蛸と凧はちがうぜよ

 先だって、朝起きて最初に顔を合わせたとき、女房が気まずそうな顔をして謝った。
「きのうはすみませんでした。わたし、態度が悪かったと思います」

 カミさんにはこういう殊勝なところがある。
 成り行きで感情的になり、前回の当ブログ『わが家の小悪魔』に書いたような暴言もしくは無礼な応対に及ぶことがあっても、その後に冷静になって反省し、自分の誤りをみとめて素直に謝る。・・・ことがある。彼女の美点のひとつだ。(前回の『わが家の小悪魔』はこちら
 
 だがこの朝は何を謝られたのかよく分からなかった。
 たしかにきのうはあまり機嫌は良くなかったようだが、特にわしの気に障ったようなことはなかった。
 
 ・・・というのにはひとつ理由があるかもしれない。
 このブログを読んでいただいている方はおおよそお察しと思うが、そもそもわしはかなり口うるさい人間だと思う。夫にしたくない男のランキングのたぶん上位を占めるだろう。もともと失敗が多いカミさんにしてみれば、しんどいパートナーだと思うときもあったにちがいない。
 
 だがどんなに口うるさく直せと言っても、人間、直らないものは直らないということが、この年になってやっと分かった。
 直らないところが多々あるのはわしも同じで、相見互いだし・・・。
 
 それに年をとるとドジ・ヘマは繁殖してさらに多くなる。それは加齢のせいで、当人にはいかんともしがたい。
 
 いかんともしがたいことをアレコレ言挙げするのは、海の蛸になぜ紙の凧みたいに空を飛ばないのか、と文句をつけるようなものだ。
 そういうことで生活の空を曇らせたっていいことは何もない。
 
 遅まきながらそのことに気づいた。
 遅すぎる感なきにしもあらずだが、過ちを改むるにハバカルことなかれ、ともいうので、ある頃から小さなことにはイチイチ文句を言わないことにした。黙ってやり過ごす。
 すると人間はエライもので、AIに負けず学習するらしくて、だんだん最初から気にならなくなった。
 
 わしとしては賢明な判断だと思っていたのだが、どっこい、思ったほど賢明ではなかったらしい。
 カミさんは言ったのだ。
 
 小さな不満を口にしないで腹にためておくと、それがだんだん大きくなり、そのうち爆発する。より大きなキズやミゾを作る可能性がある。それがこわい、と。
 
 きのうの自分はちょっと虫の居所がわるくて、別に言わなくてもいいことを言ったり、不愛想な態度をとったりした。
 夜、寝床に入ってからそのことが思い出されて、気になって眠れなかった。
 きのうのわたしの態度、謝ります、と。
 
 そしてさらに言葉を継いだ。
「だからあなたもこれからは、不満に思うことや気に障ることがあったら、小さなことだからといってガマンしないで、ちゃんと口に出して言ってほしい」。
 
 それを聞いて思ったよ。人間ってホンマに一筋縄ではいかんワって。
 いろいろと面倒くさい。
 ・・・って、また出た、わしの口ぐせ。
 

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