8月26日に新規医薬品が薬価収載され、続々と発売されています。

ぼちぼちと更新して行きますので、よろしくお願いします。

 

今回取り上げるのは、新規慢性心不全治療薬エンレストです。

正直なところ、以下の3つを読んで頂けましたら理解できます(苦笑)。

 

(Clinical Cloud)

https://diweb.medipal.jp/diweb/new_release/detail/1594603612

(日経メディカル)

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t339/202008/566881.html

(新薬情報オンライン)

https://medicalcampus.jp/di/archives/315

 

これで終わったら怒られるので、自分の勉強のために少しだけ書きます。

 

成分名はサクビトリルバルサルタン。バルサルタンと言えばARBのディオバンですよね。

ここで「サクビトリルとは何?」となります。

 

この薬剤、薬効名は「アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬です。

これをARNI=Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibitorと言います。

成分のサクビトリルとはネプリライシン阻害薬(のプロドラッグ)のこと。

エンレストはサクビトリルとバルサルタンを1分子中に1対1のモル比で結合させた単一の結晶複合体です。

経口投与後は速やかにサクビトリルとバルサルタンに解離します。

 

さて、ここで私が初めて聞いたのが「ネプリライシン」という単語。

すいません。ここは日経DIオンラインから抜粋させて頂きます。

 

ネプリライシン様々なペプチドを分解する酵素(中性エンドペプチダーゼ)であり、その基質の1つに、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などのナトリウム利尿ペプチド(NP)がある。ANPは血管拡張やナトリウム利尿作用を有し、その結果として血圧低下や抗線維化などの作用をもたらす。そのANPを分解するネプリライシンを阻害することでANPの濃度を上昇させ、心血管保護作用を狙ったのがネプリライシン阻害薬」

 

現在、大学では、このようなことを学ぶのでしょうか? 私は習ってないような…(約30年前)。

 

ここでまた疑問が…。なぜネプリライシン阻害薬+ARBなのか?

実は、ネプリライシン阻害薬単独では効果は得られません。

ネプリライシンはアンジオテンシンIIも分解するので、ネプリライシンだけを阻害するとレニン・アンジオテンシン(RA)系が亢進してしまい、血圧上昇や血管収縮などを引き起こします。

そこで、アンジオテンシンIIが結合するAT1受容体に対する拮抗作用を示すARBを併用することで、RA系を抑制してネプリライシン阻害薬による効果を発揮させています。

以下の図を参照して下さい(日経メディカル)。

https://medical.nikkeibp.co.jp/all/thumb_l/large_566881_arni.jpg

 

それでは薬剤情報です。

 

○エンレスト錠50mg、100mg、200mg

 

【効能・効果】

慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)

※本剤は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬から切り替えて投与すること。

 

【用法・用量】

通常、成人には1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mgまたは200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。

 

【用法・用量に関連する注意点】

50mg錠と100mg錠または200mg錠の生物学的同等性は示されていないため、100mg以上の用量を投与する際には50mg錠を使用しないこと

→この部分は2021年9月の添付文書改訂により、削除されました。

 

【重要な基本的注意】

・血管浮腫があらわれるおそれがあるため、本剤投与前にアンジオテンシン変換酵素阻害薬が投与されている場合は、少なくとも本剤投与開始36時間前に中止すること。また、本剤投与終了後にアンジオテンシン変換酵素阻害薬を投与する場合は、本剤の最終投与から36時間後までは投与しないこと。

脱水があらわれるおそれがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、本剤の減量、投与中止や補液等の適切な処置を行うこと。

手術前24時間は投与しないことが望ましい。麻酔および手術中にレニン−アンジオテンシン系の抑制作用による低血圧を起こす可能性がある。

 

【特定の背景を有する患者に関する注意】(抜粋)

・腎機能障害患者→本剤の血中濃度上昇のおそれ

・肝機能障害患者

・生殖能を有する者→妊娠可能な女性には、本剤投与中及び本剤投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること。

 

【併用禁忌】

・アンジオテンシン変換酵素阻害薬

・ラジレス(DM患者):非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症および低血圧のリスク増加がバルサルタンで報告されている。

 

【併用注意】(全てを記載していません)

・ARB:腎機能障害、高カリウム血症および低血圧を起こすおそれがあるため、これらの薬剤と併用すべきでない。

・カリウム保持性利尿薬:K上昇

・利尿降圧薬(フロセミド・トリクロルメチアジドなど):急激な血圧低下、利尿作用増強

・クラリスロマイシン(表参照)

 

「服薬指導のエッセンス」にはクラリスロマイシンとの併用に注意すべき薬剤の表を掲載しています。

第3版が出版されて1年経過しましたので、発売後に追加した薬剤を赤字で示しました。

なお、ここ1年以内に発売された薬剤は、クラリスロマイシンの添付文書に記載されていないことがあります。

クラリスロマイシンの添付文書だけでは網羅できないことを覚えておきましょう。

以下にアクセスすると大きくなります。

https://www.dropbox.com/s/tifzyhg19rbii13/%E8%A1%A81-2%20%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AE%E4%BD%B5%E7%94%A8%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E3%82%92%E8%A6%81%E3%81%99%E3%82%8B%E8%96%AC%E5%89%A4%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88.pdf?dl=0

 

なお、ここでは、心不全の症状・分類などは割愛させて頂きます。

また、詳細情報については、必ずメーカー作成の資料を参照して下さい。

 

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※「服薬指導のエッセンス改訂第3版」は完売致しました。

本当に、本当にありがとうございます。

今後、第4版が発売できるかは未定です。
また動きがあれば、ここでも報告させて頂きます。
 

ツイッター:https://twitter.com/nao_z_3

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