ロック探偵のMY GENERATION

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『サバイバル・オブ・ザ・デッド』

2019-06-18 17:52:40 | 映画
今回は、映画記事です。

このジャンルでは、ターミネーターや、X-MENといった、「いちど設定をリセットしたシリーズモノ」について書いてきました。その流れでロメロのゾンビの話が出てきたので、今回は、ジョージ・A・ロメロ監督によるゾンビシリーズの一作である、『サバイバル・オブ・ザ・デッド』を紹介しましょう。



ゾンビといえばロメロ、ロメロといえばゾンビ。
「〇〇・オブ・ザ・デッド」というタイトルの映画は世にたくさんあります(本来は違うのに勝手にそういう邦題をつけられているものも少なくないようですが)が、やっぱり、ロメロ監督の手になるものこそ“純正品”というイメージがあります。

ゾンビ映画のセントラル・ドグマともいうべき『ナイト・オブ・リビングデッド』~『ランド・オブ・ザ・デッド』という流れがあったわけですが、『ランド・オブ・ザ・デッド』でこの世界軸はいったん終了。
それまでの流れをリセットして、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』で新たなゾンビ物語が幕を開けます。『サバイバル・オブ・ザ・デッド』はその続編にあたり、ロメロ監督の死去によって、結果としてゾンビシリーズの最終作となりました。

ストーリーは、ゾンビの現象の広がった世界で、軍を離れて野盗集団になった州兵たちが、安全を求めて大西洋の小島に渡るというもの。
その島で、対立する二つのグループとゾンビ軍団も交えた三つ巴の抗争が繰り広げられます。スプラッター描写もかなり発達し、臓物系のグロテスクな映像が満載です。また本作では、馬に乗るゾンビなども新たに登場しています。

しかし、ゾンビシリーズはただのホラー映画ではありません。

先日、ゾンビミステリーとして話題になった今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』を読んだんですが……そのなかでも語られているように、ゾンビには、何かしらのイメージが投影されています。
そのかたちはさまざまですが、ロメロの場合、ゾンビを描くことで、そこから人間があぶりだされるという構造をとっています。ゾンビは恐怖だけれど、では人間はどうなのか? ということですね。それは、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』にいたるまで、ずっとそうでした。
それは、今作でもそうかもしれません。
西部劇をモチーフにしたストーリーは、21世紀の世界をカリカチュアライズしたものともとれます。カウボーイ気取りの大統領がはじめた戦争で幕を開けた21世紀の……
そもそも、世の中にゾンビが蔓延している状況で、人間同士で抗争しているということ自体が馬鹿げているわけですが……その不毛な戦いの果てのラストシーンは、人間の愚かしさを浮かび上がらせています。
この『サバイバル・オブ・ザ・デッド』は、ロメロの遺作ともなったわけですが……ホラー映画史上に大きな足跡を残した巨匠の最後の作品にふさわいしといえるでしょう。


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