今年10年ぶりの大改訂を経て第七版が出版された広辞苑ですが、
実は広辞苑には広辞苑になる前の前身が存在します。
それが1930年に刊行された「辞苑」です。

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辞苑とは

素案

広辞苑の前身である辞苑は、編集者で書店主であった岡茂雄氏が、
辞書を作りたいと考えて新村出氏に依頼したことが発端で生まれました。

昭和初期の不況下における出版について岩波書店創業者の岩波茂雄氏と話し合った折、
教科書や辞書などの講座物に力を注ごうという話が出て、
岡茂雄氏は旧知の言語学者である新村出氏に中高、家庭用向けの国語辞典の作成を依頼します。

編纂者

新村出氏は何度か岡茂雄氏の依頼を断るものの、
とうとう弟子の溝江八男太氏の協力があればという条件で受け入れました。

広辞苑が現在のように百科事典の性質を持っているのは、溝江氏の進言によるものです。

辞苑という名称は岡氏が開催し、新村出氏を始め、
柳田国男氏や金田一京助などの著名人が参加した「国語学講習会」で決まりました。

出版社

広辞苑は第一版から岩波書店から刊行されていますが、
辞苑は博文館という出版社から刊行されています。

岡氏は当初、辞苑を自己の出版社である岡書院から出版するつもりでした。
ところが百科事典の性質を持つ辞苑は内容が膨大な量にのぼり、岡書院では手が余ると判断、
盟友の岩波茂雄氏に岩波書店から出版できないかと打診します。

ところがそのころ多くの辞書を手掛けていた岩波書店には引き受けてもらえず、
移譲を申し込まれた博文館に諸条件をつけたうえで託すことになりました。

この博文館と新村出氏の摩擦により、
辞苑の第二版は、広辞苑と名前を変えて岩波書店から刊行されることになったのです。


辞苑という辞書

辞苑(142版)は、索引ページまで合わせると2283ページあります。
今回たまたま辞苑を手元にお借りする機会がありましたので、広辞苑第7版と比べてみました。

広辞苑のページ数は3181ページ(奥付等を除く辞書の終わりまでで)、
1000ページ近くも差があるのに厚みはほとんど同じです。

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触ってみると、明らかに広辞苑の紙のほうが薄いので、紙の技術が進化した成果でしょう。

中身を少しだけご紹介します。

たまむしの挿絵が辞苑にも広辞苑第七版にも掲載されています。
辞苑のイラストの名前は右から読むようになっています。
時代を感じますね。
広辞苑第七版のイラストの名前は左から読むように書かれています。

昭和12年に発行されたものなので当然ですが、一部の漢字は旧字体が使われており、
辞苑の辞も旧字体の辭が使われています。

ちなみにお値段は「金4円50銭」で、現代の価格で言うと1~2万円くらいでしょうか。
当時の物価でお米が20㎏購入できる値段でした。


長く続く百科的辞書

辞苑から数えると、80年を超える歴史が広辞苑にはあります。
実物を手に取る貴重な機会に恵まれましたので、みなさんに辞苑についてシェアさせていただきました。

広辞苑は現在第七版、次の改定が何年後になるのか、それも楽しみですね。

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