CEREMONY(セレモニー)
『In the Spirit World Now(イン・ザ・スピリット・ワールド・ナウ)』

カルフォルニア出身のハードコア・バンドの、じつに4年ぶりとなる6作目。Ceremony(セレモニー)といえば、アルバムを発表するたびに異なるジャンルのサウンドに挑戦してきたバンドだ。デビュー作の『バイオレンス×2』はパワーバイオレンスよりのハードコアを展開し、3作目のRohnert Parkでは、初期Pil(パブリック・イメージ・リミテッド)などのポストパンクなサウンドを展開。そして12年の『Zoo』ではセルアウトした感じがあったガレージロックのようなサウンドに変貌していた。そして15年の『The L-Shaped Man』ではThe Cure(キュアー)からの影響が強く、激しさのまったくないニューウェーヴの揺らめくような孤独と暗いサウンドを展開していた。アルバムを発表するごとに激しさは薄れ、ポップになっていく印象を受けた。

 

そして今作ではニューウェーヴ度がさらに進み、Depeche Mode(デペッシュモード)のようなシンセポップを展開。規則正しいリズムで無機質に響くキーボードの音に、暗闇で妖しく光るニューウェーヴ特有の孤独と耽美性。そこにはロック特有の激しさはなく、終始穏やかで陰鬱な世界観がある。

 

アルバムのテーマは自由意志と欲望。際限なき欲望のために自己破壊的になる可能性について述べている。具体的に説明するなら、ドラッグやアルコールで身を滅ぼした人について歌っている。

 

同じ作品を作らないという強い意志や、自己制御的なストイックさという強い信念は、このバンドの最大の魅力だろう。だが物事をシリアスに捉えすぎて、バンドが袋小路に追い込まれ迷走悩んでいるようにも思えた。個人的には初期のころの荒々しさのほうが好きだったが、技術的な部分の人間性の成長を確実に感じさせる作品でもある。それがこの作品のよさだろう。