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マルクス・アウレリウス・アントニヌス(5)お前自身には成し遂げ難いことがあるとしても、それが人間に不可能なことだと考えてはならない

名言・格言
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逆転の発想で自分を鼓舞する

お前自身には成し遂げ難いことがあるとしても、それが人間に不可能なことだと考えてはならない。むしろ、人間にとって可能でふさわしいことであれば、お前にも成し遂げることができると考えよ。(自省録 6.19)

マルクス・アウレリウス・アントニヌス
アウレリウス胸像(メトロポリタン美術館所蔵)

(第16代ローマ皇帝 / 121~180)

この言葉を日記(自省録)に書き残した日、おそらく、マルクス・アウレリウス・アントニヌスは無理難題を前に立往生してしまった大変な局面に遭遇したのだと思います。そして、その難局を数学的ロジックを用いて、自分の感情ですら理性の下に完全管理をしようと試みたのだと思います。

これは、高校数学で学習する「命題と証明」(数Ⅰ)における基本的な証明問題に用いられるロジックと同じ手法が使われています。

それは、「PならばQである」を直接証明するのが困難な場合、「Qでないならば、Pでない」を証明できれば、「PならばQである」を証明したことになる「背理法はいりほう」という証明方法です。

背理法で命題を証明する

よく「裏の裏を読んで」とか日常的に使ったりしますが、数学的には「逆」の「裏」は「対偶たいぐう」となり、元の命題と同じことを意味するようになります。

例えば、P⇒Q(PならばQである)の例として、「今日は空気が冷たい。ならば、今日は冬だろう」という命題を考えてみましょう。

の命題を上図にて横移動したら、「今日は冬だろう。だから、今日は空気が冷たいはずだ」という「逆」になります。残念ながら、温帯気候に住んでいたとしたら、必ず「冬」だからといって空気が冷たいとは限りません。なんとなくほんわかあったかい感じの「小春日和こはるびより」(= 移動性高気圧に覆われるなどして発生する晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな晴天。 冬の季語 )な日かもしれませんから。

つぎに、これの「裏」を取りにいくと、「今日は冬ではないだろう。だから、今日は空気が冷たくないはずだ」という「対偶」が完成します。そうですね。冬でないなら、おっきい冷凍庫にでも入らない限り、温暖気候では、空気は冷たくないでしょうね。

こうやって、「対偶」が証明されれば、元の命題も証明 されたことになります。マルクス・アウレリウス・アントニヌスは、ストア哲学の有名な哲学者でした。ストア哲学は、理性の力で感情や自然に打ち勝つことができるという「克己」の学問ですから、「ロゴス(理性)」を大事にした哲学でした。ですので、自ずと理屈っぽく感じるのは仕方ありません。

マルクス・アウレリウス・アントニヌスが、弱ってくる自分の心にかつを入れて、懸命に気持ちを立て直している姿がはっきりと目に浮かびます。

こうしてみると、孔子の教えである儒教も聖人君子たれと、やせ我慢の学問ともいわれてきましたが、ストア哲学を信奉するのも大変なことですね。私だったら直ぐにくじけそうです。^^;)

おまけ

「背理法」の部分がいまいちわかりにくい方には、最初から間違っていることが分かっている命題をもとにして、やっぱり「対偶」も成立しないことを確かめるという理解法もあります。

「今日、日経平均が上がった。だから、明日もきっと日経平均は上がるだろう」という命題を証明したいとします。これの「対偶」は、「明日の日経平均は下がる。だから、今日の日経平均は下がったに違いない」となります。いえいえ、残念ながら、今日の日経平均の上下と明日の日経平均の上下の相関はこれまで観察されてこなかったので、今のところ、この「対偶」は間違いです。ですので、元の命題も間違いということになります。

あっ、そういえば、こういうのもありましたね。

嘘の嘘。それはくるりと裏返る。

築城院真鍳 by 力蔵|pixiv

築城院真鍳(ちくじょういんまがね)|Re:CREATORS

いやあ、言葉の力、偉大なり!

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