寒い朝に食べたいのは茹でたて熱々の蕎麦である。

この日の朝、近所にあるゆで太郎さんに行ってみた。

早くも朝飯がてら店を訪れる人がちらほら見られた。

厨房の大鍋から立ち上る湯気が凄い事になっていた。

湯気が霧のように厨房を覆っていたので、調理人の姿を隠してしまってしたのである。

しかし、湯気の間からぬうっと手が伸びて、ちゃんと食券を渡す事ができた。

窓際の席に座り、通り過ぎる車列を眺めながら、忙しない朝にあって、漸くほっと一息入れられるという、ささやかな幸せを実感した。

程なくして食券番号が呼ばれた。

カウンターにある無料で取り放題の揚げ玉をスプーン二杯と、鷹の爪を少々、蕎麦の上かけてみた。

温泉卵を選ばれる方もいらっしゃるが、私は断然生卵を選んでしまう。

かき揚げと生卵を混ぜながら食べるのが好きなのだ。

そして、時々ピリッとした辛さが欲しいので鷹の爪も欠かせない。とは言え、入れ過ぎは禁物である。

一通り食い終えると、テーブルの上に無造作においてある魔法瓶に目が行く。

この中には蕎麦湯が入っているのだ。

つゆが大分余っているので、豪快に蕎麦湯を流し込み、思っ切り飲み干した。

360円で味わえる、冬の朝蕎麦の話である。