昨日発足した菅新内閣。
「縦割り110番」やデジタル庁の新設など、ようやく政権の独自性が見えてきた。

「国民のために働く内閣」と銘打っただけあって、閣僚の人選についても手堅い印象を受けた。

過去に閣内で仕事をしてきた人の中で取り分け仕事が出来る人物を選んだとされる。

首相自身が閣僚候補を吟味し、身辺調査をしっかり行えば、思わぬところで部下に足を引っ張られる事を防ぐことが出来るわけで、後憂を断つという意味では重要な手続きである。

ただ、新内閣にあえて苦言を出すとすれば、女性閣僚が極端に少ない事である。
上川法相と橋本五輪相の二人だけ。

有能な女性政治家はもっといるはずなのに、そういう人材を積極的に起用しなかった事は残念である。

仕事が出来る人を選んだところ、20人中女性は2人だけだったとは、納得できない人も多いんじゃないだろうか。

少なくとも上野千鶴子氏は納得しないだろう。

世界に目を向けると、女性の大統領や首相というのは、今や当たり前の時代となっている。

世界初の女性首相は、スリランカのシマリヴォ・バンダラナイケ氏で、夫が暗殺されたのを機に政界に身を転じ、1960年に首相に就任。合計三度にわたりスリランカの首相を務めた。

1969年にはイスラエルで初の女性首相ゴルダ・メイアが就任した。
特に有名なのが1972年に起きた「ミュンヘン事件」である。
ミュンヘン五輪の開催中、パレスチナ系の武装集団「黒い九月」が選手村を襲撃し、イスラエル代表団を人質に取る事件が起きる。

武装集団はイスラエルに拘束されている同胞の解放と、エジプトのカイロへ脱出する事を要求する。
西ドイツ側は、武装集団をヘリコプターで空港まで運び、飛行機に乗り換えてもらう事を提案。

これは、空港で武装集団を待ち構えて狙撃し、人質を救出するという作戦であった。
しかし、飛行機に誰もいない事を勘付いた武装集団側がヘリコプターに引き返し、西ドイツ側と銃撃戦に発展。
結果としてこの人質救出作戦は大失敗に終わり、人質全員が死亡するという最悪の事態となってしまったのである。

それを受けてゴルダ・メイアは「神の怒り作戦」を指揮し、イスラエル諜報特務庁、通称モサドの工作員を使って報復作戦を決行。
その結果、ミュンヘン事件の首謀者であるサラメを含む「黒い九月」関係者の暗殺を遂行したのである。




最近の女性政治家で言えば、ニュージーランドのアダーン首相が有名だろう。
現職の首相として出産を経験した事で世界的に知られているが、コロナ禍においても迅速な対応で感染拡大を抑制した事で高く評価されている。


こちらの写真の四人の女性は、現在のフィンランド政府の主要閣僚たちである。

右から、オヒサロ内相、マリーン首相、クルムニ副首相兼財務相、そしてアンデション教育相である。

いずれも30代前半という若さで、フィンランドの国家の礎を支える重要な立場を担っているのである。

フィンランドと言えば世界で最も幸福度の高い国家としても知られている。

美しい大自然に囲まれた国土、それに社会福祉制度が大変に充実しており、とても住みやすい環境にあると言われている。

人口500万人ほどの小国ではあるが、「人口当たりGDP」「社会的支援」「平均寿命」は日本とほぼ同じ水準である。

フィンランドの幸福度を支える大気の要素のひとつに、人生選択の自由度があると言われている。

大学も学費が無料で、日本のように学生時代から苛烈な競争に晒されることがないのがフィンランドの特徴であり、一人一人が自由な立場で仕事を選ぶことができ、世間の目を気にする必要もない。

それに比べると今の日本は様々なしがらみが多く存在しているような気がする。

自由な社会と言われているが、こう生きなければいけないと言うようなレールが存在し、敷かれたレールに乗らなければ世間体が悪いと言われる。

一度ドロップアウトしてしまうと再チャレンジできる機会が極端に少ない。

だから結果的に決まり切った人生しか歩めないし、道を踏み外さないようにする為に、気を付けながらストレスを溜める生活を送る。

やはり、しがらみは良くありません。

女性の社会進出が進展しないのも、旧態依然としたしがらみ的な制度から容易に抜け出せない日本特有の湿った世間の実態があるからでしょう。

政治を変え、ひいては社会の変革を標榜するならば、まずは隗より始めよである。

日本も昨今の世界規模で起きている大変動の中にあってはいずれ変節を余儀無くされることになるだろう。

これから生き残っていく為にも、今まで乗り慣れた車を捨てる思いで前へと進んでいかなければならない。