ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

デジタル写真~現像とフォトレタッチ

2019-12-10 20:43:51 | 風景写真

 フィルムと違ってデジタル写真はパソコンで修正や加工ができ、実際に撮影した風景とは違うものを簡単に作り出すことができる。存在するものを「ない方が良いから」と消したり、逆に、無いにもかかわらず「あればもっと良いから」と付け加えることもできる。それは、創出アート作品として成り立つかもしれないが、風景写真、昆虫生態写真、報道写真等の観点からは「写真」とは言えないし、写真コンテストにおいては、フォトレタッチを認めている場合を除いて審査対象外になる。とは言え、デジタル写真は、RAWで撮影し、後に撮影者の記憶色によって現像することになるから、RAW現像時におけるガイドラインも必要だ。
 ある風景写真のコンテストでは、応募要項に以下の注意事項(ガイドライン)が記載されており、該当する作品は審査対象外となる。

  1. 異なる場面を合成したもの
  2. 画面に写っていたものを消去すること(レンズのホコリや小さなゴミの消去は除く)
  3. 補正の範囲を超えた色彩の演出、変換
  4. 写っているものを部分的に焼き飛ばす、または焼きつぶすこと
  5. 極端にトリミングされた作品

 RAW現像時に行う露出補正やWBの調整、色調やコントラストの調整、トリミング等、一般的な画像の調整はフォトレタッチには当たらず、センサーについたゴミを取り除くことも認められているが、原版となるRAWとかけ離れている場合は、過度なレタッチであり、NGであるという。コンテストの応募にRAWデータを添えることも条件のようだ。

 私は、1975年からOLYMPUS OM-2 というフィルムカメラで写真撮影を始め、昨今ではCanon EOS 5D Mark Ⅱ 及び Canon EOS 7D というデジタル一眼レフで撮影している。 Canon は、撮影時に「風景」「ポートレート」「ニュートラル」等というPicture Styleの設定があり、撮影シーンに合わせた細かい色の調整が撮影時にできるが、私は常に階調優先の「ニュートラル」にてRAWで撮影し、Lightronn cc にてパソコンで現像(画像調整)作業を行っている。
 Picture Styleの「ニュートラル」は、明暗差が大きい被写体でも繊細な質感を残したい時、鮮やかな色彩の中の微妙なニュアンスを表現したい場合に適している。コントラストは控えめに、彩度は強調を行わないため、他のスタイルに比べて白飛びや色の飽和が起きにくく、抑制のきいたしっとりとした表現となる。より豊富なディテールが情報として残っているため、後のPCでの現像に適した画質が撮影できるのである。
 以下に1例として、霧ケ峰で撮影した「霧氷とダイヤモンドダストとサンピラー」のRAWデータそのものの画像(2枚目)と撮影から7年近く経った今回再現像(1枚目)したものを並べてみた。現像前のRAWデータをみると、コントラストも彩度も低く、このままでは見た目とも違う。現像は記憶色に頼るため、現像する毎に若干違う結果になることも多いが、再現像すると私自身の中で感動が再び蘇る。それもデジタルならではの楽しさなのかも知れない。
 当ブログに掲載している私の風景写真、昆虫写真は、写真コンテスト等に応募したこともなければ、これからもするつもりはなく、あくまで私自身の楽しみであるからガイドラインに拘ってはいないが、30年以上もフィルムで撮影してきたので、デジタルであっても原版のRAWデータとかけ離れるような過度なレタッチはしないようにしたい。

追記~ホタルの飛翔風景における合成について

 ホタルの飛翔風景における、長時間露光と合成について触れておきたい。
 ホタルを撮影する場合、フィルムでは一回のシャッター時間が長い長時間露光が基本であり、夜間の背景が写るまで露光することが適正露出で、数秒から1時間に及ぶこともある。一方デジタルでは、ノイズの問題もあり、数秒露光によって撮影した数枚から数十枚の写真をパソコンで重ね合わせる手法が主流となっている。薄暗い時間帯に撮った背景にホタルをの光を重ねれば、フィルムでは表せない美しい写真が出来上がる。また、重ね合わせる枚数を増やせば、ホタルの光(光跡)はいくらでも増やすことができる。問題は、昆虫生態写真、風景写真として成り立つかである。
 勿論、昆虫生態写真ではない。なぜなら、予め撮影した背景とホタルの光だけの場面は全く同じ場所で構図であり、重ね合わせるホタルの光跡写真の露光時間の合計が一発露光のフィルムの露光時間と同じであっても、デジタルの場合は少なくとも1秒と言うタイムラグがあり時間的連続性がない。それゆえ昆虫生態写真とは言えないのである。風景写真コンテストのガイドラインからは、大きく外れてはいないと思うが、コンテストによっては「一回のシャッター」という決まりもあるようなので、厳密に言えば単なる見栄え重視の創作写真であろう。私もそのようなデジタル写真を撮影し掲載しているが、それを理解した上で、見て頂く方々に誤解のないよう注釈を添えている。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

霧氷とダイヤモンドダストとサンピラーの写真

霧氷とダイヤモンドダストとサンピラー(現像後)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市/霧ケ峰 2013.1.27 7:31)

霧氷とダイヤモンドダストとサンピラーの写真

霧氷とダイヤモンドダストとサンピラー(調整前のRAWデータ)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO 100 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市/霧ケ峰 2013.1.27 7:31)

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