ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

George Harrison - All Things Must Pass

2019-12-14 17:05:21 | 音楽批評


今回は音楽記事です。

このカテゴリーでは以前ポール・マッカートニーについて書きました。
そこからのビートルズつながりで、今回はジョージ・ハリスンについて書きましょう。

ジョージ・ハリスンは、いうまでもなくビートルズのギタリスト。

前にポール・マッカートニーの記事で書いたように、ビートルズ解散にいたる内紛の背景にはジョンとポールの主導権争いがあったわけですが……それよりも深刻だったのが、ポールとジョージの確執です。
それは、ビートルズが作り出す音楽にも反映されていました。

たとえば、アルバム Revolver に収録されている I Want to Tell You という曲があります。

この曲は、途中からへんてこなピアノが入ってきますが、これはポールが入れたものです。

曲自体はジョージが作ったものなんですが、それを聴いたポールが「凡庸な曲だからちょっと変化をつけよう」ということでこのピアノを入れたといわれています。

作曲者であるジョージにしてみれば、ムッとくる話でしょう。
自分の作った曲を凡庸とけなされ、曲のイメージをがらりと変えてしまうピアノを入れられてしまうわけですから。

このエピソードからうかがえるとおり、どうもポールにはジョージを見下すところがあったようで……
あるときポールからいろいろギターについての指示を受けていたジョージが「わかったよ、お前のいうとおりに弾けばいいんだろ!」とキレたというのは有名な話です。

ビートルズにおけるジョージの曲としてもっともポピュラーなのは Something だと思いますが、この曲でも、ベースがかなり忙しく動き回っています。おそらくポールとしては、「ジョージのやつがまたつまらない曲を作りやがって……しょうがないから俺のベースでなんとかしてやるか」みたいな意識があったんじゃないかと思われます。

ともかく、このポールとジョージの対立が、ビートルズの人間関係でもっとも深刻な問題だったといわれています。

ポール対ジョン。ポール対ジョージ。そしてその渦中で、おろおろするリンゴ・スター……最初にビートルズをやめると言い出したのは、リンゴでした。

しかし結局のところ、リンゴをどうこうするという問題ではもうありません。

「最初の頃に戻ろう」というゲットバックセッションの音源はお蔵入りとなり、アビー・ロードでビートルズは事実上の終焉を迎えます。最後にポールは「誰かがやめるというんじゃない。ビートルズがビートルズをやめたんだ」という言葉を残しました。

ビートルズ解散後、メンバーはそれぞれソロ活動を開始。

ジョンやポールの活動はよく知られいますが、ジョージやリンゴもソロで曲を発表し、それなりの成績を残しています。ビートルズ時代と比べれば実にささやかなものではありますが……

そのジョージがソロ活動で全米一位を獲得したのが、All Things Must Pass です。

 
このタイトルは、『老子道徳経』からとったといいます。
老荘思想の、あの老子です。その23章に次のように書かれています。

  希言自然。飄風不終朝、驟雨不終日。孰爲此者、天地。天地尚不能久、而況於人乎。

風も雨も、やまないことはない。それをなすのは天地だが、その天地もまた永遠ではない。まして、人はいうまでもない。
すべては過ぎ去っていく……というタオの思想が、アルバムタイトルとなりました。

インドにかぶれ、シタールを弾き、東洋思想に流れていったといったところでしょうか。ジョージは、『易経』なんかも読んでいたそうです。
そんなジョージの東洋かぶれを馬鹿にする歌も、ジョン・レノンは作ってたりします。

それはさておき……
アルバム All Things Must Pass には、ジョージのソロとしては有名な曲がいくつかあります。
オリビア・ニュートン―ジョンがカバーしたWhat Is My Life。ボブ・ディランとコラボした I'd Have You Anytime。その両方である If Not for You。シングルとして全米、全英一位を獲得した My Sweet Road。また、Behind That Locked Door なんていうミステリーっぽいタイトルの曲もあります。

そしてタイトル曲の All Things Must Pass。
ジョージの公式ウェブサイトから、動画を貼り付けておきましょう。

George Harrison - All Things Must Pass

この曲には、おそらくペダルギターと思われる楽器が使われています。
ソロ活動でのジョージはペダルギターやスライドギターのようなものを多用する印象がありますが、これはルーツ志向のあらわれでしょうか。ペダルギターというとハワイアンが想像されるかもしれませんが、実はブルーグラスといったアメリカ南西部のルーツミュージックでも、その手の楽器はよく使われます。ジョージの場合、ルーツミュージックという地点をさらに通り越して、近代文明へのアンチテーゼみたいな意味合いをそこに持たせているのかとも私は想像しています。

ところで、ジョージの曲も、いくつか聴いているとやはり“ジョージ節”みたいなものがはっきり感じられます。
ビートルズ時代の曲ではまだあやふやでしたが、ソロになってからはそれがジョージのスタイルとして確立しているようです。
奇妙な和音やコード進行が、どうも一般受けはあまりしなさそうな……まあ、この感じが好きな人は好きなんでしょうが、ひょっとすると、ビートルズ時代にポールのダメ出しを受けまくったことがある種の呪縛になってるんじゃないかとも、私はちょっと想像しています。


そのジョージ・ハリスンは、2001年にこの世を去りました。
ビートルズ最年少のジョージですが、癌に侵され、58歳の若さで亡くなったのです。

翌年の一周忌には、彼の死を悼んで、コンサート・フォー・ジョージというイベントが行われています。

そこには、盟友ともいうべきエリック・クラプトンや、ビートルズ時代からともに演奏してきたビリー・プレストン、それに、ビートルズの元同僚であるリンゴ・スター、『リボルバー』のジャケットを描いたベーシストのクラウス・フォアマンなどが参加。
そして、そのステージには、ポール・マッカートニーの姿もありました。

While My Guitar Gently Weeps (Taken from Concert For George)

上の動画は、While My Guitar Gently Weeps。
ビートルズ時代にジョージが作り、エリック・クラプトンもギターで参加した曲です。
ポールは、ここではピアノを弾いています。

若いころにはいろいろあった二人ですが……ジョン・レノンの場合と同様、やはり恩讐を超えた何かがポールの胸にあったんでしょう。まさに All Things Must Pass というところでしょうか。
しかし、すべてが過ぎ去っていくとしても、人は何かを遺していく。最近このブログでは追悼に関する記事を多く書いていますが、それらの記事で取り上げた人たちも皆そうでした。そして、ジョージ・ハリスンもまた、そんな一人なのです。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。