ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

オオルリシジミ

2019-05-29 21:50:23 | チョウ/シジミチョウ科

 オオルリシジミ Shijimiaeoides divinus (Fixsen, 1887)は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)オオルリシジミ属(Genus Shijimiaeoides)のチョウで、以下の2亜種に分類される。

  1. オオルリシジミ 本州亜種 Shijimiaeoides divinus barine (Leech, 1893)
  2. オオルリシジミ 九州亜種 Shijimiaeoides divinus asonis (Matsumura, 1929)

 オオルリシジミは、山地の明るい草原に生息し、とくに火山草原を好む。成虫は年に1回、5~6月に発生。卵は約1週間で孵化し、マメ科のクララの蕾と花を食べた後、アリによって巣に運ばれ7月から蛹として約10カ月を土中で過ごすが、日本各地で絶滅し、現在では、長野県安曇野市、東御市、飯山市(本州亜種)と熊本県阿蘇山系(九州亜種)の4地域でしか見ることが出来ない極めて希少な種(環境省カテゴリ:絶滅危惧Ⅰ類)である。
 かつては、人々が食草であるクララを薬草などとして利用するために、田の畦や用水路の土手などに植えて草刈りや野焼きを定期的に行ってきたが、1962年頃から大規模土地改良事業が行われ、クララを含めた草原植生は喪失し、野焼きも行われなくなったことで生息環境が消失したことが減少の一番の原因と言われている。草原は放置しておくと背丈の高いススキやカヤなどが増加するため、クララは減少してしまう。保護には継続的な春先の野焼きや草刈りによる二次的草地環境の維持が重要であろう。草地環境の維持は共生関係にあるアリの生息にも大きく影響するし、卵への寄生蜂を駆除することにもなる。
 現在、長野県では、長野県希少野生動植物保護条例に基き、東御市と安曇野市において「オオルリシジミ保護回復事業」として飼育個体の野外導入により保護回復(増殖)活動が続けられている。

 前記事で紹介したクモマツマキチョウの撮影後に、オオルリシジミの保護区がある「国営アルプスあづみの公園」に寄ってみた。食草であるクララの周りでは多くのオオルリシジミが飛び交い、メスは盛んに散乱していた。以前は、卵への寄生蜂の影響で定着が危惧されていたが、昨今では公園内でも定期的に野焼きを行い、生息環境の維持に努めているという。この保護区で成虫となった本種は、80%が他へ飛んでいくと言われ、他地域においてもクララを植えるなどして、生息環境の拡大も行っている。
 筆者は、本種の保全に直接関わってはおらず、こうして写真でしか紹介できないが、本種の生態や生息環境を理解し知識を深めることは、本種のみならずホタルをはじめとした多くの絶滅危惧種の保全にも役立つものであると思う。
 以下には、今回(2019年5月26日)に撮影したものと、2013年5月26日に撮影したものを合わせて掲載した。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorer等ブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

オオルリシジミの交尾
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250 +2/3EV(撮影地:長野県安曇野市 2013.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミの交尾
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:長野県安曇野市 2013.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:長野県安曇野市 2013.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320 +1EV(撮影地:長野県安曇野市 2013.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/310秒 ISO 200(撮影地:長野県安曇野市 2019.5.26)

オオルリシジミの写真

クララに産卵するオオルリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 320(撮影地:長野県安曇野市 2019.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 800(撮影地:長野県安曇野市 2019.5.26)

オオルリシジミの写真

オオルリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 200(撮影地:長野県安曇野市 2013.5.26)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2019 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.



最新の画像もっと見る

コメントを投稿