家によるこうした指摘を子細に手紙に書いて内容証明で送ると、すぐに工事代金の減額を言ってきた。それも驚くなかれ、一挙に半分以下に下げたのである。
 
 よろよろしたヒゲ老人が、まさかそこまでやるとは思わなかったのであろう。
 俗にも「上手の手から水が漏れる」というが、タカを括った手練れの水道屋の手から水が漏れた・・・と言える一例かもしれない。
 
 さて、今回の漏水だが、ここへ引っ越してくるとき、そのときのことをふと思い出して、わしらが移り住んだ後またああいうことが起きなければいいが・・・と思ったのである。それが前ぶれであったかのように、転居後の荷物もまだ完全に片付いていないうちに現実になってしまったのである。
 ツイていない。
 
 そこでこんどのその漏水の顛末だが、今回はすでに長くなったので次回にまわす。
 
 それにしても、かつての豊田商事事件や最近のオレオレ詐欺に見るように、わが国には老人を食い物にする犯罪が多い。
 人間の弱みや隙に付け込んで悪辣な行為におよぶというのは、人間として最低の部類に属するふるまいではなかろうか。
 
 日本がそういうことをする者が多い社会であるというのは、悲しい。
 

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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