絵画モデルはやめられない

20年間、絵画モデルをしていました。謎に満ちた世界の体験を余すことなく綴っています。

絵画モデル時代のエピソード、裏話など満載の体験記。

このブログは、今から20年ほど前の絵画モデル体験記です

とある初夏。


芸短の油絵科クラスにコスチュームモデルで入った。


コスチュームは服を考えないといけないし、バイト代はヌードの半分なのであまり嬉しくない。


安いリサイクルショップで適当なブランド物の服を調達した。


襟ぐりがVの字に大きく開いたアニエスベーのベージュのカットソーに、バラ模様レースの紅のスカート。

歩くと裾がふわりと踊るのが華やかである。

金のピンヒールで決め、我ながら品よく仕上がったと思う。


初日、

ポーズの合間の10分の休み時間に、樹木希林に似た60代くらいの女性が話しかけてきた。社会人枠の生徒さんだろう。


「さすがモデルさんはお綺麗ですね。ベージュと薔薇色のハーモニーが大変美しい。

金のピンヒールとの見事なバランス。デコルテとおみ脚、足の甲までもが美しい。完璧です。」

舞い上がってしまうような褒め言葉ではないか。


初日最後のポーズが終わった時、

一人の女生徒さんが若干前のめりな歩き方でこちらへやってきた。


どうしたんだろうと思っていると

緊張した面持ちで「モデルさん、これどうぞ」とお菓子を差し出してくださった。


キットカット一つとせんべい、といったスーパーでよく見かけるお菓子である。大学生が買ってきてくれた情景が目に浮かんだ。


多分、女生徒は副手さんだろう。

「ありがとうございます」

私は心からお礼を言った。


一週間たち、2回目の授業。


ポーズ休憩で、またこないだの樹木希林がすっとそばに寄ってきて

「お美しいですね。

胸のデコルテ、おみ足の美しさ。お召しのものの色合いの完璧さ」とほめてくれた。


その日の最後のポーズが終わると、

またこないだの女生徒が何か意を決したように

若干まえのめりにつつつとやってきて

緊張しきった面持ちで

「モデルさん これどうぞ」と

すっとお菓子を差し出した。

私はビクッとなったが

「あ、ありがとうございます」とお礼を言った。


多分

モデルにお菓子をあげるという決まりなのだろう。


また一週間たち3回目の授業。


ポーズ休憩でまたもや樹木希林。

「スタイルが本当にお美しい。デコルテが素晴らしい。足の甲もお美しい。」


授業終わり、また例の女生徒、緊張しきった面持ちでこちらにやってくる。

そして意を決したようにお菓子を差し出した。

「あありがとうございます」


どうやら彼女は、副手でも何でもなく

ただ単に個人的に、

私にお菓子を渡すことに命をかけているようだった。




最後の授業。


樹木希林から「お美しい。おみ足、デコルテ。完璧です。さすがモデルさん」


ポーズ最後に

緊張しきった前のめり歩きで女生徒つつつとやってきて意を決したようにお菓子を差し出した。「モデルさんどうぞ」

(ビクッ)あ、ありがとうございます」


一連の流れは最後まで健在であった。



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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。


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別府大学のデッサン教室に呼ばれた。


休み時間に
カーテンで囲まれた控え室で休んでいると
女生徒2人の会話が聞こえた。

(彼女達は、私が控え室にいる事に気づいていない。)

「けーこいーよねー」
と言っている。

「ケイコの絵、良いよねー」と、
ケイコという女生徒の絵が良いのか。

私の事を「毛が濃い」と言っているのか。

皆さんは、どちらが可能性高いと思う?

私は体毛が濃い。毛だけで言うと、ダイナミックな体だ。
十中八九こちらの可能性が高いが、今となっては真相は永遠に闇の中。

もう一つ。

緑ヶ丘高校のデッサン会で、
何人かのモデルが集められた。
いくつかの教室にわけられて、それぞれモデルがあてがわれた。

私の隣の部屋のモデルは、最近入ってきた年下の若い子。
目鼻立ちがパッチリしてて吹石一恵そっくりの人だった。

休み時間、控え室に入ってゆっくりしていると
女生徒たちの話し声が聞こえる。

「mこぉのモデルさん めっちゃキレイじゃない?」

この小さな「m」が極めて重要なのだ。

このモデルさん(私のこと)

なのか

向こうのモデルさん(隣の部屋)
なのか?

小さなmがあるか無いかで、結果は全く違ってくる。

これも今となっては永遠に闇の中。



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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。


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とある夏の日、中津の教室に呼ばれた。

大分市から北の県境の町へ向けて運転し、教室である古い二階建てビルに着いた。

中から目張りをしているとても小さな扉を開くと、外側からは想像できない広い空間に平均年齢75歳程の生徒が5、60人とイーゼルがぎっしりひしめいている。

一階のフロアが全て教室になっているのだった。

中でも若めの元気な65歳くらいのおばちゃんが、カーテンで仕切った2畳程度のモデル控え室に私を案内してくれた。


着替えて早速クロッキーが始まり、20分ほど経った時、急に「バチョン」というブレーカーの落ちる音とともに電気が消えた。

じじばば達は
「おおお…」と上の方を向いて左右にキョロキョロしている。
リーダーぽいおじちゃんが奥へ行ってはしごにのぼり、何やらブレーカー的なものをいじりだしたので、「じきに治るだろう」と皆気にもせず、窓からうっすら入ってくる薄い光の中でクロッキーを続けていた。

しかし5分経っても10分経っても一向によくならないので次第にざわざわしだし、
「どうなってるん!!?」「いつつくの!?」といったセリフの吹き出しが騒然と部屋の天井を埋め尽くした。

とうとう
「モデルさん、電気つくまでちょっと控え室で休んでていいです。すみません」と言われた。

まあそのうちつくだろうと大して気にせず控え室でのんびり過ごしていた。

しかし30分経っても一向に良くならない。

40分経った。まだ電気がつかない。

次第に不安になってきた。


このまま中止になったらアルバイト代はどうなる?
2時間もかけて運転してきたのに。

いろいろ割りに合わない。

教室は相変わらず騒然としたままで、ジジババ達がブレーカー室のはしごの下に集まり、こうしたらいいんじゃないか、ああしたらいいんじゃないかとワイワイやっている。

「コンドーさん呼ぼう!」と誰かが叫んだ。

そういえば隣に「近藤電気」とあったのを思い出した。

誰かが外へダッと飛び出していき、7秒後に入口の戸が開き、そこにメガネをかけた大柄な四十代くらいの、コンドーさんであろう男性が逆光になって立っている。

後光さすコンドーさんを、ジジババ達がすがりつくように仰いでいる。

コンドーさんは
無言でずんずんと部屋の奥の方へと歩いて行き、なんらかのスイッチを「ぼん!」と押した。

すると部屋中の電気がパッとついた。


「おおおおーーーー!!」という大歓声のもと
コンドーさんは憤然としたまま一言も発さずそのままズンズンと帰っていった。

電気のことは電気屋に聞け。

専門家はやはりすごいという事を目の当たりにした事件だった。


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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。


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しかし
しょっちゅう電気オンチのジジババたちに引っ張り出されてウンザリしてるんだろうな。

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