若宮路について書き始めてから、はや五星霜。
故に若宮路について、どんな場所なのかと問われる方もいらっしゃる。
其處が一体どんな場所で、そもそも実在するのかと言う事についてだが、実際のところ、余り重要な意味をなしていない気もするのだ。
日本の他の場所と同じように、春夏秋冬が駆け巡り、私も折に触れて、何の目的となくただその場所を通り過ぎることだろう。
知られるざる水郷としての前橋の顔がそこにある。
モータリゼーションの時代が到来し、都市化が進むと、市街地にある多くの水路は道路拡幅のために暗渠にされてしまう。
こうした激動の変化の渦中にあっても、昔のながらの堀端の住まいの風景が残るというのは、発見する側ととしても嬉しい事である。
しかし、冬場は水が枯れて空堀となり、少し寂しい気持ちもする。
今年は近年稀に見る暖冬だったから、来月の中旬、もしかしたら初旬にも桜が咲くかもしれない。
その頃になれば、春の水が勢いよく流れて堀を満たし、流れる水面に桜の花びらが無数に散らされて、花筏というか、花弁の絨毯を眺めることができるだろう。